クローン
単なる思いつきで書き始め、最後をどうまとめようかと悩みました。
ブルーカラー
Zefaro
第1話
プロローグ
僕は、孤児院で育った、だから高校も行っていない。
だからと言って、劣等感は持っていない。
人は、人、自分は1個の独立した存在だと思っている。
他人と比べる事など無意味な事だ。
小学生の頃から図書館に入り浸っていた。
何より静かで自分だけの時間を持てるからだ。
学校が終わると直ぐに図書館に行き好きな本を読み借りた。
そして、コンピュータは手に入らなかったが、今はコンピュータの時代だから一生懸命勉強した。
おかげで働く様になった今、コンピュータを手に入れて手足の様に使える。
そして、ハッカーの仲間入りをした。
プロテクトを解く事が何より生きがいになっている。
無論、他人の秘密を見るのも。
だが、ホームページを書き換える様な事はしない、見るだけ。
悪い事には違いない、しかし、泥棒に何故悪い事をしていると説教する様なものだ、十分悪いと認識している。
何時も海外のサーバーを何個か経由して、痕跡を残さない様に注意している。
ある日、日本政府のコンピュータをハッキングした。
そして、驚く事を見た、日本の人工、少子化問題を解決する方法と題してあった。
そのファイルには驚愕する事実が書いてあった。
今でも信じられない気持ちだ。
生まれたての赤ん坊のクローンを作り各都道府県の孤児院にばらまくと言う物だった。
リストを見て驚いた、自分の名前と孤児院の名がある。
伊丹京介、生年月日、2031年11月3日とある。
そして、オリジナル、今野明人2031年11月2日。
5人のクローンが作られていた。
そして、其の年、別の人も5人づつ、総勢30人。
伝える
事実をネット上に載せようかと迷った。
今では載せないで正解だと思っている。
多分載せたら政府が黙っていなかっただろう。
僕達クローンは皆殺しになって居たかも知れない。
僕は、自分と同じクローン達にコンタクトを取る事にした。
載っていた孤児院の住所に彼ら宛に手紙を書いた。
無論クローンだと言う事実は隠した。
彼らのショックを考えると書けなかった。
3人から返事が来た。
1人づつ会う事にした。
待ち合わせの喫茶店で待つ。
目印の雑誌を持っていたが、そんな物は必要無かった。
彼は、僕の顔を見るなり固まっていた。
僕も解って居たとは言え鏡を見る様で何とも複雑な気持ちになった。
取り敢えずお互いの自己紹介をした。
名前は、鈴木洋二。
彼は建設会社に勤めて居たが最近解雇されて失業中だと言う。
僕も失業中だと言った。
そして、彼は職業安定所で今、ある会社を紹介されていると言う。
大きな会社で多分採用されないだろうと言う事だった。
僕は、自分達がクローンである事を伝えた。
彼は最初信じなかった、無理も無い。
リストを見せると驚いていた。
僕は話を続けた、何とか他の人達とも連絡を取りたいと。
彼は最初反対だった、自分がクローンなどと教えてどうなると言う、混乱を招くだけだと。
しかし、僕は何も知らないより事実を知った方が良いと主張した。
そして、3人目に連絡を取る事にした。
神野明夫も同じ反応をした、やはり兄妹だ。
彼は農業法人に勤めていたが、同じように解雇されたと言う。
しかし、連絡を取り合って具体的に何をどうするのかは、その時は考えていなかった。
ともかく事実を知らせたかった。
会社
僕の所にも職業安定所から、ある会社の面接を受けて見ないかと連絡が来た。
最初気付かなかったが、洋二が紹介されたミラン総合商社と言う会社だ。
何か意図された物を感じたが、何も行動しないと何も解らないと思い面接を受けた。
1週間後採用通知が来た。
洋二に連絡を取ると洋二も採用されたと言う、そして、明夫も。
やはり何か裏がある。
初出勤してみた、洋二とも明夫とも部署が違って会う事は無い。
代わりにリストにあった伊部真知子と言う人が居た。
伊部真知子さんは花を栽培していたと言う。
そして、同じように解雇されたと言った。
大きな瞳と笑顔が印象的な人だ、背は170センチもあると言う。
で、僕は全貌が明らかになるまで待つ事にした。
無論、真知子さんがクローンなどとは言わない。
同じ部署に6人が集められた。
それぞれ自分の専門を磨く様に指示されて勉強が始まった。
