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邪神の目覚めは

邪神さまが顕現した

穏やかな森

揺れる木々のささめく音  小鳥のさえずり 


少女の寝息




樹影の隙間から漏れる光


風が草木を揺らす

少女の肌をなでつける



黒衣の少女は自然の与える刺激に目を覚ます



目をこすり、伸びをする


あくびをしながら少女は呟く


「我 ここに降臨せん」


むくり と少女は体を起こし、辺りを見回す


目に 耳に 鼻に 肌に 飛び込むは



緑の世界、雑多な小花、柔らかな土

薫風は木々を、髪をそよがす


遠い鳴き声は鳥か

鼻孔をくすぐるは花香か



いずれにしても少女にしてみれば刺激の多い世界


その世界に圧倒され、少女はぼんやりとしていた



「美しいな」


この景色を少女は知識としてもっている

驚くものではない、すべては既知の事象


しかし


「こう、見てみるのも悪くない」



百聞は一見に如かずという


まあ何度も見たことあるが、

いざ放り出されてみて真に感じるは

頭に染み入るような、流れる満足感



「さてさて、ゆっくりはしてられぬ。 ひとをさがさねば」


ぼーっとしていた少女は、目的を思い出し、立ち上がる。



顔の前で手を左右にふるい、魔術を発動する


魔力探知―――魔力をもつ生物を視認する――

により少し離れた場所に、数人の反応を見つけた。




「うむ、ひとまずは人間に接触、そして勇者の所在をあきらかに」


少女は揚々と森を進む。




自然と森を抜けるようになり、開けた道に出た。


先刻の人間の反応は、ぐんぐんと少女へ近づいていた



「ふむ、街道をゆく馬車のようだが、、速すぎる」




馬車は少女から見えるところまできていた

数台の幌馬車が、仕立てのよい馬車を追うように走る





馬の嘶きが響く

急に速度を落としたかと思えば、華美な馬車は暴走し、

街道を外れて動かなくなる




まずいなと、少女は眉をひそめた


しかし、なにか思いついたようで

静かに馬車へ近づいていく







華美な馬車は10人ほどの武装した賊に囲まれていた。

馬車を護衛する騎士は4人、すでに倒れた者がふたり。


訓練された騎士も厳しい状況、森の近い街道、


初めから狙われていたのだろうと、後悔しても遅い。



じりじりと距離を詰めるなか

賊の長が騎士へ問う。



「取引しねえか。 そこの馬車に居るお嬢さんと、金目のモンを

 全ておとなしく渡しゃ、殺しはしねえ。

 他に誰も見てねえんだ、逃げ帰ったってバレねえさ」




騎士の表情は険しいまま、しかし確かな動揺が走る



「黙れ! 我らはお嬢様を守る騎士である、賊共にはー」



言い切る前に騎士の1人が仲間に剣を向けた


「悪いな。先輩、最初から仕組まれてんだ。

 あんたらに勝ち目はねえよ。」



騎士達に怒りと驚愕、そして目の中には絶望がよぎる



裏切りの騎士は続ける


「おとなしく逃げかえっとけ。 これが最後の通告だ。

 あんたらが黙ってれば・・・罪にも問われない。

 なにせ、しょっちゅう家出するお嬢様だ、誰も気づかないさ。

 こんな廃れた街道、だれにも見られないですむ」



騎士達の意志が折られる、誇りが悪意に塗りつぶされていく


そのとき賊の後ろから澄んだ声が通る




「それが、目撃者がいたんだ」




澄んだ声には嘲笑が混ざっていた










邪神さまの力がふるわれる


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