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第一話 俺が父親だと!?

タナトスと娘のルナと共に異世界に旅立ったジン。

三人には予期せぬ事が起こり始める。

冷え込む空気と体に当たる雨、俺はそんな最悪な状況で目を覚ました。

一瞬、これは夢だと思いながらも、辺りを見わたす…すると、俺の腕の中には一人の赤ん坊が抱かれている。

白く長い髪、黒い毛布にくるまれた赤ん坊。

辺り一面にあるのは海外映画で見るような墓石と、鉄の柵、そして俺自身がより掛かっていた古い木だけ。

赤ん坊は俺の腕の中で泣き続けていたが、目を覚ました俺を見て、泣き止み、笑顔を見せ始める。


「なんだここ……?つか、この赤ん坊はなんだよ、俺は海外に来た覚えは無いぞ…?」


そう、俺の記憶では学校に行くときに電車に乗っていた。

……そこで、同じ高校の女生徒を着けたはずだ……そこから、どうなったんだ?

痴漢が逃げて、階段の所で引き止めたところまでの記憶はある。

だがそこから先の、記憶が、どうしても思い出せない。

すっぽり、そこだけが抜けているかのように、とても大切な物が見つからない。

例えるならば……ラムネのビー玉だけが、消えているかのようにだ。

まぁ、ビー玉が無くても支障が無いから大した事じゃないんだろう、それよりも問題はこの赤ん坊だ。


「お前どこのガキだよ…って答えられるわけないか、まだ赤ん坊だからな、ペラペラ喋られたら逆に怖いぜ、まるでホラーだ」


赤ん坊は首をかしげ、俺に手を伸ばしてくる。

そんな手を伸ばしてきて何をする気だよ、それにしてもだ。

この赤ん坊の顔にある泣きぼくろ……妙に俺のに似てる気がするんだよな。

この絶妙な位置とかそっくりだぞ。

何故に俺と同じ左目下にあるんだ、妙に親近感が湧くんだが。


「ガキを見捨てるってのも、夢見が悪いしな、お前の母ちゃん探すのに苦労しそうだが…よく見ると美人だから直ぐに見つかるかもな、母ちゃんが美人ならな」

「まう!」


……可愛いな、おい。

何がまう!だよ、しっかりと返事が出来るんじゃねぇか、しかも超元気に。

…赤ん坊って案外可愛いんだな、いつか欲しいな、自分のガキ。


「さてと、ところでここは一体どこだ?俺はなんでこんな所で寝てた……おい、なに人の指をおしゃぶりに…!?」


赤ん坊が俺の指にしゃぶりつき、注意をしようとするとそこには。

綺麗な白い骨の腕があった、それを赤ん坊が夢中でしゃぶっている。


「なんじゃこりゃ!?俺の右腕が!綺麗に白骨化してんじゃねぇか!?てかしゃぶるな!ばっちいぞ!」


俺は急いで赤ん坊の口から指を抜き、何が起きているのか考えた。

駄目だ……全然わからん、つか何右腕が白骨化している上に、普通に動かせるんだよ!?

まるで映画や漫画の世界じゃねぇか!

俺は混乱しながらも、再び腕を確認する。


「間違いなく……これは俺の腕だ…しっかりと関節で繋がってる、まさか左…は無事か」


俺は赤ん坊を抱えみながら、座り込んだ。

そして状況整理に入った、今置かれている状況を確認するために。

まず、俺はどこか分からない所の墓場にいる、腕には見ず知らずの赤ん坊を抱いていた、それでいて右腕が白骨化してる。

………全然理解できねぇ。

一体全体なんだよこれ、最近学校とかでオタク共が言ってる、異世界なんとかってやつなのか!?

いやいや、現実とかであり得ないだろう、どうせ漫画とかの話だし。

もしかしたら、何か薬を飲まされたとか、後は前に関係を持った女達の報復とか、そこからへんだろうな。


「考えてたら頭痛くなってきた……考えても仕方ないから行くか」

「まうま」


だから…まうまって何だよ!?可愛いんだよこんちきしょう!