僕は自分がしていた畜産についてだ。
暫くすると自分より2歳年下の6人が合流して12人、そしてまた6人。
18人を集めて合宿をすると言う。
そこは、あるホテルだった。
毒のある植物についてや、動物の危険性など普段の生活に必要の無い事ばかりだった。
そして、最終日豪華な食事が用意された。
珍しくお酒も出た。
どれも美味しくて夢中で食べた、そして、食べ終わる頃、意識が薄れて気絶した。
農場
目が覚めるとベッドに居た、ホテルかと思ったが部屋を出て驚いた。
緑の生い茂った草原の農場に居た。
誰もが驚いている、すると放送が流れた。
君達社員の初仕事は、この農場で自分の仕事を果たす様にとの事だった。
ここが何処だかも解らない。
仕事に必要な物は何でもあった。
農業に必要な物、畜産に必要な物、そして建設用資材まで。
それぞれ名前と仕事の内容がボードに示されている。
訳も解らず仕事をする事になった。
無論、仕事を拒否するものも現れた。
取り敢えず仕事をする人としない人と別れたが、何時の間にか彼らの姿は無かった。
そして、12人になっていた。
僕は取り敢えず仕事をした、状況を見定めるまで行動は控える。
3ヶ月、半年と時間が過ぎて行く。
娯楽も用意されているDVDで映画も見れるし音楽も聞ける。
給料が入っていたが使える場所が無いと思って居たら誰も居ない自動販売機の街へ行ける様になっていた。
自動販売レストランや映画館、ブテックにゲームセンターなど色々とある。
プールやジムまである、全て支払いはカードだ、カードを機械に差し込むと何でも買える。
街には他の農場の人達も来ていた、外国人の姿もある、アジア系とアラブ系の人が多い、だが同じクローンに会う事は無い。
親しく話をする友達も出来て来た。
仕事は似た様なものだ。
洋二も明夫も何処で何をしているのやら、多分何処かの農場にいるだろう。
次第にカップルも出来ていた。
僕は真知子さんと親しく話す様になっていた。
収穫の時期が来ると皆でトウモロコシやお米などの、その時期の物を収穫をする。
無論、全て機械化されている。
収穫を終えると何処からか飛行船がやって来て収穫物を持って行く。
野菜と肉は工場でフリーズドライ化して運ばれている。
彼らは武装していて、迂闊に近づけない。
倉庫に山積みされた収穫物を運んで飛行船に載せている。
僕は、何とかこの状況を抜け出したいと考えていた。
どうもこのまま帰れそうにないからだ。
真知子さんもこのまま帰れないのかと不安にかられていると言う。
しかし、状況を抜け出す良い方法を思いつかない。
そして、僕は決意した、何とか飛行船に乗る事を。
3度目の収穫物を運ぶ時、彼らが注意をそらした時に飛行船の車輪の格納庫に潜りこんだ。
車輪が入ると体ギリギリの狭い空間だ、パイプにしがみついていないと落ちる。
飛行船は各地を巡って収穫物を集めていた。
そして、最終的に基地の様な所に着いた。
夜を待って狭い格納庫を出た。
すると大きな飛行船が居た。
どうやら集めた収穫物を載せているらしい。
闇にまぎれ収穫物の影から飛行船に乗り込み収穫物の隙間に入る。。
収穫物を全部載せたのか飛行船が飛び立った。
何処に行くのか検討もつかない。
真っ暗闇の中、真知子さんに作って貰ったおにぎりを食べる。
小さな窓があり覗くと地球が見えて驚いた、これは宇宙船だ。
地球が小さくなって行く。
すると窓の外の星が流れた、何も見えない。
取り敢えず何処かに着くまで何も出来ない。
眠ろうとしたが目が冴えて眠れない、時間だけが過ぎて行く。
何時の間にか眠っていた。
衝撃があって目が覚めた。
何処かに着いたらしい。
取り敢えず収穫物の中に身を隠す。
何処かに運ばれて行く。
多分倉庫だろう。
助けられる
倉庫の中で収穫物の中なら抜け出る。
ドアらしき所に行くと自動で開く、人影は無い。
窓を覗き外を目指す。
何とか外に出れた、外は薄暗く朝の様だ。警備が居たが全く手薄でいとも簡単に敷地の外に出れた。
見慣れない街だ、道路が動いている。
人々は、まだ活動していない様だ。
何処か隠れる所を探し夜を待つ事にした。
お腹が減ってたまらない。
ビルとビルの隙間に体を隠せる良い所があった。
取り敢えず身を隠し眠る事にした、なかなか眠れなかったが神経が疲れていたのか次第に睡魔が襲って来た。
何時間眠っただろうか?
