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「恋愛」をテーマに一作

作者: 杏ひふみ

俺が目を覚ますと、白い部屋の中に居た。

ベッドも白。カーテンも白。窓は閉まっていたが、擦りガラスである為に入ってくる光も白。

白、白、白。

この"白"に塗れた部屋を一般的には"病室"と言うのだろう。

「ここは……?」

心の内に湧いた疑問が、ふと口から漏れ出す。

「M君! 目が覚めたの!?」

若い女性の声がする。――が、俺はその声に心当たりは無い。


「……お前は、誰だ?」


彼女は、鉄槌で殴られたような顔をした。


「――そうか、俺は事故ったのか……。」

彼女が言うには、俺は高校からの帰宅途中に事故をしたらしい。

その際に頭を打ち、意識にちょっとした障害が残ったとの事だ。

「それと、俺はまだ一番重要な事を聞いてないぞ。

お前は誰なんだ?」

その質問に、彼女はにこりと太陽のような笑みを浮かべ、答える。

「私はE。――あなたの彼女よ。」

その瞬間、俺はハッとした。

自分が面白い状況に置かれている事に、ただならぬ高揚感を覚えたのだ。

「とりあえず、屋上へ行きましょ。」


「なるほど、俺はそういう人だったのか……。」

彼女からは"かつての俺がどんな人間だったのか"という話を聞かされた。

交友関係、成績からちょっとした癖や嗜好などを仔細に渡って話す彼女。

俺はよく調べたものだと、呆れを通り越して関心すら覚えた。

「うん、そして……。」

「君が、俺の、彼女……。」

そう、二人は付き合っていたと言うのだ。

俺の言葉に少女は頬を紅潮させる。

その様、何と可愛らしい事か。


ふと、風が背後から流れる。

彼女の髪が舞い、その香りが俺の鼻腔をくすぐる。

その香りは甘く芳しく俺の嗅覚に響く。

彼女となら、第二の人生も楽しめる。

俺はそう感じていた

その扉の向こうから、恨めしく二人を見つめる瞳が二つ。

少女は、その瞳に気付かない。

だが――、俺は気付いている。その瞳が何であるのかも。

俺はそれへ向かって、口角を釣り上げた。




ここから後書き


ここまでお読み下さった方々、ありがとうございます。

さて、皆様は一部箇所に見られる「不審な点」にお気付きですか?

1p目だけを読むと、少しおかしな所はあるものの純愛物っぽい短編になっていると思います。

しかし2p目にて化けの皮が剥れます。

そう、実はM君に付き纏うEさん、彼女は彼女ではなかったのです。

変な日本語ですね…… She isn't his girlfriend. としたら伝わりやすいでしょうか。

つまりM君が記憶喪失なのを良い事に、以前から好きだった男の子に取り入ろうとしているのです。

扉の向こうから見つめるもの、それはM君の本当の彼女だった訳です。


勿論、それだけではありません。

何とM君、彼は「記憶喪失を装っているだけ」なのです。

事故に遭って意識が戻らなかった、そこから目覚め、見慣れぬ世界の中に落とされた彼は僅かながら混乱を見せますが、すぐに意識が覚醒します。

そして目の前にいる、見知らぬ少女が自分の彼女を騙っている訳です。

彼は、面白半分にその状況を利用している訳ですね。

最後に彼が「本当の彼女」に見せた嘲笑。

それには「お前はそこで吠え面かいてろw その悔しそうな顔、その恨めしそうな顔、ああ、何て愉快なんだろうw」

という意味が込められているのでしょうね

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