13歳④
しばらくお茶を飲みながら待っていると、3人の男の子達が近づいてきた。
「あーっと、えー13番のテントはここであってますか?」
ちょっとぶっきらぼうな感じで聞かれ、なんて答えようか迷ってたら
「13番で合ってるよ、あなたたちが残りの3人ね。はいこれ、ここに置いてあった紙だよ」
海里ちゃんが代表して答えてくれた。
「俺ら、右から井上、松本、木村です。これ番号札の紙、です」
「ありがとう、私たちは右から鷹栖、竹虎、小鴉でこれがこちらのヒント」
新しいヒントには
『日光に当てる 1月22日 細かい』
『ご飯かける ヨーグルト 羊』
うーん、ヒントがそろってもよく分からない・・・
12時過ぎてるから調理によっては時間がなくなっちゃうし、6人で頭を悩ませていると
「もしかしてこれってカレーかな?」
「カレー?どうして?」
「単純に1月22日はカレーの日だからかな?」
栞奈ちゃんがつぶやくと、何回でも回答はできることだしってことで0番テントに向かい先生に回答してみる。
「はーい、正解!食材を取って調理すること。14時にまたここに来てね」
オーソドックスなカレーの材料を集めてカレーを作り、完成したので6人で囲み食べた
火起こしや飯盒でご飯を炊くのは初めてでとにかく楽しかった。
ほどなくして14時になるのでまたそれぞれ3人に分かれて、西野先生がいる0番テントに集合した
「お疲れ様でしたー。この後はこの地図に従って18時までに到着する様にコテージを目指してもらい、時間までは自由に散策しながら向かってねー。あ、あとここで持ち込みは解禁になるので好きに使ってね。昼食を食べれなかった班には先生達からおにぎり配るから残っていてね。準備ができた班から気を付けていってらっしゃい。」
西野先生が説明してくれて解散になったので、3人で改めて地図を見るとゆっくり歩いてもだいたい3時間くらい歩けばコテージに着くみたい
売店で飲み物を買い、山道を歩き始めた山道は木の高さと同じにあり木が近い。
花をたくさん付けている木があり顔を近づけると甘い花の匂を楽しんでると
「それは、ハリエンジュかなーハチミツがとれるんだよー」
「栞奈ちゃんすごい物知り!」
「ハイキングだしこの時期に咲く木とか花とか調べてきたんだー」
栞奈ちゃんは照れた様にはにかむ。コテージに不満そうにしてたけど楽しそうで良かった。
他にもいろいろな花や木があって海里ちゃんや栞奈ちゃんが教えてくれたのでたくさん聞いてしまった
「16時半になったしこの辺りで1度休憩しよっか」
「?どうして時間がわかるの?」
私が聞くと海里ちゃんは服をめくり腕時計を見せてくれる
「海里は時計にしたんだー」
「ハイキング中に時間がわかるといいなと思って」
海里ちゃんはちゃんと考えてて偉いな私は何も考えてなかったからペンライトにしちゃったよ
明るいと使えないしコテージで使おうかな
「そろそろ行こうか。ここからは手すりがない道もあるから気を付けていこうね」
海里ちゃんが時計と地図を見ながら注意してくれる。
手すりがない道は野花が多くて先ほどまでの木々とは違ってまた楽しい
周りの花を見ながら歩いていたら、栞奈ちゃんが隅に咲いている花をみようとして
「っ栞奈ちゃん!危ないっ」
「え?きゃっ!」
「え!?」
木の葉や木くずで埋もれていた場所が突然崩れ落ち栞奈ちゃんに手を伸ばした私と栞奈ちゃんが転がるように落ちる
「いたっかったー明菜大丈夫?!」栞奈ちゃんが私から離れ聞いてくる
「う、うん…。大丈夫。だいぶ落ちちゃったね」
栞奈ちゃんにたいした怪我がなくて安心した。周りを見渡してみたけど山道も人影もなさそう。
