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オオカミ少年かく語りき⑮

人間にかかる重力が反転した世界を、僕ことライルは眺めている。


冥王ロギンの【重力操作】によって、人間はゴミのように空へと吸い込まれ消えていく。


『人間のいない世界。これこそが、君が望んでいたことだ。今、どんな気分? 清々しい気分?』


『神様のスキル』の一つ『巨人殺し』が僕の中からそう訊ねてきた。


確かに、人間がいない世界を望んでいた。とはいえ、こんなにも簡単に理想を実現ができたことに対して、あっけにとられてしまう。


「いや、まだ終わっていないよ」


僕は空に視線を向けて言う。


おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。


空から灰色の風の龍が顎を開き、僕達目掛けて迫ってきていた。


『オグナ・アウラ・ベルグンテルか。そう簡単に彼は退場させられないようだ。でも、彼も馬鹿だなぁ。そもそも『冥王』ロギンに敵うはずないのにねぇ。彼は天使からレベルを借りているとはいえ、そのレベルは130程度だろう?』


呆れたように『巨人殺し』の声が聞こえた。


その言葉は正しい。


僕は現在『嘘吐き』の力で『冥王』ロギンの名を騙るだけでなく、名を奪い取ることに成功した。


僕はロギンの力を操ることができ、そのステータスも確認できる。


『冥王』ロギンのステータスを見て僕は驚愕を隠せない。


ロギン

レベル999

固有スキル

『冥王』

『冥王』効果【重力操作】、【永遠回帰】


ロギンのレベルは聞いたことも見たことも無いレベル999。スキルだけでなく、基本ステータスも人知を超えている。


ロギンの身体が腐っているとはいえ、そのスキルを使うまでも無く、ただ殴り、蹴るだけでオグナを倒すことが可能だ。


『さて、××××。そろそろこの楽しいイベントを終わらせよう』


『巨人殺し』が僕の本当の名を呼び、催促する。


僕はその言葉に頷く。


頷くしかない。僕の生きる道は、オグナを殺した先にしか無いのだ。


「スキル『巨人殺し』【グングニル】作成」


神槍【グングニル】を僕は生み出す。


世界樹の一部から造り出した神の槍は塔のように巨大で、人が手にするには余る。


だが、巨人であれば。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


巨人の王ロギンが雄叫びを上げながら、【グングニル】を手にする。


神話の時代、神すら畏れたという巨人のロギン。


巨人の王を倒した【グングニル】。


東洋風に、竜宮王国流に表現するならば、鬼に金棒。


ロギンが【グングニル】を振りかぶる。


ついに、灰色の龍【神風】と『冥王』ロギンが突き出した【グングニル】が激突した。


おおおおおおおおおおお、おっ


灰色の龍【神風】が【グングニル】によって貫かれた。


龍が弾け飛び、天と地を揺るがすほどの爆音が生まれた。


龍の中に圧縮されていた灰色の風が爆発し、ロギンに降りかかる。


だが、レベル999のロギンの身体に致命傷を与えることはできなかった。


『あはははははははははは。なぁ、どうだい? 僕の力はよぉ。世界(ティストラ)様ぁ』


嘲笑うような『巨人殺し』が僕の中で叫ぶ。


呼応するように、僕も叫ぶ。


「あははははははははは。ねぇ、殿下ぁ。僕はねぇ、人間が嫌いです。殿下が嫌いです。でもねぇ、僕は弱かったから、ずっと我慢していた。あはははははは。世界を壊せて、人間を排除できて、僕は今、幸せです」

