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12.竜王は困惑する。

竜王視点です。

 我は竜王。最強と謳われる種族、"ドラゴン"を従え導く者なり。

 その竜王である我は、ひたすらに困惑している。その理由は最近拾った仔竜についてである。支配者と呼ばれる魔物に襲われ、死にかけの所を拾い治療した後、次代竜王の素質があると見込んでダンジョンに放り込んだのだが・・・・・・


 ・・・・・・あやつ、何処におるのだ?

 放り込んでから既に三週間が経っており、生きているのならば連れ帰り、反省を行った後次の訓練に移ろうと考えておったのだが。


 「(全く、どこまで潜ったのだ。一向に見つかる気配が無いぞ。)」


 ――まさか、(ワーム)に食われた?

 竜王に1つの、最悪の事態が頭をよぎった。いやいや、そんなわけはない。この我が見込んだのだ。きっと生きているであろう。と、その考えを振り払うように頭をブンブンと振った。

 仕方がない。とにもかくも、捜すしかない。5日だ。5日捜してもし見つからないのであれば、あやつの事は諦めよう。

 そう考え、竜王はあの仔竜、フライアがまだ生きていることを願いながら、ダンジョンの奥深くへと歩を進めるのだった。



 ――1日目。ダンジョンのそう浅くない場所。しかし、深いのかと聞かれれば深くはない階層。

 この階層には[ローワーム]という[ワーム]の劣化種が徘徊している。深層に比べれば我らドラゴンなら本当に生まれたての仔竜でなければ苦労せずに倒せるだろう。

 

 しばらく歩くと、少し開けた通路に出た。辺りには[ローワーム]の死骸がそこそこに転がっている。

 『ふむ、上手くやっているようだな。』

と、満足そうに頷く。竜王が頷いた理由、それは[ローワーム]の死骸がどれも()()()()()()()()()()()()()()()が残っていたからだ。他にも死骸があるが、後は食い散らかしたようなものや、魔法――[風系統の魔法]で細切れになったものばかりだ。こんなに情報があるなら、これをやったのはあの仔竜フライアだとわかる。

 それに、ここらで殺られるような奴では無いであろう、と竜王は確信していた。


 ・・・・・・あの眼。あやつが目を覚ましたときのあれは、強者の眼だ。

 我は、一度だけあやつと()()()をした奴を見たことがある。そう、確か人間に[勇者]と呼ばれた奴だった。あやつも、とんでもない強さを秘めていた。

 まだあやつは磨く前の宝石だが、磨けば煌々と輝くであろう。・・・・・・やはり、あやつは何としてでも連れ戻すべきか。ううむ、こんな事になるのであれば、探知の魔法を習得しておくべきだった。

 しかし、ここで考えていても仕方がない。明日はもう少し深い階層に行ってみるとするか・・・・・・。



 ――2日目。先日よりも深い階層。深層に近い場所だ。ここにもいないとなると、あやつは深層まで行ったことになる。そうなると、面倒なことになる。深層には[ワーム]が出てくる。それだけならいい。

 最近、このダンジョンの深層に[竜鷲]が住み着いたという噂を聞いたのだ。深層までは行けないだろうと思い伝えなかったがもし、深層まで行って[竜鷲]に出くわしているなら・・・・・・非常にまずい。この階層にいることを願おう。

 しかし、そんな竜王の願いは届かず今日もフライアは見つからず、焦っていた。先日と違い、ワームの死骸も、食い散らかした跡も見つからず、何の痕跡も残っていなかったのだ。

 いや、まだだ。まだ死んだとは限らない。後三日ある。焦る必要はない。竜王はそう考え、また歩を進めるのだった。



 ――3日目。いよいよ深層についた。もしあやつがここまで来ていて、生きているのならば・・・・・・訓練のハードルを上げても良いかもしれぬ。

 竜王はそう考えて気を気を紛らわし、平静を装っていた。

 『っふ、この我がここまで動揺するとはな・・・・・・()()()以来だ。』

 そう懐かしんでいると、


 「「キチキチキチキチ・・・・・・」」


 と、[ワーム]達が竜王を囲む。

 『・・・・・・今の我は気分が悪い。去ね。』

 竜王が{念話}を使い、[ワーム]達に念を送る。しかし、[ワーム]達は竜王の警告を無視し、襲いかかった。ただのドラゴンならいけるとでも考えたのだろう。


 だが、相手が悪かった。

 確かに()()()()()()()なら数の利で勝てたかもしれない。が、相手はドラゴンの中でも最強の――神にも近い存在――竜王だ。

 結果は言わずもがな。数十体いた[ワーム]は竜王の魔法によって跡形もなくなった。

 『我に喧嘩を売ったのは、浅はかな考えだったな。恨むのならば己を恨め。』

 まぁ、もう聞こえてないだろうし、聞こえていたとしてもどうでもいいがな。竜王はそう思った。



 それから少しの間が経った後、竜王はダンジョンの最深部、かなり広い部屋へ着くと言うときに、何かが聞こえた。

 『そんでさー、もう死ぬ! って思ったときにねー。』

 この声は・・・・・・フライアか? 良かった。生きていてよかった。竜王は安堵した。

 「(しかし・・・・・・誰かと話しているのか?)」

 1つ疑問が浮かんだが、すぐに頭のすみに追いやった。そんなことはどうでもいい。生きていればいい。

 

 そうして竜王はフライアの元へ歩んだ。

 『フライア、こんな所にいたのか。捜すのに手間がかかったぞ。』


 表に出してはいないが、とても嬉しそうに。

pvが6,200、ユニークが2,200を突破しました!皆様ありがとうございます!

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