就活
大学院で博士号をとった後、四年ほど大学で非常勤の研究員をやり、メンタルを悪くして、うつ病になりまくり、実家で静養していた。何年かブラブラしていたのだが、何もしないでこのまま生きていかれるはずもない。
一時期、本気で就活をしていた。一社だけ正社員として就職が本決まりになりかけたことがある。とある人材派遣会社で、派遣する方の営業である。「営業マンか、大変だな」とは思っていたが、本当に大変そうなのである。面接をした人事の方は言う。
「今時残業がない、なんていう会社はないわけで、ウチもみんなで頑張ってきて、何とかやっているというところです。残業は最低月80時間は見てください。いま景気いい状態じゃないんで、残業がないとね、なかなか稼げない。それと、人材派遣ですが派遣した人にケガとか有り得ますんでね、その時には、すぐ現場いかなきゃいけないんです。夜中でも、携帯はオンにしておいてもらって。夜中に行くのがやっぱりつらい。大変です。休みの日も、いつ呼び出されるのかわからないので、その辺はご了解ください。
……まあ、入社していただいて、『話が違う』って言われて、やめられても困るんですよ。はじめはサポートしながらやっていきますんで、安心してください」
とのこと。「はい、任せてください」などと返事をして、オフィス--というほど小ぎれいではなく、雑然として古びたビルを後にしたのだが、
「今時の営業って、こんなもんか…。」
と思った。