多分、返事をしているんだろが、なんて言ってるのか全然わからないしな。

てかこの赤ん坊、性別どっちだ?見た目からして女っぽいけど。

とりあえず、確認してみるか。

俺が確認をしようと、服を脱がしていると俺達の向かい側から女の悲鳴が上がる。

ヤバいかもしれない……赤ん坊を脱がしてる変態だと思われるかもしれないぞ……。


「ゾ、ゾンビが!ゾンビが赤ちゃんを襲ってる!しかも丁寧に洋服まで逃がしてるわ!」

「何!?ゾンビが赤ちゃんに暴行を!?」


おい、まさかだが、これは変な方向に走らないよな?


「ゾンビが赤ん坊の洋服を脱がして、変態行為をしようとしてるだって!?」

「ゾンビが女を襲って、無理矢理赤ちゃんプレイをしようとしてるだって!?なんて羨ましいんだ!」


おいコラ!今、明らかに最後おかしかっただろうが!完全に自分の願望を叫んだだろう!

気づけば男達は、俺の方へと全速力で、向かってきていた。

俺も全速力で走った、掴まれば……半殺しに合いそうだから。

後ろを振る帰る事も無く、俺は無我夢中で走り続け、気づけば男達を振り切っていた……びっくりしたな。


「酷い目に遭った…アイツ等、俺の事をゾンビとか呼んでたよな……俺どんな顔してるんだ?」


鏡とかないか?せめて鏡の代わりにある物があれば良いんだが。

周りを見わたすと、雨で出来た水溜まりがあった、それを利用して顔を確認した。

すると何かが、俺の顔から水溜りの中へと落下した。

……痛い!痛い!痛い!左目超痛い!なんか超痛い!


「何だよこれ!?痛い痛い!染みる!なんか染みて浸食してくる!」


俺は急いで左目を押さえたが、そこには目玉が無い。

まさかと思い水溜まりを漁ると、手には目玉が握られ、俺を見てきた。

俺が目玉を見ながら、俺が俺自身を見てる……混乱してくるな。

つまりあれか?これは俺の目玉で、左目が壊れたエアガンからBB弾がポロって落ちるのと同じ感覚で落下したと言う事か!?


「俺……ゾンビになっちまったのか……色んな女と関係を持っていた俺が…それともこっちが本当の俺で、あの頃の俺が夢だったのか?…もうどっちでもいいか、これが現実というのは間違いなさそうだ…だって痛けりゃそうだろう!」


このまま俺は、あの赤ん坊を食べる事になるのか?

想像しただけで気持ち悪い、俺グロ耐性あんましないからな…それに可哀想すぎる。

別の意味で食うのはすきだけどよ、食用として考えるのは無理がありすぎるだろ。

頭を抱えて、俺が悩むと腹を空かせたのか、赤ん坊が泣き始めた。

急いで近寄り抱き上げあやしたが、ここら辺に粉ミルクを売っている店なんて……まてよ。

俺は記憶の中である点に引っかかった、確か、近くに鞄があったような気がする。

そこから…哺乳瓶らしき物が飛び出していなかったか?

もしそうだとすると、この赤ん坊の母親が置いていった物かもしれない、もしそうなら取りに行けばミルクが手に入る。


「……アイツ等まだいるかな…また出会ったら厄介だ」


こうしている間にも、赤ん坊は泣き続ける。

急いであの場所へ戻り、バッグを回収する必要がある、だがどうやって戻るかが問題だ。

俺の顔は知られているだろう、何より俺がゾンビになっている事で、攻撃を仕掛けられる事だってあり得るのだから。

考えた結果、俺は赤ん坊を預けた方が安全では無いかと言う結論に至った。

ゾンビである俺が育てたとしても、この赤ん坊は将来、苦労しそうだ、それに母親が分からない…もしかすると直ぐ近くにいるかもしれない。

そうと決まれば、バッグを回収した後に、そっと預ける事にしよう。

俺と赤ん坊は再び墓場へと向かい、無事に鞄を回収に成功したが…女の姿はない。


「どうすっかな……お前もゾンビより、人間の方が良いよな?って悪い悪い、今なんとかしてミルク作るからな」


……粉ミルクってどう作るんだ?