骨と言う骨がきしむ。
あたりが暗くなり始めていた。
夜の街を夜通し彷徨い歩く、何処に行ったら良いのか解らない。
明け方、歩き疲れ空腹と睡魔で倒れこむ、意識が遠のいて行く。
目を覚ますとベッドにいた。
あたりを見渡すと、おばあさんがこっちを見ている。
何か言われたが何を言っているのか解らない。
ジェスチャーで何も解らないと伝える。
おばあさんがテーブルの上の食べ物を指さす。
食べろと言う事らしい、嬉しかった。
夢中で食べた、こんなに美味しい物が、この世にあったのかと思うくらい美味しかった。
おばあさんが何か言うと体格の良いおじいさんが現れた。
身構えた。
が、何か言いながら椅子に座った。
おばあさんが壁からヘッドギヤの様な物を出して自分の頭につけて見せてから、僕に渡して来た。
身振りでつけろと言う。
つけると目眩がして目の前が真っ暗になった、何も出来なかった。
何分か意識を失っていた、目の前が明るくなると、おばあさんが何か言っている。
よく聞くと言葉が解るかと言っている。
次第に言葉が聞き取れる、と同時に話す事も出来る。
助けてくれた感謝を伝える。
何処から来たのかと言うので地球と言う星だと説明した。
そして、クーロンと言う事以外の何もかも話した。
驚いていた。
そして、同情してくれた。
ここはミラと言う星だと言う。
昔、息子が使っていた部屋を自由に使って良いと言う。
そして驚く事に、おじいさんが身分証も作ってくれると言う、勿論偽造で違法だ。
おじいさんは、政府の方針に反対する勢力の組織に入っていると言う、何となく納得。
そして、この星の事を夜通し話してくれた。
この星では、食料から何から何まで全て輸入に頼っていると言う。
そして、ある年代になると全てカードと言う形で配給されると言う。
衣類から何まで配給されたカードで必要な物を手に入れていると言う。
無論、制限はある。
何でも機械化が進みブルーカラーが極端に少ないと言う。
僕は、居候をしながらライブラリー(図書館)に通って最詳しい情報を集めた。
コンピュータの言語も勉強した、基本は同じだ、限りなく細かくデジタルにしている。
ミラの人口は60億、殆どがホワイトカラーと言われる人達だ。
ブルーカラーの仕事の殆どはロボットがやっている、無論ロボットでは出来ない事もある。
物凄く高いビルが立ち並ぶ、殆どの人々は公共交通機関を利用している。
無論、エアカーも縦横無尽に走っている。
調べると、人口重力を使っている、つまり重力は質量に比例するから、仮想質量を作りだし、鋭角的にその重力を発生させていると言う。
したがってエアカーも飛行機も落ちる事がない。
全て自動運転で運行されて事故は殆ど起きないと言う。
ネットワークに組み込まれて管理されているから乗って行き先を告げるだけで良い。
公共エアカーは全て赤い車体をしている、それ以外は個人の持ち物だ。
駐車スペースを借りるにも恐ろしく値段が高い。
東京の駐車スペースよりもはるかに高い。
地下に移動チューブが網の目の様に走っている。
チューブの中は真空に保たれて、その中を物凄いスピードで客車が走る。
駅に着くとチュウブが閉められて客車のドアが開き人々が出入りする。
お店も何処もロボットが対応している。
トラブルが発生した時だけ人間が対応する。
マニュアルに無い事はロボットには出来ない。
無論、高性能のロボットもある、アンドロイドと言う奴だ。
しかし、物凄く値段が高く一般には普及していない。
僕は、何時までもお世話になりっぱなしと言う訳には行かず宅急便の仕事を始めた。
ブルーカラーの人手不足で直ぐに採用された。
出会い
調べると食料を供給している会社は、3社だけ、どの会社も大会社だ。
ハッキングして内情を調べてみると地球に関係している会社は1つだけ。
自分が勤めていた、ミランと言う名の総合商社だ。
密かに社員を派遣して地球人に紛れ込んでいるらしい。
多分、政府に色々と圧力をかけているに違いない。
そうでなければ自分の存在を説明出来ない。
宇宙船の小さな窓から見た地球は、地球では無いらしい。
食料生産の星は、数件あった。
ミランは全部で3個の星で生産をしているらしい。
自分の居た農場は、そのどれかだ。
しかし、どの星か確信が持てない。
もっとも行こうにも宇宙船は無いが。
データーを書き換えて混乱させて倒産に追い込めないかとも考えたが倒産させたら真知子さん達がどうなるのか予測がつかなくて止めた。
暫くこの星で働いているしか道は無い。
その内チャンスもあるだろう。
ある日、おじいさんに呼ばれて行って見ると孫娘のナディアを紹介された。
日焼けした肌にクリっとした目をしていてスレンダーだ。
背は165センチくらい、この星ではチビだと言う。
髪は赤毛だ、染めて居るのかどうかは解らない。
この星の流行かも知れない。
ファッション関係の仕事をしていると言うだけあってセンスが良い。
よく笑う楽しい女性だ。
そして、何度か一緒に食事をした。
地球にある様な料理は全てある、無論お酒も。
この星の料理を知らないのでナディアに何もかもおまかせだ。
この星では、お金さえ払えば何でも手に入る。
もっとも武器は表向き売っていないが闇で売られている。
取り締まりもイタチごっこだ。
無論高価だ、目的が無ければ買う必要が無い。
日常に追われて農場の事を忘れかけている自分がいる。
しかし、今の自分に何が出来るだろう?
