表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

プロローグ



   その戦争は 何故 始まったのだろうか


         何故 殺しあわなければならないのだろうか


             何故 この運命はこんなにも皮肉なのだろうか


                  あの美しい笑顔は 何処へ消えたのだろうか――





 某所――。

 風が哀しげに唸り声を鳴り響かせる。暗闇の中で、影が大きく動き出した。別の影は、ただじっと動く影を見つめている。

「――お前は間違っている」

 それは、美しく優しい女性の声である。

「世界を滅ぼしたところで、お前は何を手に入れられるか。いや――そこには、何も無い。お前が今思っている“幸せ”とは、紛い物にすぎんのだよ」

 そう影に言い聞かせ、女性が、その影の傍へと歩み寄った。そして、優しく影の手を取り、それを頬にそっと当てる。非常に――冷たいものを感じる。女性の眸から、一筋の涙が零れ落ちた。

「お前は、これ程までに冷たくなってしまったのか」

 その言葉に、影が小刻みに動く。

「皮肉なものよ。――私は知っている。お前の手は、あんなにも温かかったろう。お前は忘れてしまったのか?」

 影に問いかけるように呟き、その手を放す。ゆっくりと後ろへと退いた女性は、影の形相を見つめ強く目を瞑った。それは――、もはや人ではない。

「……すまないな。私が悪いのだ」

 女性は、大きく息を吐いた。

「お前が、リオンを怨む気持ちは解っている。私はお前にとって、憎き命なのだからな。――だが、怨むなら私を怨め。私もリオンを愛したのだ」

 咄嗟に、影が女性へと飛び掛った。だが、影は女性の目の前で崩れ落ちる。その影を、女性は哀しみ溢れた眸で見下ろした。

「今のお前では、私を殺れぬ。お前の力は、徐々に封印され始めているのだ。――時期に、お前は無力となり眠りにつく」

 女性が、再び大きく息を吐く。

「お前の為なのだ。わかってくれ――」

 冷たい風が辺りを包み込む。その唸り声は、まるで女性の心の涙のようにも聞こえる。女性は、振り返り影に背を向けると、ゆっくりと歩き始めた。

「お別れだ――」

 立ち止まり、影を振り向く。

「――今、私の腹の中には二人の赤子が眠っている。そのうちの一人は、エラゴの血を持って生まれてくるであろう。そして――、悪魔という異名を持つ」

 風が一段と不気味に唸り声を轟かせる。女性の美しく長い髪が、大きく揺れる。女性は、一息ついて静かに目を瞑った。

「母上から聞いたのだ。彼を産み落とすことにより、私の体は弱まり、いずれ命を落とすだろう――と。だが、私はこの子達を愛している。だから、産むことを決意した。堕ちるところまで堕ちてみせようではないか」

 女性の眸が、陽に当たり煌びやかに輝く。

「――この子達は、別々となり遠くへと飛ばされる。悪魔の子は自然の魔の道へと向かい、もう一人は神の道へと進むだろう。だが――いつか、出会う日が来る筈だ。私は、二人が幸せになることを願おう。そしてお前も、本当の“幸せ”を見つけ出してくれると良い」

 再び、ゆっくりと歩き始める。そして、高くある窓の向こう側の空を見上げ、語りかけるように口を開いた。

「――頼んだぞ、(リオン)。あの神話のように、この空に人々を結ぶ“虹の橋”を架けてくれ。私は、お前を信じ愛しているのだ」





     その空に虹の橋が架かる時


        その世界は真実の愛を手に入れる――








こちらでも連載開始しました。

初めまして、宜しくお願い致します。

この作品は完結までとても長くなるのですが、最後までお付き合いしてくださると嬉しいです。感想等がありましたら、是非聞かせてください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