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第二話 館に住む妻の友人達

第二話

タナトスに言われた通り街へと向かう二人。

そこにはある人物が待ち構えていた。

 俺とルナは、タナトスに言われたとおりに、ジョロヴァキアと言う街へと訪れていた。

 全身に黒いフードを羽織り、マスクを着けて顔を隠す、タナトスから渡された鞄に入っていた俺の私服らしい。

 ガウチコートって名前らしいが、完全にパンク系だな。

 ルナは相変わらず俺の指をしゃぶってくる、おしゃぶりを何処かで手に入れないといけなさそうだ。

 手袋を着けていても構わずに、しゃぶってくる。


「すみません、おしゃぶりとかって、使ってませんか?」

「悪いねぇ、今品切れなんだよ、最近赤ちゃんブームだから子どもを産む人が増えてね、この街でもミルクやベビーベッド、それからベビーカーにベビー服まで全部品切れ、恐らくどこの店も同じだろうね」


 ベビーブームだと…!?

 このジョロヴァキアって街……どんだけ盛ってんだ!?

 だが、確かに回りの人間は皆赤ん坊を連れてるな。


「お客さんの赤ちゃん、凄く可愛い顔をしてるね、お母さんにかな?」

「まうま!」

「そうなだな、お前は結構ママに似てる顔だからな、将来は美人になるぞ」


 俺と店のおばさんがそんな会話をしていると、後ろから女の声が聞こえてきた。


「タカオカジンだな?Tから話は聞いてるだろう?迎えに来た」


 俺が振り返ると、美女が立っていた。

 褐色の肌に尖った耳、黒いロングヘアーで左目を隠したカウボーイ姿の女…まさか、これがエルフって奴なのか?

 それにしても、あらゆるところがデカいな、伸長から胸に腰、全部ダイナマイト級だぜこりゃ。

 しかもカウボーイの恰好が良く似合っている、見事なまでにその体を引き立てているじゃないか。

 異世界ってのも、悪く無いかもしれないな、俺の居た世界の女と比べ者にならないくらいで、レベルが高い。


「どうした?私の顔に何かついているか?」

「いや、それよりおしゃぶりとかもってないか?娘がこうして指しゃぶりを止めてくれなくてさ」


 女は持って居ないと言った後、俺達についてくるように言い放った。

 とどまっても仕方が無い…ついていくか。

 多分この女が、タナトスが言っていてた女だろうからな。

 腕の中でルナが妙に興奮してる、もしかして……あの巨大な胸に反応してるってわけじゃ……ああ、完全に俺の血だ。

 タナトスも、大分大きく見えたが、この女とどっちがデカいんだろうか。


「その腕に抱いているのがTの娘か、面影があるな……その宝石の様な目なんてそっくりだ」


 こちらへと女が近寄り、ルナの顔を覗き混むが。

 それに対してルナは、完全に胸に目が行ってる……やっぱり俺の血だ。

 女は俺とルナを見比べた後に、笑い始め再び歩き始めた。


「まさかあのTが結婚するとは思わなかった、あの気むずかしいTを…どうやって落としたいんだい?」

「それよりも、アンタは俺に自己紹介をしてないが?それとも産まれた姿でご挨拶でもしようか?……あれ?」


 妙だな、いつもなら興奮するのに…全然反応をしめさないぞ。


「それも面白そうだが、Tに止められているんだ、それに私は処女だからお断りしておくよ、彼女から来た話だとかなり獣らしいから」


 随分と情報が出回ってるな、タナトスの奴め…どこまで話してるんだ?

 それより…この直ぐ女に対するセリフを吐く癖を直さないとな、子どもが居るのに。

 俺がすこし落ち込むと、ルナも暗い顔になりながらも、指をしゃぶってくる。

 お前はどんだけ指に執着するんだ、いっそのこと関節外して渡しておいた方が、右手が大分自由になるかもしれない。

 まぁ、おしゃぶりを用意していない俺とタナトスの責任だが。

 にしてもだ…この女がタナトスの事をTって呼ぶのが気になるな、多分彼女の事を周りに悟られない為の配慮かもしれない。


「そうだ、私の名前だけど、エルビルって言うんだけど、皆からはエルって呼ばれてる、見たとおりエルフ、それもダークエルフ……ん?不思議な物を見る顔をしてるけど」

「…俺、エルフを見るの初めてでな、今まで人間と死神と亡者くらいしか見たことがない」


 エルは驚いた顔をした後に、俺の顔を覗き混ん出来た、ルナ普通に胸を触るのは気にしないのか?