そんな時、ナディアの友達のユリンを紹介された。
ユリンは国防省の防衛部隊の宇宙船パイロットをしていると言う。
一目惚れをしてしまった。
長い髪をポニーテールにしている、目は濃いグリーンで防衛部隊に所属しているとは思えない優しい顔立ちをしている。
意気投合して3人でお酒を飲む約束をして後日飲みに出た。
2人共冗談が好きでお酒が入るにしたがって笑い声が絶えない。
そして、都合がつけば戦闘宇宙船に乗せてくれると言う。
無論、誰も乗れる訳では無い。
ユリンが招待してくれるから乗る事が出来る。
遊びで勝手に戦闘宇宙船を飛ばせる訳は無い、勿論訓練の一環だ。
ただ、静かに同乗させてもらうだけ。
シートベルトをつけて大気圏外に出て5機による戦闘訓練が始まる。
余りのGで何度か意識を失った。
敵の照準がロックされ警報が鳴った瞬間にワープに入り回避する。
3時間の戦闘訓練が終わった。
基地に帰るとフラフラだった。
ユリンに支えられて宇宙船を降りる。
よく気絶したままでなかったと褒められた。
それから何度かデートをして遂に告白をした。
受け入れられて嬉しかった。
何度かユリンの部屋でデートもした。
僕の給料の何倍も稼いでいる。
ある日、遂に自分がクローンである事を告白した。
彼女は人間である事に変わりは無いのでしょうと言ってくれた。
そして、もうすぐ長期休暇に入るから小型宇宙船を借りて、その星に行ってくれると言う。
僕は、倉庫の荷物が何処から運ばれたかを調べた、そして、遂にどの星か解った。
しかし、農場のある場所までは解らない。
僕の記憶にある草原と山の風景しか解らない。
行って見るしかない。
第1話 END
ユリンが長期休暇に入った。
僕はユリンに宇宙地図で、めぼしい星のメトラを示した。
ユリンが小型宇宙船を借りてくれた。
僕は、給料と貯金の全てで、おじいさんのツテでレーザーガンを手に入れた。
出発の時、ナディアが見送りに来てくれた。
目指す星は、かなり遠い。
大気圏を抜けてワープに入る、自動運転で暫くする事が無い。
ユリンと食事をして睡眠装置で眠る。
星が近づいたと知らせる警報で目が覚める。
ワープから抜け出る。
青い、本当に地球によく似ている。
夜の部分から地表に下りて行く。
朝もやの中を飛び、自分の居た農場を探す。
何処だか解らない。
覚えている高い山を探し朝日の昇る方向を考えた。
遂に見つけた。
離れた所に着陸をする。
農場に向かい真知子を探す。
真知子さんはバラ園に居た。
静かに声をかける、驚いて駆け寄ってくる。
取り敢えず宇宙船に真知子さんを連れて戻る。
ここは地球では無いと教えると驚いていた、そして、皆、故郷に帰れない不満がつのって居ると言う。
だが、ここでの生活に馴染んでいるのも事実。
中には一生ここで暮らしても良いと言う者も居ると言う。
暴動を起こすにも武器が無い、例え起こしても皆を乗せる宇宙船が無い。
暴動だけ起こしても直ぐに鎮圧されてしまうだろう。
真知子さんに一緒に来るかどうか尋ねたら自分だけと言う訳には行かないと言う。
説得してみたが意志は固い。
真知子さんと別れて一旦帰る事にした。
兄弟達の事も気になる、もう少し詳しく調べないといけない。
ミラに帰った。
調べるにしてもどうしたら良いのやら。
居場所が解っても武器も宇宙船も無い、誰も宇宙船など運転できる訳が無い。
今は、悩んでもどうしょうも無い。
ともかく彼らが地球に帰れたり出来れば良い。
いずれにせよ時間が必要だ。
数ヶ月が過ぎた。
思う所がありユリンに防衛軍特殊訓練を受けられないか聞いてみた。
上司に聞いて貰った所、特別に許可が出た。
早速訓練に参加した、厳しい、考えていたよりずっと厳しい。
ロープ一本でビルの外壁を渡ったり、ヘルと言う総合格闘技の訓練を受けたり、海で潜水訓練、エアバイクの教習など多岐に渡る。
あっと言う間に半年が過ぎた。
よく訓練に耐えたとお褒めの言葉もいただいた。
ミランの社長の行動を調べた。
毎年、夏になると海辺の別荘で休暇を取るらしい。
無論、警備もそれなりだと思う。
でも、やるしか無い。
全身黒ずくめのスポーツスタイルにして断崖を駆け上り夜を待つ。
事前に調べた所によると中へ侵入出来る所は一箇所しか無い。
センサーとセンサーの隙間が50センチくらいしか無い。
そこを走り抜ける。
少しでもぶれたらセンサーが警報をかき鳴らす。
特殊訓練の成果が試される。
夜11時を回った所で行動を起こした。
見張りが交代の時間で目が離れる。
目出し帽をかぶり中へ侵入するセンサーは静かだ。
中に入り社長を探す。
社長はホームバーで1人飲んでいた。
レーザーガンでグラスを割、声をかける。
動くな、少しでも動いたらぶっ放すと脅し、生産地のクローン達も人間の1人、休暇には故郷地球へ帰れる様にと要求した。
何とか約束をさせた、裏切ったら無言で今度は打つと宣告しておいて引き上げた。
帰る時も警備の隙間を掻い潜り帰った。
後で、約束が守られたか確かめなければならない。
ユリンの上司から連絡が来た、特殊訓練の成績が良かったから軍に入らないかと言われた。
入隊して構わないが暫く時間が欲しいと伝えた。
約束が守られたかを知る為にはユリンの協力が必要だ、しかし、暫く長期休暇は取れないと言う。
