114話 追い詰めた
「よ、よし……ここからなら、ギルドも近いしすぐに渡せば行けるぜ!」
「で、でもよ……本当に大丈夫なのか?」
「何言ってんだよ? 他の奴も上手くいったって言ってたじゃねぇか。今更、なにビビってんだ」
「そうだけどよ……これ、バレたらヤバいんじゃねぇか……?」
怪しい2階からの帰りのお客さんがいなかったので、始められたもう一つの出口の探索。裏口にあったことはあったのだけど、かなりお店からは遠いところに出口が設けられているようだった。
「あの、出口の配置からして……2階に上がった客は、一度、地下を通ってこの空き地まで出ているようだね」
「すごいことしますよね……お金だってかかりそうなのに」
「まあ、彼らの会話内容から考えても、これくらいの秘密の通路を作ったとしてもすぐに回収できるのだろうね」
この秘密通路がいくらかかっているのかは分からないけれど、それを簡単に回収するだけの売り上げが、あの2階だけであるということか。今出て来た冒険者達の会話から、ある程度想像は出来るけど。
「ネプトさん、どうしましょうか?」
「そうだね……ここは、彼らに直接聞くとしようかね」
ネプトさんは見かけに寄らず、かなりアグレッシブな人だ。流石は冒険者ランキング1位のチームリーダー。まあ、私もそれには賛成だけど。
出て来た彼らは男二人組のパーティみたいだ。空き地から出て、街の通路に差し掛かったところをネプトさんが捕まえる。
「な、なんだ……!?」
「う、動けねぇ……!」
「静かに深呼吸をしているんだね。大丈夫、危害を加えるつもりはないよ」
ネプトさんの特殊能力かしら……? 怪しい2階で買ったのであろう、小包を持っている二人を拘束していた。全く、手を触れることなく。
「な、なんだこりゃ……! 俺、一体どうなって……?」
「心配する必要はないよ。私の質問に答えてくれさえすれば、何も痛い思いなんてしないのだよ」
ネプトさんは涼しい顔付きでそう言っているけれど、言い換えれば、質問の回答に拒否したら痛い思いが待っているということよね? なんだか、とても怖いんだけど……。
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「はあ、はあ……一体、今のはなんだったんだ……!? 手足がマヒしたような……」
「俺もだ……なんだか分からねぇが、全く動けなくなってたぜ……」
秘密の出口から出て来た二人の冒険者は、大通りの隅で解放されることになった。特に怪我はないみたいで安心だけど、まったく理解不能な波動を受けたからなのか、相当に混乱しているみたいね。
「少し聞きたいことがあるんだがね」
「あ、あんたは……イノセントのリーダーか?」
「その通りだがね」
「お、おい……! イノセントって言ったら、現冒険者ランキング1位のパーティ!? そのリーダーだと……!?」
二人はネプトさんの正体を知って、さらに混乱している様子だった。これではお店のことを聞くのは難しいじゃないかと思えたけど、ネプトさんはあくまでも冷静だ。
「君たちが例の直営店の2階で買った物……おそらくはその小包がそうなのだろうが、見せてもらえないかね?」
「な、なんでだよ……冒険者ランキング1位の奴に見せる程のもんじゃねぇよ……!」
二人の内の一人が凄んでいるけれど、明らかに動揺は隠せていなかった。
「やましい物ではないなら、見せていただけると思うがね? なんなら、少しばかりの謝礼を出しても良いよ?」
「な、なに……? ただ見せるだけで謝礼だと? 正気か?」
「私は本気なのだよ」
流石はトップの冒険者だけあるわ……シグルドさんを例に考えてしまうけど、羽振りが違うというかなんというか。完全にネプトさんの独壇場になっているのが、なんだかおかしかった……。
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