 しかもルナ…目が輝いてやがる、それにしてもデカいな……。

 ………やっぱり性欲が湧かない、ゾンビになって壊れたか……だとしたら最悪だ。


「綺麗な目をしてる、そこに惚れたのか…あるいはマスクと肉体の裏に隠された、本性かもしれない、君の中には不思議な光が見える…とても強い生命力と強い魅力が溢れている」

「…見えるのか?そんな物が、本当に」

「まう、あう」


 彼女の話を聞いたルナが、俺の胸の辺りをさわり始め、笑顔を向けてきた。

 言葉をちゃんと理解してる、かなり賢い子だな、これも俺の血筋かな。


「それじゃ、向かうとしよう、Tから君たちの世話を頼まれてる、何、心配することはない、部屋は沢山ある」

「いやいや、部屋とかも問題じゃなくて、俺がアンタと同棲しても良いのかよ?」


 しばらく考え込んだ後、エルは親指を立てながら笑顔を見せてきた。

 つまり、問題は無いと言う事か。

 見た目と違い、かなり陽気な性格をしているようだ。



 エルに連れられ、目的地に到着した。

 目的地に到着し、最初に目に入ったのは、巨大な洋館。

 洋館は黒いレンガに赤い屋根で出来ており、壁には翼の生えた化け物の石像、門の前にはケルベロスの石像が二体飾られていた。

 まさかこれが、俺達の住むって言う場所じゃないだろうな?


「着いた、中に入ろう」


 やっぱり、ここなのかよ。

 凄く心配になってくるぜ、だがエルだけがこの洋館に、一人で住んでいるのだろうか。

 もしかすると、使用人がいるのかもしれない。

 彼女が扉を開けると同時に、奇声にも近いような遠吠えと、何か名前を叫んでいるような声が聞こえてきた。

 その声はこちらへと確実に近づき、玄関ホールの真ん中に設置された大きい階段、その上から声は聞こえ、左の通路から響いてくる。

 驚愕する俺の隣で、エルは笑っていた。


「またやっているのか、本当に懲りない三人だな」

「待ちなさい!バイオレット!今日はお客様が来るのよ!?」

「いい加減服を着ろ!僕たちまで風邪を引いたらどうする気だ!?お前が服を着ないと僕たちも服がきれないじゃないか!」

「やだ!ドレス着たくない!動きやすいのが良い!」


 声のする方を見ていると、紫色の髪をした少女が、素っ裸で廊下を階段を駆け下りてきた。

 それに続いて、今度は別の女が裸で飛び出して階段に手をついたが、俺に気づいたのか悲鳴を上げて逃げて行った……あれ?今なんか頭、二つね?


「「変態!もうお嫁に行けない!」」

 

 なんか、凄い事故が起こったぞ、しかもアニメとかにありそうなセリフだ。

 だが…何故に俺が変態だと叫ばれなければいけないのか、とんだとばっちりだ。

 さっきの少女に関しては、エルの後ろに隠れているが見事に捕獲された。


「やーだー!ドレス着たくないの!」

「分かった分かった、お客様が着ているからせめて服くらいは着るんだ、それも相手は男の人だ、恥ずかしいだろ?」

 

 紫色の髪をした少女、瞳も髪同様に紫色だが、さらに深い色をしていた。

 不思議なのは、頭から動物の様な耳が生えているところ。

 さっきからピクピクと動いて、なんか可愛い、それに紫色の尻尾まで生えてるなんて……ヤバいな。

 俺…動物好きだから、なんか無性に可愛がりたくなってくる、実家でもゴールデンを5匹に、ドーベルマンを三匹、そして俺が小さい頃からいるラフ・コリーのダンテ……久々に会いたくなってきたな。

