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勝手に召喚されたので関係者をぬい化しました

作者: 高月水都
掲載日:2025/08/30

倒した勇者とか聖女に「次がお前が魔王だ」という展開を求めて

 私はぬいぐるみが好きだ。でも、好きな物はしっかり見て選びたいし、お小遣いをもらっている立場だ。しっかり吟味して購入したい。


 その日は時間とお金があったから電車とバスを乗り継いでショッピングモールに行き、やっとショッピングモールに辿り着いて我が家に迎える子をしっかり吟味するためにショッピングモール内の店をはしごしている途中で、足元が光った。


「聖女召喚がなったぞ!!」

 困惑しているこちらをよそに、喚く人々。


「これが聖女か。フン。間抜けな顔だな」

 じろじろと見下したように告げてくる煌びやかな恰好をしている青年。


「早く、名前を聞きだしましょう」

 青年に話しかける男性の声に、ああ、これは名前を教えてはいけない奴だなとすぐに悟った。というか今の状況はいわゆる召喚物のテンプレ状態というのではないか。


 嫌な予感しかしない。というか、私は可愛いぬいぐるみを迎えるために時間とお金を使ってショッピングモールに行ったのになんでこんなところに連れてこられないといけないのだ。


 しかもこっちに対しての気遣いもなく、召喚に喜ぶ輩といかにもこっちを利用しようと目論んでいる雰囲気が伝わっている対応。


 怒りが湧くのは当然だろう。許せないと思えるのは誰でも同じだろう。だから、放った。


 召喚チートを。




「――さて」

 さっきまで騒がしかった人々はみないなくなった。


 いや、足元に転がっている。


「詳しいことを説明しなさい」

 足元に転がっているデフォルメされた人の姿のぬいぐるみを握りながら問い掛ける。


 うちに迎えるつもりだったぬいぐるみと似ても似つかない可愛くないおっさんのぬいぐるみ。もはや比べることすら失礼レベルなぬいぐるみ。

『な、何をしたんだっ⁉』

 いきなり、動けない状態になり、私に握られるほど小さくなったので慌てているそのぬいぐるみ――になった私の一番近くにいた男性は叫ぶ。


「何って、私の能力で【ぬい化】しただけですよ」

 ぬいぐるみを求める気持ちが強かったからだろう。私はこの世界に来てそんなチートを手に入れたのだ。


「私をどうしてここに呼んだの?私に何をするつもり? 何をさせたいの?」

 矢継ぎ早に尋ねるとぬいぐるみは最初は都合が悪いことなのか黙っていたが、

「ああ。黙っているんだ」

 ならば仕方ないわねとカバンの中から裁縫道具を取り出す。ぬいぐるみがほつれた時用の応急処置用の最低限しか入っていないが、糸切ばさみは小さいながら含まれている。


「ならば仕方ないわね。縫ってある糸を切って、中身の綿を取り出して……」

『殿下がっ!! 異世界人に魔王を倒させると決めたんだっ!!』

 脅しに屈して叫んでくれた。


「殿下……ねぇ」

 多分一番偉そうな青年のことだろう。


 持っていたぬいぐるみを放り投げて、他のぬいぐるみをあえて踏みつけながらその殿下らしきぬいぐるみを掴む。


 悲鳴の一つも上がらないところを見るとおそらく私の許可が無いとしゃべれない仕様なのだろう。


「――ねえ、詳しい話をしっかり説明しなさい」

『はっ、そこの魔術師が何を言ったか知らんが、召還した人間に逆らうつもりかっ!!』

「せ・つ・め・い」

 何か言っているけど、無視してぬいぐるみを強く握る。


『やっ、やめろっ!!』

「なら、さっさとこちらの言っていることに答えなさい」

 脅しが効いたのか説明される。 隣接している魔族と小競り合いをしていて、国土を広げたいから魔王を倒せる人間を召喚したとか。


 他人任せにするなと突っ込みはしたかった。だけど、その後に言われたことの方が不快だった。

『召喚した聖女を制御するために名前を聞いておくはずだったのにっ!!』

 冗談じゃない。人を勝手に召喚して奴隷のように使うつもりだったのは予想していたけど、実際にしようとするなんて許せるわけがない。


「帰る方法は?」

『魔王を倒して魔王城にある魔石を使えば……』

 殿下というぬいぐるみの言葉を信じるべきか疑って他のぬいぐるみを握って、

「それは本当?」

『ほっ、本当ですっ!! 魔法陣を書き直して魔石を使えば……』

「…………」

 では、どちらにしても魔王を倒しに行かないといけないのか。


「なら、人質と言うことで」

 殿下を仕方ないから連れて行き、

「人間に戻すのは私が帰れる時まで無理だから」

 ぬいぐるみ遊びの一環という形でここに居る関係者たちは魔法陣の書き直し以外できないようにさせて魔王の元まで向かった。



 魔王城までの道のりは思ったより順調だった。

 襲ってくる魔族はぬいぐるみにして放置しておけばよかったし、魔族の領域の方が道が整備されていて、便利だったのだ。


「まさか、食料も購入できるなんて……」

 お金がなかった場合は物々交換で構わないと言われて、召喚した責任を取ってもらうつもりで持ってきた物が高価な物だったのでお釣りと言うことで魔族のお金も貰えた。


 襲ってきたのは人間でいう山賊とか盗賊のような輩だったようで、途中から放置しないで拾ってきて

魔族の警察官に渡すと、指名手配されていたからと賞金までもらった。


 何でこんなに豊かで穏やかなのかと話を聞くと魔族は弱肉強食で強者こそえらいという考えがある。で、今の魔王は穏健派で人間を攻めるよりも国を豊かにしようと頑張った結果、この便利な国の出来上がりと。