鞄の中を確認してみると、哺乳瓶と粉ミルク、そしてケースに入った真っ赤な石と、どこにでもありそうな鍋、最後にボトルに入った水が五本、あとはオムツが数枚とお尻ふきが入っていた。

なんで石なんか入ってるんだ?ルビーでもないようだし、どうしてこんなに厳重に仕舞ってあるんだ?


「爆発とかしないよな?……熱ッ!」


石を取り出し、見わたしていると、突如、石は熱を発しだした。

まさか、これでお湯を湧かすのか?

色々と鞄を漁っていると一枚の手紙を見つけた、宛先は俺の名前、宝岡仁(タカオカジン)と書かれている。


「……ジンへ、タルナトスのミルクは水を鍋に入れた後、フレイム・ストーンを鍋に入れると沸騰するので…それを哺乳瓶に粉と一緒に入れて、人肌になるまで覚ました後に飲ませてください……愛するタナトスより……は?誰?」


タナトス?どっかで聞いた事があるが、思い出せない。

とりあえずミルクの作り方も分かった事だ…作るとするか。

この馬鹿熱い石を、水を入れた鍋に放り込む……一応水掛けて洗うか、落としたから汚いし。

無事にミルクを作り終え、赤ん坊にミルクを与えると、赤ん坊は一気に飲み始めた。


「よしよし、もう少しゆっくり飲め…悪かったな、辛い思いさせて……お前タルナトスって言うのか?」


返事が無い、ミルクに夢中のようだ。

にしても、なんで俺の名前が手紙に書かれている、それに愛するタナトスって誰の事だ。

赤ん坊の名前は、恐らくタルナトスで合っているのか、後で名前を呼んでみるとしよう。

……そういえば、一年くらい前に、俺が相手をした女でタナトスと言う名が出たことがあったな……誰だったか。

電波系で…オタクのアイドルだったけか。

ゴスロリ系を着てて、骸骨を頭に着けてる女が……タナトス様がどうとか言っていた気がするが、あと少しで思い出せるのに。


「あうあ!」

「飲み終わったのか?……そういや、昔テレビで赤ん坊はミルク飲ませた後に、背中を優しく叩いてたな」


記憶にあるとおりに背中を叩いてやると、もの凄く大きいゲップをかましてきた。

こいつは将来大物になるな、まさか後ろの墓石を壊して……るだと?

冗談の積もりで振り向いた先には、見事な程に墓石が破壊されていた。


「お前……スーパーペビーかよ、それともたまたま墓石が壊れかけていたかだな…不思議だな、お前を見てると、心なしか安心するよ」

「あう?」


自覚をしていない顔をしてる、だが妙に手放したくないのは何故だ?

俺はロリコンになった覚えも無ければ、ガキを……いや覚えがあり過ぎて、これ以上は止めておこう。

だが、なんで俺がこの赤ん坊を育てないといけないんだ。

タナトスって誰だよ!?なんで俺の名前知ってるんだよ!

それにここは一体どこなんだ!?

俺の苛つきを察したのか、赤ん坊は不安げな顔をし始めた。


「悪い悪い、怒ってないからな、そんな怖がるなって…ゾンビになって俺は人間と変らないから…ところでお前の名前って、タルナトスで良いのか?」


赤ん坊の目が今まで以上に輝いた、まさかこれで当たっているのか?