 昔の記憶に浸っていると、エルに掴まった少女は暴れ始め、きゃーきゃーと騒ぎながらどこかへと行ってしまった、見ためどうりに子どもだな。


「騒がしくてすまない、彼女達はこの館で暮らしている住人でね、まぁ後で紹介をするから良いか、これから館内を案内しよう、まずここが玄関だ、入って直ぐ目の前に二階へと上がる階段があるが、他にも五カ所ほど存在する、それからこの館は全部で三階経てだが、地下室も存在する、そこにも住人が住んでいるんだ、まぁ私も含めると今住んでいるのは、六人ほどだ、まぁ会わせられるのはさっきのバイオレットと、双子のメイとレイ、それからマリーナだ」


 エルは俺の肩に手を回し、歩き始めた。

 随分と積極的だ、嫌いじゃ無いタイプだぜ。

 まず最初に案内されたのはトイレだった、俺は何故かと理由を聞くと、トイレの場所を知っておけば困らないだろうと答えられた。

 ごもっともな答えです、と言いたくなるな。

 次に案内されたのは、俺とルナの寝室、館が大きいだけあり、部屋もかなり広いものだった。


「ここが君たちの部屋だ、タナトスがいつ戻って来ても良いようにベッドはダブル、ベビーベッドも用意しておこうと思ったのだが……全て売り切れで、どこにも無かった……街で老夫婦の間にも子どもが出来て出産したと言う話を聞いたときは、全身に鳥肌が立ったよ」


 俺も今、凄い鳥肌が立った、背筋が凍るくらいに。

 次に案内されたのが食堂、次にプレイルーム、バイオレットが遊ぶ場所らしいがルナにも丁度良いかもしれない、そして次に風呂場に来たのだが。

 またここで、相手にとっては悲劇が起こる。


「ここが風呂場、おっと、マリーナ、入っていたのか、いつも水着だから気づかなかった」

「ななな、なんで男がいるの!?やだ私胸丸出し!見ないでよ!さっさと出てってよ!この変態痴漢男!」


 浴槽に浸かる金髪の人魚、頭からは提灯がついている、テレビでみるチョウチンアンコウだまんまだ。

 だが何より驚いたのは、彼女のでかさだろう、エルでさえ俺より数センチ低いのに…俺の二倍ほどありそうな巨体をしている。

 とにかく彼女は、何もかも、全てがデカい、規格外過ぎる。

 そして、何故俺は今日、二度も変態扱いされないといけないのだ。

 俺はクズと呼ばれるのはなれてるが、変態なんて呼ばれたこと無いぞ!

 エルに連れられ、俺達は大きい広場に通された。

 暖炉に見た事のない生物を使った毛皮の絨毯、顔は虎なんだがライオンみたいなたてがみが着いてるな、どっちなんだよこれ。

 彼女は暖炉の前にある祖ソファに腰掛け、俺にも座る様に指示してきた…仕方ないから座るか。


「どうだね?素晴らしい屋敷だろう?」

「二回ほど、変態扱いされたけどな」

「まう!」


 ルナもご立腹だ、顔が凄いしかめっ面になってる。

 頭を撫でながらあやすも……全然収まらない、むしろおかしくなってる。


「ルナ、パパは笑顔が見たいな、そんな怖い顔じゃなくて……どうしたものか、マスク外したら笑ってくれるか?」


 返事がない、お怒り中の様だ、仕方ないな。

 考えたら今日、朝からずっとマスク着けてたから、それも関係してるのか?

 全然顔が治らないルナの為に、俺はマスクを外し素顔を見せてやる、すると直ぐに笑顔になり手を伸ばしてきた。

 やっぱりこれか、お前も俺の顔が好きなんだな、可愛い奴だ。


「凄い美形だ…右頬の傷が残念だが、タナトスが惚れたのも納得だ」

「アンタも顔に惹かれるか?俺の周りに来るのはそればかりだ、こうして俺が結婚をしたのは、タナトスが他の女と違っていたのかもしれない」


 俺には、記憶がない。

 あるのは……微妙なところだけ、何故彼女と結婚したところも思い出す事が出来ない。

 出来る事なら、思い出したい。

 彼女の何処に惹かれ、そして惚れていったのか、ルナが産まれた日の事も。

 なんとしてでも…思い出さないといけない。

 過去の女達の事は簡単に忘れられる、まるでそれと同じように、思い出す事が難しい。


「彼女は、そんな顔だけに惹かれる尻軽じゃないよ、さっきも言ったが、彼女は気むずかしいんだ、だが彼女が惚れた理由……それの一つは、今分かった、君自身の本心はとても優しい、理由までは分からないが、それがねじ曲がってしまい、本当の自分を隠しているようにも見える、多分君は娘と居るときに本来の自分がさらけ出せているんじゃないかい?タナトスに会っている時もそうなのかもしれない、彼女はそういうのを見破るのが上手くてね」