ハッキングで確かめるしか無い。
社長の命令文書を見る事が出来た、どうやら約束は守られた様だ。
確認が出来たので防衛軍特殊部隊に入隊した。
おじいさんも、おばあさんも、ナディアも喜んでくれた。
ユリンと内々でささやかなお祝いをした。
第2話
兄弟達
鈴木洋二は、思いがけず休暇を貰い帰れる事になり嬉しかった。
まさか自分の居た所が地球では無いと知って驚いていた。
農場から宇宙船に乗るなど考えても居なかった。
てっきり地球の何処かに居るものと思っていた。
地球の小さな島に着いた。
そこから専用の船で日本に向かう。
洋二はアパートに帰って来た、アパートは引き落としで家賃がキチンと支払われている、が、アパートに帰って来ても取り立ててする事も無い。
家族が居る訳でも無いし親しい友達が居る訳でも無い。
農場に居たほうが友人は多い。
洋二は京介に貰った資料を改めて眺めてて怒りが込み上げて来た。
マスコミに告発する事にした。
何社にも資料を送った。
ここの所大きなニュースも無かったので大きく取り上げられた。
取材も次々と来た。
遂に国会でも問題にされた、しかし、総理は初め知らん存ぜぬを決め込んだ。
だが、追求に追求されて、遂に認めた。
そして、演説で国の為にやった事だと、国とは皆さんの税金で運用されているものだ、その国民が減少してしまえば国家として成り立たなくなる。
クローンでも何でも良い国民が増えてくれれば国として機能してくれると。
そもそも新しい命を誕生させない国民が悪いとまで言い出した。
国の発表によるとクローンは毎年誕生して今現在1800人のクローンがいると言う。
このまま誕生させれば国民の3人に1人はクローンになると言う。
事態は日本だけでは無かった、先進国の殆どがクローンを誕生させて居た。
政府は揉めに揉めて遂にクローンの禁止を発表した。
ある日、洋二は街を歩いていると1人の女性が駆け寄って来て声をかけられた。
「京介さん、何時地球に帰って来たの?」
「いや、僕は洋二と言いますけど」
「ごめんなさい、そう言えばニュースに出て居た方ですね」
「京介は、ある意味兄弟です、どちらでお知り合いになられたのですか?」
「ミランと言う会社の農場ですわ」
「京介は元気なのですか?」
「今は、居ないのです、1度農場に来てくれましたが」
「失礼ですが、お名前は?」
「あら、ごめんなさい、伊部真知子と言います」
洋二の頭の中でリストが浮かんだ、確か伊部真知子と言う名があった。
自分も京介もミランに採用された、と言う事は、この子もクローンに違いない。
「京介に会った時に何か言っていましたか?」
「皆を開放したいと言っていました、そして、その時、私にも一緒に来ないかと誘われました」
「何処に来ないかと言っていたのですか?」
「ミランの本社がある星だそうです、でも、私一人だけそんな所に行けないと断ったのです」
「彼奴だ、きっと僕達が地球に帰れたのも彼奴が何かしたに違いない」
「そうかも知れないですね」
「でも、私、ここに家族が居る訳でも無いので、また農場に行くつもりです」
「僕も多分そうするかも」
真知子さんと別れて考えた、確かに家族も何も居ない、農場に行けば仕事に不自由しない、それに、ここではクローンと言う事がつきまとう。
神野明夫も久しぶりに地球に帰れて喜んでいた。
ニュースで自分達クローンの文字が踊っていた。
京介に連絡を取ろうとしたが連絡はつかない、そこで洋二に連絡してみる事にした。
連絡は直ぐに取れた、喫茶店で待ち合わせる。
「久しぶり」
「お互い元気そうだな」
「所で世間はクローンの事で大騒ぎだな」
「実は俺がマスコミにリークしたんだよ」
「君が?、また、どうして」
「どうも気分が悪くて」
「所で京介は、どうしているのか?解るか?」
「どうやら俺達が地球に帰れたのも京介が何かしたらしい」
「多分、元気でいるのだろう」
「これからどうする?」
「俺は、また農場に行く、ここに居ても煩わしいだけだし」
「それに、これからは、ちょくちょく帰って来れそうだし」
「多分、俺もそうするだろうな、ここには家族も何も居ないからな」
「農場に素敵な人も居るし」
「そうか、じゃ、また今度」
真知子は雑誌を見て驚いていた。
リストに自分の名前と孤児院の名前が載っている。
私もクローンなんだと、少しショックだった。
と、同時に皆にも会って見たいと思った。
しかし、方法が解らない。
真知子もここに居ても何もする事が無いと早めに農場に行く事にして会社に行って見た。
するとどうだろう、向こうから自分が歩いて来る、髪は短いが自分の顔だ。
向こうも気がついて立ち止まる。
「こんにちは」
「こんにちは、初めまして私、真知子と言います」
「私、菅野百合子、姉妹に会うのは初めてよ、変な感じね」
「本当ね、良かったら少し何処かで話さない」
「良いわよ、ついて来て」
会社を出て近くに喫茶店に行く。
「今日は、どうしたの?」
「早めに農場に行って仕事でもしようかと思って」
「あら、私もよ、だってする事が無いんですもの」
「私、他のクローン達を知っているの、連絡して何処かで今夜飲まない」
「本当、どんな人達」
「私達を地球に帰れる様にしてくれたらしい人の兄弟達なの」
「会って見たいわ」