「この嘘吐きが!」


灰色の風の中から、怒気の籠った空気を感じた。


風の中から、オグナ・アウラ・ベルグンテルが忽然と現れた。


オグナは風に乗り、短剣を水平に構えていた。


『あはははははは。馬鹿じぇねぇの。スキル『空気になる』如きが、この僕『巨人殺し』に勝てるわけねぇだろ。【グングニル】』


僕の中から『巨人殺し』が御業を唱えると、小さな、人間が操れる程度の【グングニル】が虚空に作られていた。


【グングニル】がオグナに向かて射出される。


『神槍【グングニル】は必殺必中。そんな普通の短剣で防御できるわけねぇだろ。ばぁか』


『巨人殺し』の言葉通り、神造兵器【グングニル】はオグナを惨たらしく貫くはずだった。


ところが、槍はオグナを素通りした。


オグナはスキル『空気になる』を使用して、自身を空気にしているのだ。


『どうなっている? 【グングニル】は例え『空気になる』の力を使っていようと、問答無用で貫く必殺必中の槍なのに』


狼狽えた声が僕の中で響く。


僕もあっけに取られていると、僕の肩に違和感があることに気づいた。


僕の肩の上に、白い折り鶴が乗っかっていた。


『おや? 君には私が見えるのかい? 私の名はスキル『『日本武尊』(ヤマトタケル)』。オグナの魂の中に眠っていた準神級の、ただのスキルさ。今回、私のスキルの一部で、君の槍を無効化させてもらったよ。敵の武器を無効化するのは私の特技の一つでねぇ。出雲での私の活躍を知っているかい? いや、ここは異世界だから知らないのか。残念』


折鶴から声が聞こえてきた。


幻覚なのかと首を傾げていると、『巨人殺し』の怒鳴り声が響いた。


『何を呆けている! もっと【グングニル】を作ってオグナ・アウラ・ベルグンテルにぶつけるぞ!』


『巨人殺し』には折鶴の声は聞こえていないようだった。


動揺を隠せない『巨人殺し』が再度【グングニル】を作成し始めた。


僕の周囲にびっしりと、無数の【グングニル】が虚空に浮かんでいた。その穂先は全てオグナに向けられている。


どこからともなく白い折り鶴が風に流され、【グングニル】の穂先へと舞い降りた。


『「やつめさす 『巨人殺し』が 浮かぶ槍 つづらさは巻き さ身無しにあはれ」なんちゃって』


白い折り鶴の声が響い時には、無数の【グングニル】が放たれた。


槍の雨は先ほどと同様にオグナに当たるが、彼を害することなく素通りする。


その光景を見て、僕は思わず苦笑する。


「やっぱり、僕の殿下は凄いなぁ」

『おい? 何をしている? 早くアイツを何とかしろ!』

「焦るなよ。『巨人殺し』。どれだけ殿下が凄くても、結局のところレベル999のロギンに敵わないし、『巨人殺し』を消滅させることはできない」

『確かに、そうだ』

「それより、僕に考えがあるから、黙って聞いていてくれ」


僕は『巨人殺し』に言い聞かせてから、大きく息を吸い、『嘘吐き』を使用した。


「『世界(ティストラ)よ。僕の言葉を聞け。僕こそが、『冥王』ロギンであり、『巨人殺し』の宿主である。その力は僕の命ある限り続き、僕が死んだ時、『冥王』ロギンと『巨人殺し』は消滅する!』」


僕の『嘘』が世界(ティストラ)に響く。


そして、僕は確かにその声を聞いた。












その言葉を世界(ティストラ)は信じましょう










それは世界(ティストラ)の言葉。


神が創った概念であり、意思を持った概念。


世界(ティストラ)は僕の『嘘』を信じ、僕の『嘘』は真実へと成り代わる。


『××××! 騙したなぁ!』


僕の意図に気づき、『巨人殺し』が怒鳴る。


だが、もう手遅れだ。


気付けば、殿下の顔が目と鼻の先にある。


殿下が短剣を振るう。


それを僕は黙って見ていた。


これで良い。これが僕にとって、最善で最幸の選択。


ここで僕が死ぬことで、『冥王』ロギンも、『巨人殺し』も消滅する。そうなるように、世界(ティストラ)に向けて『嘘』を吐いたから。


あぁ、幸せだなぁ。


無価値な僕だけど、最後の最後に大好きな人のために死ぬことができる。


何て幸せな結末。


オグナの剣が僕の胸に当たる。


「スキル『極大剣術』【神斬り】」


オグナがスキルと、その技の名を口にした。


「殿下なんて大っ嫌いです」


最後に僕は嘘を吐く。


こうして僕は殿下に殺された。


それは同時に、『冥王』ロギンと、邪悪なスキルである『巨人殺し』が消滅するということである。


こうして、世界(ティストラ)に平和が訪れる。


めでたし、めでたし。







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