もう一度名前を呼んで見ると、次は手まで伸ばしてきた、嬉しいみたいだな。

この子の名前はタルナトス……タルナトス……。

俺の頭には女の声でこの名を呼ぶ声が、一瞬響き渡った。


「タルナトス…長いから、そうだな……ルナって呼ばせてもらうが良いか?」

「あうあうあー!」


凄い喜び様だ、そこまで喜んで貰えるとは思ってもいなかった。

でも…まさか赤ん坊が…ここまで表情豊かで…愛らしいとは思わなかった。

俺はいつも一人で過ごしたっけか、両親は働きに出て、家にいたのは家政婦くらい。

最初にクラスの女と関係を持ち、そして家政婦、外を歩いている女と広がって行く。

それからは。男子からは嫌われるが、別に俺には関係がない、そいつらには関係の無いことで突っかかってくるけど。

避けて、足を転ばせてやれば、簡単に逆上して話を大きく出来た。

しっかりと証拠を押さえて、正当防衛として伝える、そうするだけで良い。

場合によっては殴られ、証拠を固めた上で、溝に撃つ。

そうやって育った、気がつけば寄りつくのは、関係や顔で判断した女ばかり。

それなのに……なんで俺が、赤ん坊の世話をしてる…それもゾンビになってだ。

天罰なのか……あるいは…思い着かないな。


「お前は…どうした?そんなしかめっ面して?可愛い顔がだいな…」


鈍い音と同時に、俺の頭部に激しい痛みが走った。

何か固い鈍器の様な物で。


「痛ぇ…なんだってんだよ……赤ん坊に当たったら……」

「黙れ!このゾンビ!」

「赤ん坊を奪い取れ!囓られてないかしっかりと確認をしろ!」


何しやがるんだ、この野郎共。

頭から血が出ている、それもこの感覚は覚えがあるぞ。

一度経験をした痛み……だが全く思い出す事が出来ない。

立ち上がろうとする俺を、男達は殴ったであろうシャベルを使い、再び殴り着けてきた。

酷い事をしやがる……俺は別に悪さをした訳でもないのによ。


「おい、赤ん坊を奪い取れ」

「何しやが…」


ルナを奪われそうになり、抵抗をしたが、殴られるせいで力が抜ける。

泣き叫ぶルナ、可哀想に……嫌なんだな。

だが…何故俺に懐いてくるんだ。

俺とお前は初対面のはずだろう……それなのに…なんで俺に、懐くんだ?


「このゾンビとガキ、妙に似てねぇか?親子だったりしてな」

「バカ、ゾンビがガキ育てるわけがねぇだろ、どうせ食用だ…ゾンビってのは、どういつもこいつも、人間を食うことしか考えてねぇ、それは魔物も同じだ、例え理性があったとしても、最後には本能が勝って、恋人や親兄弟関係無しに食っちまう、こいつだってそうだ、まだゾンビになりたてでそのうち、ガキを食うぞ、腹に噛みついて、鶏肉を食いちぎる様に引き裂いた後、飛び出す内蔵を啜るんだよ」

「俺は……そんな事を……しない……」


俺が喋る毎に、殴られた。

否定をしても、手を伸ばしても、この男達は止めない。

殴られる度に、意識が遠のいて行く……ルナの声も…聞こえなくなる。

気がつけば…俺は、気を失い、土に埋められていた。


あれからどれほどの時間が経ったのだろうか。

目を覚ますと、そこは全てが闇。

闇以外には、何も存在しない、そして見ることも出来ない。

冷たい土、雨が降っているせいで、更に冷たく冷え込む。

映画とかでは、ゾンビとかは土の中から這い出てくるが……どうやって出てきているのだろうか。

やはり棺に入れられているから?だとしたら壊す必要がある。

だが俺は、そんな丁寧な物に入れられていない、土が直接、俺を上から覆っている。

そのおかげで六に口も動かせない…土も水を含むせいで重くなり、全身にかなり負荷が掛かってくる。

これで俺も、完全に終わりか。

何故ゾンビになったのか、何故意味の分からない状況に陥るのか。

全ての謎が、解ける事無く…俺は死んでいくと言うのか。

悲しい最後だ……美女に看取られながら死にたかったぜ……だがそれも敵わないなら…腹をくくるか。

……痛ぇ!なんか目に刺さった!