真知子は早速洋二達に連絡をして今夜居酒屋で待ち合わせた。
4人で乾杯をする。
お互いミランの社員で本社が別の星などを話しあった。
お酒が進むにしたがって自分の仕事や農場での暮らしに花が咲いた。
「会社にお互いが連絡を取れる様にならないか聞いて見ようよ」
「そうね、また、こうやって飲みたいし」
「よし、僕が交渉しよう」
翌朝、洋二も会社に行き早く農場に行きたいと願い出た。
そして、知り合いに連絡を取れる様にして欲しいと要求した。
農場で、また何時もの生活が始まった。
メトロへ
京介は、防衛軍特殊部隊で毎日訓練にあたって居た。
時々、思う、真知子さんや洋二達が、どうして居るかを。
しかし、連絡の取りようが無い。
ユリンとまた行って見る以外の方法は無い。
しかし、お互いの休暇の日程が合わない。
あっと言う間に数ヶ月が過ぎた。
ユリンと一緒に長期休暇を取れる事になった。
「農場がどうなっているか知りたいのでしょう」
「実はそうなんだ、また行ってくれる?」
「良いわよ、でも結婚の事を真剣に考えてくれる?」
「クローンなんだぞ、オリジナルじゃ無いんだ、本当に良いのか?」
「貴方自身が好きなの、オリジナルに興味は無いわ」
「解った、君に任せるよ」
「でも、プロポーズくらいさせて欲しい」
「どうか僕と死ぬまで一緒に居てくれないか」
「喜んで」
また宇宙船を借りてミラを後にした。
ワープの間、ユリンは結婚式で何を着るか迷っていると言って僕に意見を求めて来た。
「有名ブランドで選んでも良いよ、今の僕なら少し蓄えがあるから」
「本当、嬉しい」
「で、式は何時にしたいの?」
「帰ったら直ぐにしたいの、かまわない?」
「君さえ良ければ僕は何時でも良い」
「でも、まだ誰にも連絡していないだろう、集まってくれるかな?」
「良いのよ人数じゃないから、ささやかな式でも良いの」
「貴方と早く一緒になれれば良いの」
「新婚旅行も考えなきゃね」
「旅行か、考えて居なかったわ」
「ピノと言う星のリゾートはどうかな?ゆっくり出来るらしいよ」
「何時の間にそんな事調べたの、任せるわ」
睡眠装置に入るまで、そんな事を話しあった。
目的地に近づいたと警報が鳴り起きる。
ワープから抜けで出て星に近づき前と同じように夜の部分を下りて行く。
目的の農場に着いて前回と同じ所に着陸する。
農場に近づき真知子さんを探す。
彼女は、まだ部屋にいるらしい。
誰もまだ起きて来ない。
そっとドアをノックする。
返事がしてドアが開く。
「あら、洋二さん、こんな時間にどうしたの?」
「洋二じゃない京介だ、洋二と会えるのか?」
「京介さんなんだ、入って」
詳しい話を真知子さんから聞く。
「じゃ、自由なんだね」
「そうよ、皆、地球に居てもしょうが無いので殆どの人が、ここに戻って来てるわ」
「洋二さん達にも自由に会える様になっているわ」
「京介さん、貴方が自由にしてくれたのでしょう?」
「僕は、ちょっと後押ししただけさ」
「ありがとう」
「皆にも連絡するわ、待ってて」
「そんなにゆっくりともしていられない、元気である事さえ判れば良い」
「じゃ、元気で」
農場から宇宙船に帰る。
ユリンに報告してあげる。
「じゃ、帰るのね」
「うん、もう安心だ」
帰る途中ベニーと言う星で指輪を買った。
おばあちゃん、おじいさんとナディアにもお土産を買った。
心の負担が消えて晴れやかだ。
「ねぇ、地球に帰りたくは無いの?」
「帰っても何もする事が無いよ」
「そのうち2人で観光でもするか」
「それ良いわね」
ミラに帰り結婚式の手配をあれやこれやしていた。
そんな時、身分証の偽造がバレた。
何でも軍で身元の再調査をしたとかで警察が踏み込んで来た。
結婚式どころでは無くなった。
直ぐに裁判が行われて判決が下った、軍での貢献が認められて禁錮一年ですんだ。
偽造は自分でしたと言いはった。
おじいさんに迷惑はかけられない。
ユリンが随分と悲しんだ様だ。
ユリンの両親も驚いて居たが、僕を信用してくれて居た。
ユリンが仕事を終えると毎日の様に面会に来てくれた。
軽犯罪なので仕事をしなければならない、と言うか社会復帰の為の仕事だ。
僕は料理を選択した、健康で居る為には料理が欠かせない、栄養も美味しさも。
意外と楽しい、作った料理が食べられて行くのがこんなに充実感があるとは知らなかった。
後は狭い部屋で、ひたすら体を鍛えた。
一年の刑期が終わり晴れて自由になれた。
本当はミラから追放されてもおかしくは無いのだが軍での貢献から新しく身分証が発行された。
正式にミラの住人になれた。
だが、もう軍には戻れない。
新しい仕事を探さなければ。
ユリンは失業していてもかまわないから結婚式をあげたいと言ってくれた。
ユリンの両親の許しを受けて、ささやかな式をあげた。
ユリンの友人や軍の関係者が集まってくれた。
何よりおじいさん、おばあさんが喜んでくれた。
自分に取って家族と呼べるのは他に居ない。
仕事
仕事をどうするか悩んだ。
会社勤めも性に合わないと思い特殊部隊での経験を活かせる探偵事務所を開く事にした。
小さな事務所とパソコンとカメラ等小物があれば良い。
看板を上げても仕事が直ぐに来る訳では無い。
事務所には何時の間にか体を鍛えるジム用品が増えていた。
営業と言っても何処へ行けば良いのか?
