邪神の旅立ち
邪神さまはひとりがんばる
邪神少女さまはじゆうほんぽう
邪神は勇者候補を探す
――未来が見えない白紙の勇者
勇者候補をひとりひとり見ていく
なかなか骨の折れる仕事だ
不変の未来などない 運命は常に枝分かれした道を辿る
限りない枝を見澄ます
悠久の刻に存在する邪神であっても
面倒だなと、堪えていた。
またそのとき、「邪神の片割れ」
かの少女は遊び回っていた
片割れ少女は、
魔術・錬金術に夢中になっていた
不便な体で試行錯誤して、己が知識を披露するのがお気に召したようだ
邪神の人知れぬ努力により、条件に合う勇者候補は見つかった。
――我よ、勇者候補を見つけた
我の仕事はここまでだ
「うん? おお、見つかったのだな。
さてさて、清く正しく美しい勇者を育成に行くかの」
――世界を超えた転移は誤差が生じる
勇者からは離れた場所へ転移してしまうだろう
そこからまずは人間を探し、勇者候補と聞けば、直ぐに見つかるであろう
「うむ、承知した」
少女は自信たっぷりに、すぐに転移魔術を実行しようと腕を振るう、
――我よ、待て そう急ぐな
人の世に我らの姿態は異色であることを忘れぬよう
邪神は魔力を霧散させる
「む、そうであったな。
しかし、我の姿は完璧な人間種に見えるが」
――種族は人間になっている
問題はその服装だ
一糸まとわぬ少女は、己の体を見つめる
「まあ、さすがにこの姿はまずいな」
そう呟いた少女は、腕を組む
悩む少女に邪神は魔術を試行する
少女の体に魔力が集まり、服飾を形作る。
その服は、少女らしらを強調しながらも、
端正な顔立ちと相まって幻想的な雰囲気を醸し出させる。
華美なドレスは黒色を基調とし、
フリルやレースがあしらわれ、頭には小さなハットが揺れる。
少女はむむ、と難しい声を漏らす
「動きにくい」
――まあまあ、服とはそういうものだ
少々我慢しておくれ
それに、よく似合っている
「そうか、ならよいぞ」
「我よ、もうよいか
我は早く勇者のもとへ参りたいのだが」
――うむ
――それでは"達者"で
「惜別の局面に見えるのか?」
からかうように笑みを浮かべて言うと、
少女は行ってしまった。
邪神さまはついに降臨す
邪神と呼ばれて永い邪神さまは名前をわすれる