プロローグ
ジャンルは「ライト文芸」となります。
生きていれば誰しも、囚われてしまう「つらい過去」がある……。
この物語は、そんな過去を抱えながら、それでも諦めることなく前を向いた人々のヒューマンドラマである。
ファンタジーの世界でありながら、剣もドラゴンも、ともすればロマンスもほとんどない中、どこまでも人間臭い話です。
頑張って生きてる人たちに送る、応援歌のような話。
どうぞ最後までお楽しみいただけたら、幸いです……。
水の中に咲く花。
いまだ、真相は闇の中でしかない伝説のそれは、長い年月、多くの語り部たちによって伝えられてきた。
物語の、あるいは吟遊詩人の紡ぐ歌の中に登場するその花の特徴は様々ではあるが、多少の違いこそありはすれ、その独特ともいえる色と、そして花の持つ特殊な能力についてだけは、どの話の中でも変わることがなかった。
すべての条件が満たされなければ咲かないというその花は、美しく光る虹色の花びらを持ち、その花を咲かせることができるのは、ある特殊な力を受け継ぐ人間だけ。
そして重要なのは、どんな願いもかなえてくれるという逸話があること。
逸話を信じ、花を追い求め世界中探しまわった者もいたが、この花のことを知る者は少なく、花にまつわる話は各地で語られながら、姿を変えていく。
どこに咲くのかも知られてはいない、伝説の花。
ただの御伽噺だと一笑するも人生。
漠然とした語り部の話を鵜呑みに、世界中を探し歩くもまた、人生である……。