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財務部

「というわけで、今年の文化祭なんだけど、我が財務部が実行担当になりました」


「……は?」


「神崎さん、メガネの奥からカミソリみたいな視線で見上げるの、やめてもらっていいかな。正直、ちょっと恐怖を覚えるよ」


「部長、いつもお話が手短なのは大変結構なのですが、前置きを省略し過ぎです。納得出来るご説明をお願いします」


「えっとね、さっき役員会に出席してきたんですよ。当社の上半期の業績推移について、財務部長として役員の皆さんにご説明する為に」


「それはスケジューラーで把握しています」


「で、その場で袈裟丸けさまる会長から鶴の一声がありまして。いつもお世話になっている周辺地域の皆様をお招きして開催する当社恒例行事の文化祭をですね、今年は私達、財務部が主担当として取り仕切るべしと……」


「ただでさえ決算を控えていて、財務部の負担増大が確実に見込まれる時期にですか?」


「はい、神崎さんのご指摘はごもっともです。しかし、戦後の闇市から身を立てて、たった一代で東証一部上場企業を築き上げた立志伝中の人物であらせられる袈裟丸会長に、一部長である私が物申せるはずもなくですね」


「つまり?」


「財務部社員の皆様におかれましては大変申し訳ない事態になってしまいましたこと、私、担当部長としてあらかじめ陳謝する次第でございます」



 目の前にズラリと並ぶデスクから「はぁー」という深い溜息が一斉に聞こえた。流石は我が優秀な部下達。見事な団結力、素晴らしいシンクロ率である。でも、その矛先を部長であるオレに向けるのは如何なものかと思う。



「では、部長、その件について午後イチで打ち合わせの時間を頂けますか」という財務部エースにしてオレの右腕、神崎さんからの有り難いお言葉。


 その静かな語り口にはなぜか有無を言わせないトーンがあって、反射的に小刻みな首肯を返すオレがいた。



 隣のシマにちらりと視線を向けると、総務部長が同情の眼差しを投げてくる。オレはそれに片手を軽く上げて応じると、部下達に遠慮しながらマイチェアーにそっと腰を下ろした。

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