 本来の……俺。

 考えた事がない……いつも、女の体を考えてたりしてたが……本心は優しいか。

 確かに、俺が本心で笑ってるのは、実家の犬達と戯れてる時か、ペットショップで動物や熱帯魚を見てる時くらいだな。

 いつも作り出す笑顔、それらは全て本心じゃない、いや、本心もある。

 快楽に溺れてる時が特に…だが、その顔を見てたまに言われる言葉がある……感情が無いみたい。

 俺にとってのセックスは、人間が食って寝ると全く同じ、殆ど習慣になっていると言える。

 ただ単に、俺の欲望を満たすのと同時に、相手のも満たすと言った方が正しい。

 ……だから、作り笑いをして、相手をおびき寄せる…まさに俺の顔は、疑似餌と同じ。

 誰も俺の本心なんて見てない、だから俺も見せない。

 だからこそ、俺はクズになれた…クズになりたくてなったんじゃない、自然とクズの道へと進んでた。

 本当に………無意識のうちにだ。


「自覚を…していなかったようだね、君は、タルナトスと接している時が一番いい顔をしている、マスクを着けていてもハッキリと分かる、ただ他の女は簡単に騙されるだろうが、私はそう簡単にはいかない、彼女はその顔を知っていたのかもしれない、心の底から本当の安らぎを求める君を見つけたのかもしれない……なんたって彼女は…」

「エル!着替えてきた!これで恥ずかしくない!」

「ハァ……気が重い、なんで知らない男に裸を…えぇ!?」

「一応僕の体なんだから気を付けてよレイ、僕だ……うそ?」


 俺達の前に、先ほどの三人が姿を現し、俺の顔を見て絶句する。

 バイオレットは、先ほどの裸とは違い、しっかりと洋服を着た上でおめかしをしている。

 それに先ほどの頭が二つある女、片方は髪が黒のロングに目が赤、もう片方は白髪に青い目をしていた。

 この二人、さっき俺の事を変態とか言ってたが…これから一緒に住むんだから誤解を解いておく必要があるな。

 正直不本意だが…仕方ない…やろう。


「さっきは悪かったな、だがアレは不可抗力だ、そこだけは理解してくれないか?」

「は…はい!あれはバイオレットが悪いんです!それに裸を見られた位、そんなに気にしてません!」

「さっき超気にしてたじゃん、死ねとか言ってて、レイはイケメンを見ると直ぐ猫かぶ…」


 何してるんだ?手で自分の口を塞いだぞ?

 もしかして…両方で一つの肉体を共有しているからお互いの意思で、操作ができるのか。


「三人共、彼がタナトスの話していたタカオカジンだよ、そして腕の中にいるのがタナトスの娘、タルナトスだ」

「タナトスに似てる!てか目元のほくろが似すぎ!超可愛いんだけど!ねぇ抱っこさせて!」


ルナに手を伸ばしてきたが、本人が強く拒絶をした。


「ほうら、メイお姉ちゃんですよ~、怖くないからあそびまちょうね」

「やめようよメイ、嫌がってるのに無理矢理は可哀想だよ」


 二人の言い争いが始まると、バイオレットが俺の方まで近づき、ルナの顔を覗き混んできた。

 すごく興味ありげの表情が可愛いが、耳と尻尾が気になる。

 超触りたい!ふわふわしてそうで気持ちよさそう!絶対気持ち良いってあれ!