何か鋭いのが目に刺さった!睫毛が刺さるより痛い!


「やっと見つけた!良かった…なんとか無事だった」


目の痛みに耐えながら、もう片方の目で見上げると、どことなく見た事があるような女が泣きながら俺を見ていた。

女は俺の手を引き、土から引っ張り出し、抱き締めてくる。

抱きしめて貰えるのは嬉しいが、随分と積極的な女だ。

綺麗な顔に……ルナに似ている?


「アンタ、もしかして…俺に赤ん坊を預けた女か?何考えてるんだ!?アンタ自分の子どもだろう!」

「何言っているの?私だよジン、タナトス、私達結婚したじゃ……まさか」


今、俺達が結婚してるとか行ったのか?

俺は結婚なんてした覚えがない、それにこの女がタナトスと言う事なら、あの手紙もこの女が書いたと言う事か。


「どうしよう……ジンが記憶喪失になっちゃった…時間経過で戻ると思うけど、どうしよう、最悪のパターンじゃない!」

「待て待て、記憶喪失とかなんだってんだ?状況を説明してくれないか?」


タナトスと名乗る女は泣きながらも、説明してくれた、しっかり抱き締めてきたが。

どうも彼女の話によると、ここは異世界で、俺はその世界にゾンビとして蘇生されたらしい。

ルナは俺とタナトスの間に産まれた娘であり、神と人間のハーフ、そして俺は元いた世界では既に死んだ存在だと聞かされた。

最初は理解が出来なかったが、彼女はどこからか写真を撮りだし、俺に見せてくる。

それには幸せそうな俺、そしてタナトス、そして俺の腕に抱かれたルナの姿があった。

もしこれが本当だとしたら、俺はとんでもない事をしようとしたのかもしれない、いや、今その状況だ。


「状況はイマイチつかめてないが、ある程度は理解出来た、もしそうだとしたらルナが危険だぞ」

「分かってる、だから来たの、この水晶を見通してね、どうもジンの様子がおかしいかったんだけど、これでハッキリと分かったわ」


タナトスは懐から水晶を取り出し、俺に見せつけると、何かが写り始めた。

写り込んだのは神父らしき男、そして泣きながら暴れているルナの姿だ。


「タルナトス!酷い!嫌がってるのに!それになんで死神を教会に連れて行くわけ!?頭おかしいんじゃないの!?」


見た様子だと、かなりヤバそうだ。


「この教会の場所は分かるか?」

「分かるどころか、今すぐ飛んで行ける距離よ、私達の大切な合いの結晶に酷い事をするなんて許せない!今すぐお灸を据えてやる!」


彼女は俺の手を取る、すると空か黒い羽が降り始めた。

次の瞬間、外にいたはずの俺達は、水晶に写り込んだ教会の中へと移動していた。

驚いた顔をする者達、そして神父の腕の中で泣き、暴れながら俺達へと手を伸ばすルナの姿。

タナトスは怒り、そして手から魔方陣が現れると大鎌を召喚した。


「その子を返してもらいに来たわ、その子は彼の娘、アンデッドだからと言って子育てが出来ないと思ってたら大間違い、もし拒否をするなら今ここで、数百年前の悪夢を再来させる、嫌でしょ?」


