12歳
残暑が残る中あと数日で初めての学院生活が始まる。
今日は響がスターン学園に留学するのでゲートを開門する為、本家へと向かう。去年両親が海外に拠点を移し私も学院近くに家を建て居を移したので響と会うのも久しぶりだった。
「久しぶりね、元気でやってる?それとゲートの設問とお見送りありがとう。」
久しぶりに会う響はすっきりした表情で晴れやかに声をかけてくる
「うん、元気。留学行ってらっしゃい。響も元気でね」
無難な言葉しかでて来なかった。そんな私を見て響はくすっと笑いゲートをくぐる。
響がゲートを通りしばらくしてから閉門する。事前に登録したリングを妖力で触ると小さくなり鳥居型のストラップになった4家でそれぞれ形が異なるらしいがゲートを持てる人が限られているため見たことがない。見てみたいなと考えていたら
「玲様、そろそろ戻りましょう」
そう話しかけられ意識を海に向ける。海の顔をみてふと
「あっ。そういえばアクセサリー」
急に思い出したので本家に届いているピアスを引き取る事にした。
「海はもうピアス届いている?」
「ええ。もう手元に届いていますよ。」
海は胸ポケットからピアスを出し見せてくれた キャプティブビーズリング型となっており、ボール部分のストーンの中に彼岸花が入っているものだった。
「ありがとう。やっぱり似てるわね」
見せてもらったピアスを片手に髪をかき分けるピアスを海に付けてあげ、私のピアスと見比べた家紋の花以外ほとんどど同じで、違いはストーンの先に飾り細工がついている事くらいかな。耳につけるとシャランと音がし意外と耳心地が良い
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本家から戻り数日が経った私と海は新しい制服に身を包み天花学院の門をくぐった
天花学院のSeedは白を基調としたパンツスタイルとスカートスタイル
BUDは黒を基調としたパンツスタイルとスカートスタイルから選べ、Seedはリボン、BUDはネクタイ、上着は下に合わせた色合いのブレザーで制服人気が高い。
制服の他にN校舎は家紋が入ったアクセサリーを付ける事になっている。
今年の入学生はピアス、1つ上はネックレス、2つ上はブレスレットと年別にアクセサリーが違う
学院で結番を見つけた場合、成人するまで番えないので妖力を込めたアクセサリーを相手に渡し婚姻を対外内的に示す習わしとなっており、妖力を込めた人ならず者にしか取り外しが出来ないようになっている。
N校舎に歩いていき1クラスしかないのでそのまま教室に入ると何人かの生徒がこちらを向き一瞬、緊張感がただよった。妖力が漏れているのかと海を見るとフルフル首を振るので安心していると周りからはそれ以上の反応がなかったので席を探す為周りを見回し、席順に指示がなかったので海を伴い窓際後ろの席に座りパンフレットを取り出し確認する。
今日の流れは、1度教室に入り講堂で入学式を行う、それから教室に戻りオリエンテーション、講義の選択をする為テストするとパンフレットに書いてあった。
パンフレットを読み終わり顔をあげると先ほどより人が集まっている。ぱっと見10人くらいだろうか?
しばらくすると先生らしき男性が教室に入ってき教室全体に声をかける
「新入生の諸君、入学おめでとう。今日から3年間担任になる中野・ヴィオ・孝だ。
これから入学式を執り行うので俺について来るように」
中野先生はそのままクラスを引率し講堂に向かう。
半円状の講堂に入ると人の多さに驚いたseedだけでも約2千人ほどがこの講堂に集まる
中央に通路がありステージ前まで続き1番見晴らしにいい席がNクラス用の座席、その席を囲う様に
H校舎の生徒が学年ごとに座る。
seedの全校生徒が講堂に入り終わりを見計らい天花学院の理事長が演台に立つ
「ただ今、入学を許可しましたseed309名の新入生の諸君、入学おめでとう。
入学を心から歓迎いたします。
本校に入学するのも「縁」あってのことです。この縁を大切にしてください」
理事長の長い話も終わり入学式は幕を閉じた。
この後どうするのかと思っていると中野先生が近寄りN校舎1学年はこの場で待機し2.3学年は教室に戻され、講堂に人気がなくなると校内地図が載っている紙を配られた
これから校内を案内しつつ教室に戻るようだ
ミーティングルームや運動上に芸術室や食堂、図書室など授業で使う場所や空き時間に使う場所まで丁寧に案内しつつ最後に渡り廊下に案内された