 だって…犬みたいに尻尾振ってるもん、紫だけど。

 ……これ以上、俺の欲望を押さえる事はできなかった。

 俺は、バイオレットの頭を撫でながら、耳を触っていた。


「やべぇ……最高…このふわふわ感がたまらねぇ」

 

 耳を触る度に、バイオレットから出てはいけないような声が漏れるが、俺の手は止ることは無かった。

 なんか、実家の犬達を触ってる気分だ、疲れた心が癒やされていく。

 将来、ルナが大きくなったら犬を飼いたいな、毛並みがよくて、大きくてふわふわした、賢い犬だ。

 ……ん?なんか横から凄く冷たい視線を感じる。

 原因はメイとレイだった、凄く冷たい目で見てくるんだがなんだよ。


「もしかして……ロリコン?」

「いや…残念だが、俺はロリコンじゃない、単に動物類が好きで、こうして可愛がるのが好きなだけだ、実家でも犬を飼っていてこうしてよく遊んでたんだ、だから懐かしくてついついこうして可愛がりたくなっちまってさ」

「そういえばタナトスが言っていたな、彼は一年以上下界に帰ってないから、動物に触れあえなくて寂しいって」


 俺の疑惑は多少晴れたようだが、レイの方が明らかに疑ってる目をしている。

 完全に警戒をされてる感じか、にしても……このバイオレットとかは一体何者なんだ?

 耳や尻尾は獣、それに二人は双子だろうし…あのマリーナって女は完全に人魚だった。


「…三人とも、彼に自己紹介をしたほうがいいんじゃないか?」

「そうね、私はメイ、レイとは双子でシャム双生児と呼ばれてるの、首以外は全部一つだから二人で共有、種族は魔女なんだけど…この体のせいで追い出されたの」

「そして僕がレイ、メイの妹らしいんだけど、正直僕が姉の可能性もあるんだ、まぁメイが姉に拘るから半分諦めてるんだけどね、でも僕はあまり貴方を信用したわけじゃない、裸を見られた事は例え事故だとしても、許さないよ」


 怖いな、相当敵視されてる。

 別に自ら見たわけじゃない、確かに見たかが、あれは本当に事故だ。

 むしろ、どう回避しろと言うんだよ。

 これは心の中で言わせてもらう、俺は悪く無い!何も悪く無い!

 だが、俺の意見など言っても通用はしなさそうだな、まぁそのうち誤解は解けるだろう。


「俺は…宝岡仁、タナトスの夫でタルナトスの父親らしい」

「らしいってどういうこと?貴方は父親では無いと言う事ですか?」


 やっべ、口が滑った。

 タルナトスの父親であることは確かだろうが、俺には記憶が無いから覚えて無い。


「忘れていた、彼は記憶喪失なんだ、タナトスの話だと肉体と精神の融合がまだ完全じゃないらしく、まだ完全には思い出せていないらしい」


 俺へ対しての視線が、もの凄く怖い物に変った。

 メイとバイオレットとエルの三人からは問題ない、だがレイの視線が怖い。

 俺は別にお前へ何かしたわけじゃ無い、なのになんでこんな目に遭わないと行けないんだ。

 ガキには興味なんざない。


「でも赤ちゃんが懐いているなら、本当の父親でしょ?見た感じ雰囲気とかそっくりじゃん」

「そうだけど、なんか怪しい、もしかしたらタナトス姉さんを騙したのかもしれない」

「タナトスの話によると、彼女の方が一目惚れをしたらしい、それじゃ話はこの辺にして、食事にしよう」


 エルにより強制的に話は終了した。

 俺とルナは、彼女達に連れられ食堂へと向かう。

 食卓には大量の料理が置かれているのだが、どれも食材が気持ち悪い。

 三つ目の猿の頭、背中に巨大な口が着いた魚の丸焼き、大量の目玉が浮いた紫色のスープ。

 それを四人は、まるで豪華な食事でも食べるかのように食べていた。

 正直気持ち悪い、なんでこんな平然と食べる事が出来るんだよ。


「食べないのかい?」

「……俺は遠慮しておく」


 俺はルナを抱き上げ、部屋へと向かう。

 あんなのを見せられて、食欲が湧くどころか、逆に失せる。

 ベッドに潜り込み、ルナを横に寝かせると直ぐに眠り始めた。

 ここまで来るのに多少時間が掛かった、座っている間に腕で眠り、泣いて、ミルクを飲んでだ。

 殆どベッドに寝かせる事すら出来なかったんだからな。

 気づけば、俺はルナを静かに撫でている間に、眠ってしまった。

新たな生活の始まりを迎える二人。

有効的に接してくる三人と敵視してくる一人、無関心の一人を除きつつも、彼らの生活がスタートする。

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