彼女の迫力はもの凄かった。

周りの空気は凍りつき、全員が俺達を見つめる。


「し…死神タナトス!?何故死神とアンデッドが、神聖なる教会に!?」

「死神タナトス?もしかして、あの伝説の?」

「いや、あれはただの伝説だ、ありえるはずがない!」


椅子に座る男の言葉と同時に、タナトスは姿を消した。

そして悲鳴が上がり、そちらをみると、彼女が男に大鎌を向け、今にも殺しそうな目付きをしている。

これが本気の死神、もしさっき聞いた話しが本当だとすれば…俺はとんでもない女と結婚をしていたのかもしれない。

だが…彼女の後ろ姿はとても凜々しく、強い母を感じさせる。


「おい神父様、その子を返してくれないか?抵抗をしないでその子を渡してくれれば、アンタには手を出さない、アンタにはリスクを犯す理由は無いだろう?」

「君は…どうして…そこまでこの子に拘るのだ?そんなにこの赤子が喰らいたいのか?」


喰らいたい?違う。

俺の目的は、ただ一つだけだ。


「俺が、その子の親父だからだ、見てみろ、アンタに懐くどころか嫌がって、俺の元に来たがってる、神父ならどうするか分かってくれるだろう?」


俺がそう問いかけると、神父は黙り込む。

次の瞬間、俺にキャンドルスタンドを投げつけ、怯んでいる間に別の部屋に逃げられてしまう。

急いで神父が逃げたであろう部屋へと入る、そこにはルナにナイフを突き付ける神父……今、俺の中の何かが切れたのが分かった。

この男には、チャンスを与えてやった、それを見事に踏みにじった!

俺はクズだ…それはハッキリと自覚してる、女と遊んで飽きたら捨てる、だが野郎は…それ以上にクズだぜ。

なんの罪もない赤ん坊に、刃物を向ける時点で、俺以上のクズ。


「それ以上近づくな!それ以上近づくのであれば」

「殺すのか?神に仕えている野郎が、笑わせるんじゃねよ!後一ミリでも刃を近づけてみろ、お前の首を引き千切った後に、首から下を十字架にくくりつけた後、その首をお前の首から下にファックさせてやる、俺はやると言ったらやる男だ、女とヤル時と同じ感覚でお前を殺してやる」


こんなに怒るのは久々だ、俺はそれだけルナを心配していたということか。

記憶にはないが、ルナは俺の子で間違いない。

なんたって、ほくろがそっくりで、どことなく俺に似た美形な顔は間違い無く俺の子だ。

そして、何故だがタナトスを信じようと思えてくる。


「わ、分かった!返すこんな赤ん坊!」


俺は神父からルナを受け取った。

そして、安心したのか一息ついた神父に、回し蹴りを入れた後に倒れ込んだ上から、股間に一発蹴りを入れる。


「俺の娘がこんなだと?調子に乗るのもいい加減にしとけよ、偽神父、テメェは地獄行き確定だ」


俺は泣き続けるルナを優しく抱き締め、タナトスの求めと戻った。


教会から出た俺達は、静かな森の中に逃げ込んだ。

泣き疲れて眠るルナ、安心と俺の記憶喪失で複雑な顔をするタナトス。

俺はタナトスから、詳しい話を聞き、俺達の出会いからこれまでの事を全て聞いた。

正直、普通であれば信じられないだろうが、彼女の話を聞いていくと、少しだけ記憶が蘇る。

彼女とのデートをしていた時の記憶、まだそれだけしか思い出せない。


「ヤバっ、時間があまりないから執拗事項と、必要な物を渡しておくから、まず二人にはここから先にあるジョロヴァキアって街に行って欲しいの、その街にエルフが居るはずだから、多分あっちの方から接触を図ってくると思う、だからその人に従って行動して、あとこれが二人の着替えと、タルナトスの換えのオムとミルクね、バイバーイ愛してるからねジン!」


タナトスはそう言いながら、空から黒い羽が降り、黒い光と共に消えていった。

とりあえず…彼女を信じるしかないな、つかエルフってなんだよ。

俺はルナを抱き上げ、タナトスから渡された荷物と共に、ジョロヴァキアと呼ばれる街へと向かった。

記憶を無くしたジン、それでも彼は、タルナトスを自分の娘として受け入れる事にした。

これから先、二人の身に何が起こるのか。


この回は一度、完成仕掛けたんですが、気に入らず半分以上を消して作り直しました。

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