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上杉邸

「ご飯できたよー」



 カウンターキッチンから妻の号令が掛かる。


 その静かな語り口にはなぜか有無を言わせないトーンがあって、ソファでくつろいでいたオレと娘はどちらからともなく立ち上がると、ダイニングへ向かう。



 冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出して、グラスに注ぐ娘。それを視界の隅に捉えながら、オレは炊き立てご飯にしゃもじを差し入れて茶碗に盛っていく。


 料理を並べ終えた妻がそれを受け取って、それぞれの席の前に配膳していく。家族三人の間にいつの間にか出来上がった自然な連携。



 しかし、オレの茶碗を最後に受け取った妻の手がピタリと止まる。



「貴方、これ、少し多くないですか」


「えー 今日は株主総会を乗り切った自分へのご褒美だからさ……」


「ダメ。オーバーポーションは家計と健康管理の敵です。少し減らしてください」



 差し戻された茶碗を渋々受け取りながら、こっそり溜息を漏らすオレ。確かに最近、腹周りの肉が落ちにくくなってきている。



「ねぇ、オーバーポーションってなに?」



 娘の無邪気な質問を受けて、言葉の定義を記憶の中に探す。あの文化祭の暑い日から、もう十年が経とうとしていた。



「オーバーポーションっていうのはね、飲食業界の用語で……」




(了)

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