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シンフェリア ~願いの花の物語~  作者: にわ冬莉


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第26話 花の秘密を探れ

「うひょ~っ、山が見えてきたっ」

 楽しそうに甲板で笑っているのはラッシェル。隣にはウンザリ、といった顔のエリスがいた。ラッシェルは高く聳える山を指し、得意げだ。


「カルタス山脈をこの目で見る日が来るとは思わなかったなぁ。あの山を一緒に見たカップルは一生幸せに添い遂げる、って言い伝えがあるの、エリスちゃん、知ってた?」

「……聞いたこともないわね」

「じゃ、今一緒に見よう、ねっ?」

 ニコニコ顔のラッシェルをじっと見つめ、エリスは海より深い溜息をついた。

「何度も言うようだけど、私はあなたに興味なんかないし、これからも興味は持たない」

「それ、百回くらい聞いたよ」

「じゃあ、」

「エリスちゃん!」

 話の腰を折り、ラッシェル。

「俺はね、一度こうと思ったら絶対に諦めないよ。大体さ、エリスちゃん残していなくなった男なんかに負ける気しないしね」

 自信満々で、言う。


 エリスの過去は、皆が聞いた。狭い船の中で数日過ごせば、多少の身の上話も出るというものだ。ロェイが凪の力を持っていると知られた辺りから、周りもポツリポツリ自分の話をするようになっていた。


「いなくなった男追いかけるより、ここにいる素晴らしい男性と共に一生を送ろう、って気にならない?」

 悪びれもなく、ラッシェルが言う。

「あら、そんな男、どこにいるかしら?」

 エリスがわざとらしく辺りを見渡してみせる。ラッシェルが口を尖らせた。

「ちぇー」

「あら、あそこに一人」

 船室から出てきたロェイを見つけ、足早に駆け寄る。ラッシェルはそんなエリスを見、後ろから声を掛けた。

「そいつは駄目だよ、エリスちゃんっ。ロリコンだからなっ」

「誰の話だ、コラッ!」

 ロェイが言い返すと、ラッシェルも同じように近寄って来る。三人は円陣を組むような形になると、なんとなくお互いの顔を見合った。


「で、どうなんだ?」

 口火を切ったのはラッシェル。

「わからん」

「わからん、って、お前なぁっ」

 肩透かしを食らったラッシェルが声を荒げる。

「仕方ないだろうっ? 俺だって努力はしたんだっ。だけどまずはオルガが目を覚ましてくれないことにはどうにもならないだろ? サントワは絶対に口を割らないさ」

「……そう、よね」

 エリスが小さく溜息をついた。

「頼みの綱は、チビだけか?」

 ラッシェルが腕を組み、言った。

「サントワがオルガのところに行ったから、交代でフラッフィーが戻るかもしれないな」

「けど、彼女が眠り続けてるのだとしたらフラッフィーだって何も聞き出せないわよ?」

「だよなぁ」


 三人はあの花の秘密を探るべく、結束していたのである。オルガが放った言葉。サントワは死ぬつもりなのではないかという疑問。そしてあの花の本当の力。今のところ何もわかっていない。


(そう、サントワが不老不死だということ以外は……)


 ロェイは心の中で呟き、唇を噛み締めた。このことは他言無用、とサントワは言った。だから黙っていようと思ったのではない。軽々しく口にするには、あまりに内容が重過ぎると判断したのだ。どうして俺にだけ? 言われた瞬間、ロェイは疑問を抱いた。しかしその疑問はすぐに解消された。

「凪」だから。

 サントワはわかってくれたのだ。凪であるという事の重さを。だからロェイにだけ自分の正体を明かした。彼の不老不死も、同様に重いから。「お前ならわかるだろう?」そう思ったのかもしれない。そしてロェイは、沈黙することで彼に答える。


「あ、来たぜ」

 ラッシェルが指した先にはキョロキョロと辺りを見回すフラッフィーの姿。ロェイたちを見つけると、走る。

「いたいたっ」

 タタッ、と走り寄り、エリスの腰にしがみつき甘えた仕草をしてみせる。

「おい、チビどうだった?」

 ラッシェルがエリスにしがみつくフラッフィーを剥がしつつ、尋ねた。

「んもぅっ、邪魔しないでよ、ラッシェルったらっ」

「俺のエリスちゃんにベタベタすんなっ」

「あんたのじゃないでしょっ」

 ゲシ、とラッシェルをひと蹴りし、ロェイとエリスに向き直る。小さく溜息を一つ吐き出すと、言った。


「どぉしてかしらね」

「なんかわかったのかっ?」

 ラッシェルが身を乗り出す。フラッフィーがゆっくりと頷いた。そして、言う。

「あの二人、両想いだわっ」

 脱力するラッシェル。そんな答えが聞きたいわけじゃない。

「なにかあったのか?」

 ロェイが尋ねる。フラッフィーは、さっき自分が目にした光景を一つ一つ説明し始めた。


「んと、あたし眠ったオルガの側にしばらくいたの。目を覚ましたら聞こうと思ってたこと山ほどあったんだけど、ちっとも目を覚まさなくて。そしたらサントワが来て、椅子に座って、じっとオルガの顔見てた」

「……そんでっ?」

 先を聞きたいラッシェルが急かす。

「サントワに聞いてみたの。『あの時オルガが言ってたのはどういうことなの?』って。だけど何も答えてくれなくて……。だから『オルガはサントワのこと好きなのよ?』って言ったの。そしたら、寂しそうに笑ってた」


 少し照れたように、少し苦しそうにサントワは笑ったのだ。


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