17.帰宅
えー、私フライア。現在私が生まれたレイファング山という少し変な名前の山へ向かって竜王と我が前世からの親友奈緒ことスイとどこまでも広がる青い空を飛んでおります。
まあ何があったかと言うと、大体一、二時間前なんですけどね? ちょっとこういうことがありまして……
* * * * * *
『フライア、お前の親の元に行くぞ』
『……はい?』
『早く準備しろ。出発するぞ』
いやいや、そんなこと唐突に言われても……
『何でですか?』
『ようやくお前の巣が見つかったんだ。両親も一か月も自分の娘が行方不明だったら心配で寝られないだろう。
まさか、お前がダンジョンに潜っている間、我が何もせずただただ寝ているだけとでも思っておったのか?』
『いいえ滅相もない』
『で、準備は良いのか?』
『私は大丈夫です。あ、スイも行く?』
『行く行く~』
『ならば行くぞ。我についてこい』
『『はーい』』
* * * * * *
……と、言う訳なんですよ。久々にマザーファザーに会えると聞いて、私心ピョンピョンですよ、ピョンピョン。
ん? そのテンションはどうしたんだって? 何となくですたい。
『竜王さん、私の巣に着くのに後どれぐらいですか?』
『安心しろ、まだまだだ』
うん、まだまだかあ……約半年会ってないからなあ……マザーファザーに怒られるだろうなあ……まあ当然の事はしてるつもりあるからね、不可抗力だけど。
にしても、何て言おうかなあ……無難に『ごめんなさい』? それとも『心配かけてごめんなさい』って付け足す? うーむ。
そんな事を考えていると、あの懐かしい山が見えてきた。あれ? さっきまだまだって言ってなかった? 私の気のせいかな?
『竜王さん、さっき私の巣までまだまだって言ってましたよね?』
『言ったな』
『じゃあ何で私が住んでた山が見えるんでしょうか?』
『話に聞くと、お前が行方不明になってから二週間経った時に引っ越したそうだ。本当はもっと待っていたかったと話していたな』
『ああ、なるほど。じゃあ竜王さんは私の両親にもあったんですね?』
『いや、会ってないが』
『え? それなのに何でそんな詳しいんですか?』
『{千里眼}という万里を見渡す事のできるスキルと{聴覚強化}を使ったのだ』
思いっきり盗聴に近いじゃないですかヤダー。だから話に聞くとって言ったのか。そりゃそうだよな、盗聴してるもの。
まあ、言われてみれば飛ぶ練習をしていたときにファザーがそんな事をいっていたような気がする。それからが濃い生活すぎてうろ覚えだけれども。
あ、たった今思い出したんだけれども、私のマザー……竜王の大々ファンじゃね? 竜王、大丈夫かねえ…私の…知ったこっちゃないけど。
『んっ……んっ……ぷはあ! うまっ! ここの水うまっ!』
今私は水分補給にある湖に来ている。名前は知らない。
『ホントに美味しいねえ。こんなにきれいで美味しい水は久しぶりだよ』
『当然だ。この湖の水はこの大陸一綺麗でうまい水として有名なのだからな。サイディ国などの都市に新鮮な状態の水を持っていっただけで大金持ちになるくらいだぞ』
『『はえー』』
すげえ……そんな水飲んでんのか私ら……でも言っちゃうと日本の天然水の方が美味しかった。ちょっと違うけどい○はすとかも。
『さて、そろそろ休憩は止めにして出発するぞ。もうすぐで巣に着く』
『『はーい』』
マザー、ファザー。もうすぐであなたの娘が着きますよ。……大物と新しい友達連れて。
『見えたぞ。あそこだ』
『はあーやっと着いた……半日かけてようやく着くって何……もう夕方なんだけど……』
『そうだね……私もお腹減った……』
ようやく目的地が見えた竜王一行は疲弊しきっておりますので、飯をくれくださいお願いします。と言う気持ちでマザーファザーがいるらしい巣に向かって近付いていった、が。