取り敢えずお世話になって居た軍に行ってみた。
何とか初仕事を貰えた、軍からの依頼は、ある政治家の身元調査だった。
何かと黒い噂のある人だ、だが、噂だけで証拠が無い。
早速、パソコンで調べる、プロテクトを掻い潜る。
どうも臭い、暗号の様な記号と数字が並ぶ。
これだけでは意味が解らない。
スケジュールを見て行動を起こす。
まずは彼の事務所に盗聴器を仕掛ける事にした。
夜中に忍び込み仕掛けた。
が、何も怪しい事は無い。
もう一度スケジュールを見た、何気に見るとおかしい所は無いが、やたら出張が多い。
これは尾行してみるしか無い。
尾行してみると必ず立ち寄る所がある、調べてみる価値あり。
何と、そこには彼の秘密の事務所があった。
一見個人の住宅の様な所だ、また夜中に忍び込みパソコンのIPアドレスを手に入れる。
帰ってパスワードと格闘する事2時間、遂に扉が開いた。
高額な金額が動いていた。
予定も書き込まれていた。
出張の最終日と重なる。
これは何かある。
場所は港の倉庫街の1画を示していた。
時間は夜の12時、早めに行き準備をする。
無線暗視カメラと集音器付き盗聴器を装備したハチの様な小さな物だ。
試験的に飛ばして見る、モニターに映し出される映像を見ながらコントロールする。
怪しいエアカーが下りて来た。
暫く待つと彼が部下を従えやって来た。
何か取引をするらしい。
エアカーの上にハチを止まらせて監視する。
彼の前で取引相手の男がサンプルを出した。
「混ざりっけ無しの上物です、確認を」
彼は黙ってそれを舐める。
部下に合図すると部下がカードと引き換えにアタッシュケースを貰う。
取引が終了した、時間にして5分。
部下のエアカーにハチを移動させて発信機を貼り付ける。
暫く走り部下は彼を降ろし何処かに向かう。
着いた所は郊外の新しいビルだ。
1階に事務所がある、その中に部下が入って行く。
暫くすると部下が出て来た、多分帰るのだろう。
事務所の鍵はカード式だ。
特殊部隊での訓練が生きる。
カードから細い線が幾つも出ているカードを差し込み手元の機械で暗号を解く。
めまぐるしく発光していた光が止まりカチと音がしてロックがとける。
中に入り探す。
空のアタッシュケースが置いてある。
何処かに金庫があるはず、部屋中をくまなく探す。
遂に見つけた、机の片側が金庫になっている。
最新機器では無く普通の鍵だ、この方が厄介だ。
鍵屋ではないから時間がかかる。
何とか開けるとやはり麻薬が入っていた。
麻薬の中に小さな小さな発信機を入れて鍵を閉める。
ドアもロックして速やかに帰った。
翌朝、軍に報告した。
後は軍が警察と連携するのか警察に任せるのかは知らない。
暫くすると例の政治家がニュースで踊っていた。
次の仕事がなかなか来ない。
まさかCMを大々的に打つ訳には行かない。
来るのは浮気調査ばかりだ、だんだん気が滅入る。
そんな時、また軍から依頼が来た、どうやら不穏な動きをしている団体があるらしい。
表面上は「御言の言葉」と言う宗教だ。
宗教と聞いて厄介な物を感じた。
何か特別な大きなベールで覆われているイメージだ。
早速ホームページを覗いて見る。
おかしな所は何処にも無い。
どんなに素晴らしい宗教かとか、この宗教で如何に救われたかの羅列だ。
何処から手をつけて良いのか解らない。
取り敢えず行って見るしか無い。
とてつもない広い敷地で社まで遠い。
白いベールを被った信者たちが黙々と歩いている。
後をついて行くとやっと社が見えた。
受付の様な所で聞かれる。
「入信されるのですか」
「取り敢えず体験と言うかお話を聞きたいと思いまして」
「そうですか、それではこちらへ」
と社とは別の方に案内される。
そこには数名の信者候補達がいた。
暫くすると担当者らしき人が来てホームページに書いてあった様な事を繰り返し話す。
実際うんざりとした。
まるで拷問を受けている様な時間だった。
案内人の後をついて施設を見学して回る。
ハッキリ言って歩き疲れた。目的が違い過ぎる。
たっぷり6時間引き回されて帰って来た。
何もする気が起きない。
取り敢えず睡眠薬を飲んでひたすら眠る。
朝、ユリンに起こされ昨日の事を話す。
「ただの宗教なんでしょう」
「今のところは」
「それを調べるのが今回の仕事だ」
