邪神の剣閃
邪神さまが賊を切り伏せます
邪神少女は気怠げに賊の長を見る
―――馬車のほうは騎士がなんとかするだろう
こちらの長は魔術がつかえるようだ
すこしは張り合いがあるか
賊の長と、側近がその両脇をかため、少女と対峙する。
視線が少女を刺し貫くように睨めつけていた。
先に動くは側近だった。
「今度は容赦なしだ」
そう言い放ち、一人が剣を振り下ろす。
少女は剣の腹をもち、受けた剣撃を剣尖へ流す。
すぐに距離を取ろうと下がる。
賊は踏ん張り、もう一歩踏み込んでいく。
流された剣を返し、少女の胴へ横一閃に振るう。
少女は身をかがめて避ける。
そして、すぐに前へ飛ぶ。
踏み込んできた賊の足元へ踏み入り、屈んだ勢いを利用し懐へと。
剣尖が賊を突く。
賊の首へ剣が深く、貫いた。
勢いを保ったまま賊の体は後ろへ倒れこむ。
少女は首に刺したの剣を掴んだまま無防備だった。
そのとき、もう一人側近の剣が少女を襲う。
首を狙われ薙ぎ払われるも、なんとか上体をそらして避ける。
剣尖が僅かに少女の頬を捉えた。
――おっと、あぶない
少女は後ろに飛び退き、距離をとる。
剣は失ってしまった。
賊が再度、上段から剣を振るう。
少女に剣が届く、その前に少女は素早く右手を振るう。
振るわれた腕から、空気を切り裂く音が響く。
風が賊へ叩きつけられた。
賊の肩から上腕をぶつりと飛ばして、騎士の方へ転がっていった。
突然 飛んできた腕に騎士はぎょっとする。
少女の方を見ると、彼女もこちらを見て得意気に笑っていた。
腕を失った側近はそのまま倒れる。
宙を舞う剣が少女の近くで、地に落ち突き刺さった。
「さて、残りはぬしだけとなったな」
少女は賊の長を見る。
「はっ、ここまでは予想済みだ。
腕の利く魔術師に目をつけられてただで済むとは思っちゃいない。
慮外だったのは、その魔術師が剣もつかえて、しぶとかったことさな」
「では、投降するか」
「まさか、俺は殺しすぎた。
投降しようと、処刑が待ってるだろうな」
長はぎらぎらと鋭い目を少女へ向けている
「そんなわけで、俺は最後まで足掻かせてもらう」
そう言って、長は剣を少女へ向ける
「氷槍」
長がそう唱えると、少女の周りを囲むように魔方陣が現れる。
魔方陣から鋭い氷塊が生まれていく。
そして、大きな氷の槍が一心に少女へと注がれた。
少女は地に刺さる剣を引き抜き、長へと走る。
身を低く、横へ飛び退きながらも、確実に長に近づいていく。
氷の槍を避け、必要であれば弾き落とす
長は再び魔術を唱える。
「氷花よ、立ち塞がれ」
地面に魔方陣が顕現し、氷が地を這い茨を形作る。
氷の茨が少女の目の前に大きく広がり、行く手を阻む。
「まったく、面倒だな」
少女は剣の刃を撫でる。
剣に魔力を集め、下段から振るう。
「力技だが、まあいいだろう」
空気を切る剣の音と、鋼のような硬い音が響いた。
少女が氷の茨を力任せに破り、そのまま走り抜ける。
長の間合いに入り剣を振り抜く
長は剣を凌ぎ、そのまま突きを放つ
少女は剣に添うように身を捻り避ける
長の手を少し引き、前へと勢いを促す
懐に入り、剣尖を向ける
勢い付いた長の胴体は剣へ吸い込まれるように入り込む。
少女は長に寄り添う形のまま、胸へ剣を突き立てた。
邪神さまはつよい
賊の長もけっこう強かった
護衛の騎士だけなら問題なかった