11話 繁盛している薬屋 1
いや、もうなんていうか……本当になんていうか……。
「アイラちゃん、この薬の効果は?」
「それは説明書きにも書かれてますけど、ダークポーションっていう対象を暗闇状態にする物です」
「この薬はなんだね?」
「それは万能回復薬っていって、多くの状態異常を回復できます」
「これは珍しいんじゃ……? ええと、上級回復薬?」
「ええ、そうですね。傷薬の強化バージョンみたいな物なので、未踏遺跡探索とかでは、かなり重要ですよ」
お客さんの質問攻めからの購入へと至るケースが半端じゃなくなってきた……私が宿屋「桜庭亭」内で薬屋を開始してからまだ1週間くらいなんだけど。私が追放されてから数えると2週間は経過しているかな?
「メンタルポイントを回復してくれるエーテルまで売ってるなんて……凄いわね、ホント」
「あはは、ありがとうございます」
「また、買いに来るわ」
「ありがとうございます、お待ちしております!」
魔導士のお客さんが帰って行き、ようやく一段落といった状況になった。私は調合アイテムの作り置きもしているけれど、接客も同時に行っているので、奥の部屋との往来が激しくなっている。そろそろ、接客の方は他の従業員の人に任せないと不味いかもね……。
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「凄いわね、アイラ。傍で見ていることしか出来なかったけれど」
「アミーナさん、ありがとうございます」
お客さんが少なくなった頃合いを見計らってか、アミーナさんが紅茶を私に渡してくれた。休憩の一杯っていう意味合いかしらね。お礼を言いながら私は紅茶に手を付ける。
「売り上げの方は順調になって来てます。でも……」
「そろそろ、他の従業員に手伝ってもらう?」
「そうですね……お願いしてもいいですか?」
「もちろんよ、あなたのお店のエンゲージのおかげで、桜庭亭の評判も上がってるみたいだし」
「そうなんですね」
なるほどなるほど……まあ、宿屋と薬屋が一緒になってるお店なんてめずらしいしね。私のお店が有名になれば、アミーナさんの宿屋も連動して有名になっていくのか……。逆に悪い噂はアミーナさんにも迷惑を掛けるから、しっかりやって行かないといけないわね。
「やあ、アイラ。今、少し話せるかな?」
「クリフト様……! は、はい、もちろんです」
そんな時、クリフト様がいつもの兵士達を連れてやってきた。今日は素材供給の日ではないはずだけれど、様子を見に来てくれたのかな?
「首尾はどうだい?」
「はい……なんとか、現状は上手く行ってると思います」
「そうか、それは良かった。しかし、凄い種類の薬が置いてあるね。これ、全て君が調合したんだろう?」
「はい、まあ……」
「素晴らしい技術だな……」
「あ、ありがとうございます」
クリフト様に言われると、とても恥ずかしくなってしまう。いつの間にか、アミーナさんはカウンターの隅に移動していた。何やら、ニヤつきながら私を見ているけれど……なにか、勘違いしているような気がするわ……。