 その当の本人である魔王はさっさと後継者に跡を譲りたいけど、その後継者が納得しないとか。


「いっそ、自分を倒してくれないかとまで愚痴っているみたいなんだよね。でも、だからといって国を荒らすような魔族には譲れないからそういう輩は叩きのめしているんだって」

 隣接している国との小競り合いも人間が勇者や聖女とかを送り込んだら魔王を倒してくれるだろうと思っている魔族の仕業とか。


 なんというか帰る方法が魔王を倒して魔石を奪うことじゃなければわざわざ戦う必要のない相手だなと思いつつも、魔王の居城に向かう。


 魔王は本当に隠居したいのだろう。魔王を倒しに来た人ウェルカムという感じの看板がしっかり立っていた。

 

「――と言うことで倒しに来ました」

「魔石ならいくらでも持っていけと言いたいけど、一応魔族は弱肉強食だからな。我を倒して奪ってみるといい」

 魔王と呼ばれる存在はドラゴンの顔を持つ男性だった。人間に似た姿も取れるが、それはお忍びスタイルとか。


 うん。どこぞの殿下よりも民想いの王であった。


 人質として連れてきた殿下のぬいぐるみと比べるとその格の違いにいろいろ思うことがあった。


「では、行きます」

 宣言と共にぬい化。


『これで魔王を辞められる!!』

 他のぬいぐるみは私の許可が無いとしゃべれなかったのに流石魔王のぬいぐるみ。勝手にしゃべるし、動いている。


「では、約束通り魔石をもらって行きます」

『構わん。そなたが次の魔王だからな』

「はあぁぁぁぁぁ?」

 聞き捨てならないことを聞いた。


「いや、日本に帰りたいんですけど……」

『帰っても構わない。だが、事実上魔王を倒したからな。()()()にこの国の治世を任せて帰ればいい』

 自分以外というのを強く強調してくる魔王。


「魔王?」

『……これで魔王を辞められるんだ。魔王を倒した者は元の魔王を従えるために傍に置いた方がいい。と言うことでぬいぐるみのままで構わないからそなたの世界に連れて行ってくれ』

「えっ……どうしてそうなるのよ」

 断りたい。


『そうか。――我を倒したから我を自由にできる権利もあるのだがな』

 例えばとぬいぐるみ状態だった魔王が別のぬいぐるみに変化する。


 デフォルメされたドラゴンとか。デフォルメされた人間の姿のぬいぐるみとか……。


「かっ、可愛い……」

 ぬいぐるみからぬいぐるみになれる魔王の能力に驚かされるが、はっきり言おう。好みのぬいぐるみだった。そう、新しい物を買おうと思っていたけど、このぬいぐるみがいいと思わされるほどの。


「――分かったわ。でも、私が大人しくしてほしい時は大人しくしていてね」

『ああ。当然だ。相手を尊重することも必要だしな』

 この気配りを召喚先でされたかった。


 魔王交代はあっという間に終わり、魔王代行として後継者にしていた魔族に命じて、人間の国に戻る。


 魔術師たちは召喚してきたのに自分たちの言いたいことばかり言って作業を進めようとしなかったので、魔王が一喝して脅し、無事魔法陣を書き直させた。


「じゃあ、私が無事元の世界に戻れたら人間に戻れるようにしておいたから」

 元の世界と言いながら別の世界とか過去の世界の別場所にと言うことをされないように釘を刺しておく。


『魔族が人間に危害を加えない限り手出しできないようについでにさせてもらう』

「魔王さん用意周到」

『元魔王だ。それくらいしないと民が困るだろう』

 うん。後継者が跡を継ぎたくなかったのも納得できる。


 そんな感じで無事元の世界に戻って、

「………………本当によかったの?」

『何がだ?』

 魔王は普通に我が家のぬいぐるみの一員になって、時折人間の姿になって私が困っていると手伝いをしてくれる。


「いや、最初から私の攻撃無効になっていたんでしょう」

「ぬいぐるみにはなったぞ。まあ、戻ろうと思えば戻れたが。ヒナコに倒されれば跡を譲れると思ったのも事実だ。あのままだと我が老衰で死ぬまで継ごうとしなかったしな。そうなると国どころか世界が荒れるぞ」

 洗濯物を干しながら言われて一理あると納得してしまう。  


「だから、いい機会だったのだ」

 黒い髪。青い目の美丈夫の言葉にそれでいいのかと思ったけど、魔王が居てくれて助かっていることが多いからいなくなられても困ったりする。


「このままだと嫁に来てと、ヴァルフォードに命令しちゃいそう……」

 思わず魔王の名前でぼやくと、

「嫁ではなくて夫なら了承するぞ」

 そんな返事が返されて思わず赤面してしまう。


 ちなみに同じように元魔王――ヴァルフォードも赤面していた。


事実婚に持ち込む元魔王。ちなみに戸籍も用意しようとすれば作れる。

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― 新着の感想 ―
ドラゴンぬい萌えとはなかなかにマニアック。ヒナコさん、何歳だろう? お小遣い貰ってるってことは未成年? でも、ぬいぐるみ収集には結構なお金必要そうだし行動力的にはOL感も有る。結婚云々を自然に言ってる…
殿下はバラしておいてから人に戻して欲しかった。 すぷらったぁ!
ぬい化能力とかヤバいですね。 新井素子先生あたりがよだれを垂らして喜びそう(笑)。
2025/09/03 19:51 退会済み
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