「ここはH校舎と唯一繋がっている渡り廊下なのだが、通常は使用禁止となっており渡ろうとすると1本道なのに迷う事になる。学校行事でのみ使用可能になっているのでくれぐれも迷子に挑戦しないように!」
毎年、N校舎やH校舎から何人かは挑戦し迷子になるそうで中野先生は呆れ半分笑い交じりで教えてくれた談笑を交えつつ教室に戻る。
「さて、残り時間はテストを受けてもらう。テストの結果によりこれから1年間の講義の選択がかわるので真面目に受けるように。テストが終わり次第今日は帰宅して構わない。家の者を待つ場合は教室外で待つように。明日また今日と同じ時間にここに集まる事、ではテストはじめ!」
天花学院は単位制で講義を取らなくともテストの結果で単位が取れ前期、後期で分けられている
回答が終わり教室を出る。海と一緒に帰る為どこで待とうか考える。
テストを行うことは知っていたが外で待つとは思わなかった。
仕方がないので食堂に隣接しているカフェに入り時間をつぶす。
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初めての学院生活にわくわくして寝れなかった。
早朝にも関わらず幼馴染の家に押し掛ける。
「大智!大智!起きて!俺もう楽しみで待てないよ!」
大智の家に何度も突撃しているので家の人たちも慣れた様に部屋に案内してくれた
ベッドに飛び乗り布団をめくると頭を掴まれた「い゛だい!い゛たい!ごめんなさい!」
半ば叫ぶように謝る。「お前さ、落ち着けよ。早く行ってもまず入れないんだよ。開いてない」
そういいながら着替え、全体的に黒の髪の毛を立てる様にセットし大智は無言で部屋を出て俺をみて溜息を吐かれ洗面所に連れていかれた。
俺の髪は根本から暗いブラウンで毛先に行くほど明るい茶髪をセットしてくれる
ニマニマ見ていると前髪で隠れていたデコにチョップを食らった。
いつも朝から押し掛ける時は朝ごはんを食べてこないのをお見通しでしっかり準備してくれている
今日の朝食をいただきながら大智を見て
「大智がピアスつけてると大人になったなって感じるな」思わず言ってしまう
産まれた時からの幼馴染とは少し雰囲気が変わり、いつの間にか髪の毛のセットを覚えていたり、まだ見慣れないピアスを付けていたり。あんなに楽しみだったのに急に不安になってきた。
俯いてパンをかじってると背中をたたかれ「ばーか」そういい幼馴染は食器を片付ける。
大智の家の車で天花学院に一緒に送ってもらい、並木道を歩いていく
「俺、1番のりやっほーい!」駆け足で大智を追い抜き先に教室に入る
1番乗りかと教室に入り込むと女の子が先に来ていた。
女の子はクスクス笑い「おはよう。2人とも早いのね」と半笑いで自己紹介をする
「うちは、猫西 栞よ」
薄紫色のショートカットに同じ色合いのふさふさの猫耳に細長い丸棒上のピアスが目立つ。
俺はちょっと恥ずかしくなり言葉につっかえると大智が代わりに自己紹介をしてくれた
「おはよう、朝から騒がしくてごめん。俺は高野 大智で
こいつが鼬川 渉。猫西も楽しみで早く来たのか?」
大智は苦笑いしながら俺をみつつ、猫西さんに聞く。
猫西さんは、あははーと照れ笑いし
「うちは1時間、時間を間違えたの。教室について誰もいなくて焦ったわw」
あーわかる。目覚まし鳴らなくて昼と夜間違えて心臓がバクバクするんだ。
「時間、間違えるのはめっちゃ焦るよなー」
3人で話していると女の子2人が入ってきた。
金髪に近い髪色で一部に黒が混じっているストレートロングの女の子は後ろにいる女の子をエスコートする。
ごく自然にエスコートされ入ってきた真っ白の髪の毛で先端だけ黒いセミロングの女の子をみて息が詰まった。むせない様に息を殺して目線で2人に助けを求める。2人とも完全に見とれている。
金髪に近い子が一度こちらを見たがすぐに向き直り窓際に座った
「ちょっ、と、2人とも!」小声で話しかけると
はっとしたように俺を見る。
俺も驚いた恐らく白い髪の方は左狐家のご令嬢のはず
同年代の前にはほとんど現れないのは有名だったが あんなに綺麗な人だとは思わなかった。
「いやーうちも思わず見惚れちゃった」猫西さんは顔を赤くしながら言う。
「目も覚めるような美人は初めて見た」大智が真顔で言う。
こそこそ感想を言い合っていたらいつの間にか人が増え先生がきた。
これから入学式に向かう為席を立つ。他のクラスメイトも左狐様に見惚れているようだった。