お手持ちの商品にはご注意を
レオの話を聞き確信した。
車に跳ねられたのはお前のせいか!!
1歳年上のレオが42歳で死んだってことは18歳の悪女のディスフィーネ+23歳の日本人=41歳。
計算できたね♪…じゃねえ!
某子供用服薬専用ゼリーのCMの曲調に合わせてしまった。
「じゃあ私を殺そうとした黒幕は結局分からないのね?」
「先程馬車を襲っていた者達は捕らえて先に皇城へと送らせた。着いたらすぐにでも尋問が始まるだろう」
そういえば今回の襲撃に関していくつか違和感がある。
伝令の件もそうだが賊が着ていた制服についてだ。
今回はブラッドがレオと示し合わせてくれていたから皇太子直属騎士の制服を着ている相手でも戦ってくれた。
前回でも私の護衛の騎士が戦ってくれたのは同じだが…もし賊が皇太子直属騎士の制服を着ていたらきっと護衛についていた騎士達は攻撃していなかったと思う。
私は怯えて馬車の中にいたし、馬車から引きずり出された後も泣きわめいていたから制服を着ていたのか見ていないけど。
「賊が持っていた剣も皇太子直属騎士が持つ剣だったの?」
「いや。前回の事があったから今回は剣を徹底管理していたんだ。だから紋様がついていないただの剣だ」
だとすると剣が入手出来なかったから大勢の目撃情報を得るために敢えて制服を用意した…。
つまりレオを犯人に仕立て上げたい誰かの仕業ということになる。
眉を寄せて考え込んでいると眉間を指で突かれた。
「心配しなくてもフィーの事は私が守るよ。それよりも…」
ギシリとベッドを軋ませてレオが近付いてきた。
「フィーとの初めての口付けに毒を盛られたと言われて傷ついたな」
なんだろうこの危険な香りは…。
人生最大のピンチを感じる!
「味があるとは思わなくて…」
レオに合わせて私は体を後ろに下げた。
「じゃあ、今度はちゃんと味わってみる?」
レオの手が私の頬に伸びてきた。
ひぃーーーーーーー!!
バクバクと破裂しそうなくらい心臓が大きく脈を打ち、顔が紅潮した。
「責任はちゃんと取るから心配しないで」
何の責任ですかーーーーー!?
今しているのはキスの話ですよね!?
「分かりました!責任を取ってキスを受け入れます!!」
ヤラれる前にヤル!
レオの前にドシリと正座で座りギラギラとした目で臨戦態勢を整えた。
さあいつでも唇にかかって来い!!
レオは目を丸くしたあと吹き出した。
何が可笑しい!?
「フィー、そんなに気合を入れて何か他の事でも想像したの?」
私は何も想像していません!!
真っ赤になって俯く私の頭を引き寄せると額にレオの唇が触れた。
「今はこれで我慢しておくよ」
私は生々しく残るレオの唇の感触に額を押さえると声にならない声を発した。
もう一度卒倒してもいいですかーーーーー!!
皇都に向けて出発して早々馬車を止められた。
「殿下。使いの者が来ております」
私と一緒に馬車に乗っていたレオが外に出て使いの者と話をしているのをこっそりと盗み聞いた。
「逃げられたのか!?」
話しの流れから恐らく私を襲った賊の話だろう。
「一緒にいた騎士達は何をしていたんだ!?」
「それが眠らされたようです」
「護送中に?」
「道中で霧が濃くなって警戒した矢先に眠ってしまったようです」
眠り薬の類だろうか?
レオが考えながら馬車に視線を移した。
咄嗟に隠れたが盗み聞きしたのバレたかな?
「…フィーを公爵邸に送り届ける方が優先だ。眠らされた騎士達に追尾するように伝えろ」
馬車に戻ってきたレオが私を見据えた。
「フィー。聞いていたと思うけど…」
バレてる!
「余計な事は考えずに大人しくしているんだよ」
何そのトラブルメーカー扱いは。
心配しなくても犯人捜しはしませんよ…調べものの最中に犯人を見つけちゃうのは…不可抗力でいいよね?
皇都のオリオル公爵邸に到着すると父がすっ飛んできた。
「フィー!無事で良かった!!」
父も祖父も抱きしめるのはいいが力加減を覚えて欲しい。
「急いでいたので手紙だけの報告となり申し訳ありませんでした」
レオが父に頭を下げると父はようやく私から離れた。
「いえ。娘を助けて頂いてありがとうございました。殿下。娘をどうかよろしくお願い致します」
嫌な予感にレオの顔を窺うと…満面の笑みを浮かべてる!!
これ絶対狙ってたやつでしょ!!
「任せて下さい。ディスフィーネ嬢は私が必ずお守りしますから」
しかもちゃっかり私の腰に手を回してきてるし!
そこの親父!感慨深そうに目頭押さえるんじゃない!
この人確信犯ですからーーーーー!!
自室に戻るとソファーにもたれた。
正直自分を殺そうとしている奴よりもレオの方が厄介な気がする。
「お嬢様。行儀が悪いですよ」
どんどんずり落ちていく私にブラッドが苦言を呈した。
それにしても犯人は一体誰なんだ?
まあ私を殺して得をする奴だろうけど…。
でもレオの話から考えても私を殺して得をしたのはマリレーヌだ。
だけどなんか引っかかるんだよな。
推理物の観点からいくと一番怪しい奴は犯人ではない説。
そして一番怪しくない奴が犯人説。
…怪しくない奴がいなさ過ぎて説立証ならずなんだけど。
レオには大人しくしてろって言われたし…。
「ブラッド…」
「何ですか?」
「皇室の騎士の制服って良い物使っているよね」
「…帝国の顔ですからね…」
「私も帝国の顔になるかもしれないし、皇室御用達の服屋で服でも作ろうかしら」
「お嬢様。皇太子殿下に余計な事を考えるなと言われませんでしたか?」
「私はただ新しい服でも作ろうかなって思っているだけで余計な事など何も考えていませんわよ?」
すまし顔で答えるとブラッドが訝しそうに私を見た。
ブラッドからの圧を回避しようと視線を逸らすもダラダラと嫌な汗が流れ出る。
ブラッドさん。視線が熱いっす。
先に根負けしたのはブラッドだった。
何を言っても無駄だと判断したのか溜息を吐いた。
「わかりました。ただし服を買いに行くだけですからね」
服屋さんとのお喋りは許されるよね?
げっ!
服屋に到着すると皇太子直属の騎士達が来ていた。
咄嗟に広げた両手の平に隠れてみたが騎士達は直ぐに私と気付き挨拶をしてきた。
「服を新調しに来ただけですわ!」
誰も聞いてねえよ…一同の心の声が突き刺さる。
私はそそくさと陳列された服を探す…フリをした。
騎士達は私が服を探しているのを確認すると店主に向き直った。
「…いつ…だ」
よく聞き取れないな…。
私は商品を触りながら聞き耳を立てた。
「…前でしょうか。…が…ていました」
もう少し!
「お嬢様。それは盗み聞いているのではなく、もはや加わっている状態です」
気付くと私の体は騎士と騎士の間に挟まれていた。
騎士達も苦笑いで私を見下ろしている。
コホンと咳払いをして手に持っていた商品をレジカウンターに置いた。
「これを頂くわ」
はらりと開かれた商品に一同は驚愕した。
カウンターに置かれたそれは…。
男性用の下着だったのだ。
読んで頂きありがとうございます。