1話 追放された錬金術士 1
私はアイラ・ステイト、17歳。ホーミング王国の首都であるリンクスタッドで錬金術士をしている。それも、国家錬金術士として……。
私の仕事は素材から回復薬や毒消し薬、他にも相手に状態異常を付与するダークポーションやマインドポーション、ポイズンポーションなどの精製だった。これだけ色々な物を作れる錬金術師は他に居ないということで、私は平民ながら破格の待遇を許されていた。
将来的には、伯爵様などとも結婚できるかもしれない……そんな噂さえ囁かれていた。でも、調子に乗ることなく日々、仕事に励んではいたんだけど……。
ある日、私はホーミング王国の王子であるユリウス・ホーミング様に呼ばれることになった。ユリウス様は第二王子に該当する人物だ。一体、何事かと、私は大急ぎで彼の元へと向かった。
「アイラ……今まで国家錬金術士としての仕事、ご苦労だった」
「あ、ありがとうございます、ユリウス殿下」
いつもと変わらない態度に見える……だけど、何かがおかしい。ユリウス殿下の表情というか、全体の雰囲気というか……。彼の周りには二人の騎士の姿もあったから。
「今日でお前はクビだ」
「えっ? どういうことでしょうか?」
いきなりの言葉に、思考が付いて行かない。
「聞こえなかったか? お前はクビだと言ったんだ。別の錬金術士を見つけたのでな。私は兄上とは違う……お前のような平民が近くに居ると思うだけで、虫唾が走ってしまうのでな。今までは代わりが居なかったから、なんとか我慢していたが……これで、お前を堂々と宮殿から追放出来るというものだ」
「ちょ、ちょっと待ってください……! そんなことを急に言われても困ります!」
「うるさい奴だな……」
ユリウス殿下は全く聞く耳を持つ気がないみたい。欠伸をしながら、私からは視線を逸らして窓を眺めているし。代わりが見つかったということは、その人はおそらく貴族なんだろうけど。私を最初に宮殿に招いてくれたのは、第一王子であるクリフト様だ。
クリフト様なら、ユリウス殿下のようなことは絶対に言わないはずだけれど……。
「クリフト様に会わせていただけませんか……? お願いいたします!」
「兄上は現在は留守だ。そして……お前の国家錬金術士としての職務は今日限り。つまりは会うことはできん」
「そ、そんな……!」
「全く……兄上も兄上だ。何故に、こんな平民を宮殿で働かせたのか。お前の代わりの錬金術士は3名も居る。平民でしかないお前よりも能力ははるかに上だろう。わかったら、荷物をまとめて出て行くんだな」
「ゆ、ユリウス殿下……」
最早、私の言葉は全く受け入れてもらえなかった……1年前から国家の錬金術士として働き、色々なアイテムを調合してきたけれど、こんなにも一瞬でその身分を失ってしまうなんて考えてもいなかった。
私はこれからどうしたらいいんだろう……。
もしよろしければブクマや評価、感想などいただけますと、大変励みになります。