103話 オイゲン商会 1
急に出て来たオイゲン商会という存在……私は詳しい話を聞く為に、店の運営はライハットさんやルル達に任せ、奥の調合室に移動した。入口付近だと、誰が聞いているか分からないからね。
「ネプトさん……そのオイゲン商会について、もう少し詳しい話を聞かせて貰えますか？」
「もちろん、構わないよ。オイゲン商会のやり口は常に一定……自らの傘下に入る者には慈悲を与え、入らない者には、強制的に入らざるを得ない状況を作り出す」
強制的に入らざるを得ない状況……？ どういうことかしら。
「例えば、その店の前に自らの直営店を出し、競合させるととかだね。目的はもちろん、相手の店を潰す為なのだよ」
「なるほど、競合させるわけですか」
「そうだね」
私とキース姉弟がこの前やった売り上げ勝負みたいなものかしら？ まあ、ああいうお店を近くに出すというのはある意味では健全かな？ 相手の店を潰す目的でっていうのは怖いけど。
「でも、近くに似たような店が出来て争うなんてこと、何処の街でも行われてますよね？」
「確かにそうだね。ただまあ、アイラ君も気を付けた方がいい。あれに狙われては少々、不味いことにもなりかねないからね」
「わ、わかりました……気を付けます」
「でも、アイラ君には強力な護衛が付いているみたいだし、大丈夫なのかな？」
「あ、あははははは……」
やっぱりネプトさんは、五芒星の存在に気付いているみたいだった。そうなると、後ろに立っているアンジェリーナさんも気付いているだろう。
「また来させてもらっても構わないかね？」
「もちろんですよ！ なんなら常連客になっちゃってください！」
「ははははっ、考えさせてもらうことにするよ」
よしよし、ネプトさん達ランキング1位の冒険者パーティとも知り合いになれた。オイゲン商会のことは気になるけど、とりあえずは売り上げ上昇に向けて、また一歩前進したわね。
「……」
この周辺で売り上げの大きなお店は……私のエンゲージ以外だと向かいのキースファミリー、あとは裏通りにあるオディーリア様の店くらいかな？ カエサルさんの診療所も少し離れた所にあるけど、流石に診療所は競合しないだろうし。
「情報の共有が必要になるかもしれないので、私、他のお店にもオイゲン商会のことを伝えて来ますね」
「なるほど、それは名案かもしれないね」
「はい、もしかしたら私よりも知っている人が居るかもですけど」
特にオディーリアさんなんか怪しい。あの人は博識というか、本当に何でも知っていそうなイメージだし。とにかく善は急げね、私はすぐに各店に向かうことにした。
もしよろしければブクマや評価、感想などいただけますと、大変励みになります。