栞奈ちゃんが立ち上がり手を差し出して私を立たせようとしたけど、足が痛くて立ち上がれない。私の顔色をみて栞奈ちゃんは泣きそうな顔をして
「明菜ごめんね、私をかばって怪我してるでしょ 私がちゃんと周り見てたら落ちなかったのに」
「大丈夫だよ、栞奈ちゃんが無事で良かった」
落ち着かせる様に栞奈ちゃんに言うと、上から海里ちゃんが滑るように降りてきた
「2人とも大丈夫!?怪我してない?!」
「落ちた時に私をかばって明菜が怪我してる」
泣きそうな栞奈ちゃんを見て私も悲しくなる。助けようとして私が怪我してたら意味がないのに
「2人ともそんな顔しないの。」
海里ちゃんに言われ気持ちを切り替え、立ち上がろうとしたけど痛くてうまく立てない
「明菜立てる?私に掴まって」
「ありがとう、ごめんね。助けたつもりが助けてもらって」
「そんな事ない!助けてくれてありがとう」
海里ちゃんは山の地図を取り出し、上を見ながら何かを探している
「ここは岩崩が起きたら危ないから移動したいけど動ける?」
「うん。支えてもらいながらになるけど、大丈夫」
「移動するにしてもどこに行くの?」
「上は登れなさそうだから、私の妖術で見てみたら近くに山小屋があったからそこを目指しましょう。ただ太陽が見えなくて方角がわからないの」
海里ちゃんはものすごく申し訳なさそうに話す。ちゃんと使いこなせれば方角や山全体を見れるそうなのだけど、まだ使いこなせていないそうだ。
方向に迷っていると子ぎつねが現れた。まるでついて来いと言うように何度も振り向き、少しずつ進む
「このキツネについていけばいいのかな?」
「悪い感じはしないからついていこうか?海里どうする?」
海里ちゃんは迷った様に考え、ついていく事にした。
私が怪我をしているせいでゆっくり進む内に辺りがうす暗くなって来てしまった。
「これ以上進むのは危険ね。周りに危なそうなものもなさそうだしここで休みましょう」
先導していた海里ちゃんに言われ座り込む。痛みで頭痛までしてきた。
栞奈ちゃんがカバンから何か小さい袋を取り出して広げだした紐を木にくくると小さいテントができあがった
「す、すごい。ものすごく小さかったのに」
「栞奈、これは何?」
「ツェルトっていうテントみたいな物なの。ハイキングってピクニック想像してたから日よけにいいかなって持ってきたの」
「私のこれも付けて欲しい」
私は急いでペンライトを取り出しツェルトに付けてもらって3人で横並びに座る。
足の痛みが落ち着いた頃にキツネに話しかけてみた
「ここまでありがとう。君もこっちにおいで」
キツネは少し離れた位置でお座りをしてこちらをみているだけだった。
本格的に暗くなりペンライトの明るさを頼りにしているとキツネがまるで微笑む様に笑い森の奥に駆け出して急に中野先生が現れた
「遅れてすまんお前たち大丈夫か?!」
中野先生が来てくれて安心したらまた痛みが強くなってきた
「すみません、足を怪我してしまいました」
「すぐにコテージに向かうぞ!」
中野先生につかまりコテージまで行く事ができた。
先生は18時を過ぎてもコテージに着かない私たちを心配していたが、すぐに助けに来れなくて、すまなそうな顔をしていた。
朝の説明前に配られたストラップは中野先生の血で造られた物で制約が色々あるけど持っている者の場所まで移動できる代物らしい。
コテージにつくとクラスメイトが安心したように集まってきて無事を祝ってくれ、ちっらっと見えた左狐様が安堵しているように見えた。
私たちが居た森は普段立ち入り禁止の場所だったらしく危ない植物や動物が生息していたと後から聞き驚いた。あの時はキツネが歩いた道を通り、キツネ以外には何も会わなく危ないと思わなかった。