「何も出て来ないと良いわね」
「しかし、それじゃ仕事にならない」
朝食を食べながら、他のパソコンにアクセスする為の事を考えていた。
やはり忍び込まなければ何も解らない。
「今度の休暇に旅行をしない?」
「ねぇ、聞いているの?」
「ごめんなんだって?」
「もう、良いわよ」
昼間の時間を浮気調査にあてて夜を待つ。
敷地をぐるりと囲む塀を乗り越える。
暗視ゴーグルをかけて進む、所々センサーの青い光が行く手を阻む。
昼間目をつけていた社の後ろの建物に忍び込む。
ホームページ用とは思えない大きなコンピュータがある。
何とかアクセスコードを手に入れて素早く帰る。
帰ってプロテクトを打ち破り中を隈なく調べる。
膨大な金額が動いている。
光子魚雷、レーザー拡散砲、戦闘宇宙船、いったい何をする気だ。
調べるとヨウリと言う惑星に銃器が集まっているのが解る。
取り敢えず軍に中間報告をする。
軍も驚いていた。
そして、取り敢えずここまでで良いと言われた。
ここから先は政府の諜報機関が動くと言う。
その後、その宗教が壊滅的な状態になったのは言うまでも無い。
しかし、信者が居る限り宗教そのものが無くなる訳では無い。
最終話
いったいどうやって手紙を出したのか解らないが軍経由で洋二から手紙が来た。
手紙によると最近収穫物を運ぶ船が時々しかやって来ないと言う。
倉庫の中は一杯で置く所にも困る有り様だと言う。
出来れば、その原因を探って何とか解決して欲しいとの事だった。
会社に要望書を出したがナシのつぶてだと言う。
洋二達は農場同士の連携を深め最近ではネットワークを組んで情報を共用していると言う。
兄弟達も全員連絡が取れたと言う。
早速、調べた、要するに多角経営に失敗して事業を縮小して来ている所らしい。
このままでは洋二達は会社に見捨てられてしまう危険性がある。
何とかしたいが資金もコネも無い。
そこで、ある大物政治家にコンタクトを取ろうとしたが、けんもほろろに相手にもしてくれない。
そこで非合法の手段に出た。
彼の別宅に全身黒ずくめで目出し帽かぶり中に入り愛人を拘束して彼の来るのを待つ事にした。
彼が帰って来る、ドアの影で彼の入って来るのを待つ。
彼が慌てて愛人に駆け寄った、そこでレーザーガンを出して声をかける。
「誰だ、貴様は」
「静かにしろ、騒ぐと痛い思いをする事になるぞ」
「何だ金か?金なら渡すから」
「お金が欲しい訳じゃ無い、先生の力を、ほんの少し貸して欲しいだけ」
「何だ、何をしろと言うのだ」
「先生の力で子会社作りミランと言う総合商社からメトラと言う星の農業権をゆずり受けて貰いたい、ミランは最近規模を縮小したがっているから簡単に手放してくれるはずだ」
「どうですか、先生」
「解った、そんな事なら直ぐにでもやってやる、だから助けてくれ」
「何、約束を守ってくれさえすれば何もしない、おまけに政治資金を提供出来ると思うよ」
「ただし約束を守って貰えない時は、解っているだろうな」
「解った、解った、約束は必ず守る」
その他の要求を告げて速やかに引き上げる、外で見張っていた秘書は後ろから一撃で眠らせた。
後は先生が約束を守ってくれるかどうかだ。
暫く様子を見るしか無い。
3週間後約束通り別会社がメトラの農業権を手に入れて1回目の宇宙船がメトラに飛んだ。
先生は約束通り洋二を役員にしてくれた。
食料は宅配システムになった、そして先生にも政治資金が渡る様になった。
洋二にも連絡が取れる様になって農閑期にミラで会う約束をした。
僕はユリンと空港に向えに行く、すると兄弟4人と真知子さん姉妹5人が宇宙船から下りて来た。
レストランで祝杯をあげる。
洋二が一言ありがとうと言ってくれた。
洋二と真知子さんは婚約したと言う
明夫は同じ農場の子と結婚したと言った。
僕は、ユリンとの結婚した事を報告すると皆が祝ってくれた。
これは後日解った事だが、大物政治家が若い頃、息子が誘拐されてミランの為に便宜を図ったらしい、彼の政治資金がミランから出ている。
息子の写真を見て驚いた、僕と同じ顔をしている。
オリジナルだ、当然オリジナルの生年月日と名前は間違っている。
息子は例の新会社の社長をしている。
はたして真実を語りお父さんと呼ぶべきか?
END
何とか最後のオチをつけられてホットしています。