……何故かバランスを崩してしまい、私は巣に突っ込む形で落下してしまったのだ。解せぬ。
『ダイナミック帰宅!!!!!』
『キャアッ!?』
『な、なんだ!?』
『『……やりやがったこいつ……』』
『え!? 竜王様がなんでこんな場所に!?』
何か奈緒と竜王が頭を抱えているが、私の知っちゃこっちゃない。問題は私が巣のある崖に刺さっている事だ。
……抜けねえ。下は木、上は断崖絶壁、今刺さってる高さは大体50メートル位は軽く超えてるんじゃないかな? うん。
『う"ーん、ふーん"……うん、助けて』
『はいはい、多少痛くても我慢してねー鳥なんだから』
そう言って私の体をかぎ爪で捕らえ、抜こうとする奈緒。やがてスポンッという音と共に落下し始める私の身体。……ま、た、か。
『いやいや、いくらなんでも飛ぶわ。そこまで馬鹿じゃないし』
『逆にそこまで馬鹿だったらあんた生きてない』
『それもそうか』
『『はっはっは』』
『笑ってないではよう戻れ』
『『すんません……』』
奈緒と二人で竜王の元に戻る。私ら反省は出来るいい子よ、後悔は絶対しないけど。
ま、なんやかんやありましたが……
『父さん、母さん、ただいまー』
『『は?』』
困惑している様子の両親。まあいきなり王様が現れて死んだと思ってた娘がひょいって出てきたんだから気持ちはわかるよ、わかるけどね?
『それはちょっと酷くない……?』
項垂れる私にファザーが近付く。
『お前……本当にフライアか……?』
『ええ、森にモンスター狩りに行ったら偶然たまたまボスモンスターに遭遇してそのまま遭難したバカ娘のフライアです』
『きゃーーーーー! フライアちゃん生きてたの! 良かった、本当に良かったわ!』
さっきまで硬直していたマザーが復活し、私に擦り寄ってくる。あれ? こんなキャラだったっけ? まあいっか。
『もう、心配したのよ……あれからずっと寝ないでずっとお父さんと探してたのよ?』
『ごめんなさい……』
『謝らなくていい。むしろ謝らなければいけないのはお父さんの方だ。俺がもっと見張っていれば……まあそれはともかく、本当に戻ってきてくれて良かった……』
両親が私の帰りを喜ぶ。……やっぱり心配させてるよねえ……それはさておき。
『その事だけど、今私が無事にここにいるのも、全部竜王さんのお陰なんだよ』
『『はっ! そうだ竜王様!!』』
『なぜ竜王様と来たんだ? フライア』
『そうねえ、お母さんも気になるわ』
『実は……』
*** フライア説明中 ***
『成る程……竜王様、私達の大事な娘を助けて下さり、本当に心から感謝致します』
『頭を上げろ、我は当然の事をしたまでだ』
『有り難いお言葉……それで、娘を次代竜王として訓練しているっていうのは本当ですか?』
『ああ。だから時折ここに連れてくるが、基本は我と共に過ごさせても良いか?』
『どうぞどうぞ! 親としてそんな誇らしい事はありませんし、時々でも顔を見せてくれるなら心配もございません』
『そうか、すまぬな。フライアの事は任せろ』
父と竜王が会話をしていたとき、私のお腹がくぅーと鳴った。……しょうがないでしょ! 朝ごはん食べてからずっと飛んでたんだから! おら腹が減っただー。
『あらあら、お腹が空いたのね。今美味しいものを狩ってきてあげるわ』
『それでは、竜王様。狭い所ですがおくつろぎ下さい』
『ああ』
『行ってらっしゃーい』
『……私、空気じゃね?』
あっ……奈緒の存在忘れてた……
『おい今何て思ったのか分かったぞゴルァ』
おうふ……この地獄耳め……
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