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妹に天罰が当たって生贄に選ばれました

クローデイアが夜遅くまで図書館で調べ物をして帰ると、何故か邸内はお葬式のように静かだった。


居間ではアデラが涙に暮れていた。クローディアはその様子を見て驚いた。アデラが演技で泣くのはよくやることだが、どうやら本当に泣いているようだった。


「マーマ王国が最後通牒を突きつけてきた」

義父のブルースの言葉に来るものが来たかとクローディアは思った。


「どうやら大軍で攻め込んでくるようなのだ。我が王国はタダレル渓谷で迎え撃つことになり、アデラが神託で生贄に指名されたのだ」

呆然とした様子で、義父のブルースが言った。


「生贄に?」

確か18年前に神託で生贄が決まり、蛮族のノルディンの大軍を消滅させたと聞いたことがあった。


「そうだわ。お姉さま。魔力が王国一多いのだから私と代わってよ」

アデラはとんでもないことを言った。

「そうだわ。ここは穀潰しのあなたがアデラに成り代わって生贄になるべきだわ」

義母までとんでもないことを言い出した。


「コニー、なんて事を言うんだ。お前はシャラとの誓いを裏切るのか」

ブルースが驚いて言った。


「何言っているのよ。あなた。あなたアデラのことが可愛くないの」

「いや、それは可愛いが、しかし、クローディアのことは命に代えても守るとお前はシャラと誓ったよね」

「あなた、実の娘とこの穀潰しとどちらが大切なの」

きっとしてコニーが言った。その目はまた赤く光っていた。

「い、いや、コニー、少なくともクローディアは皇太子殿下の婚約者だ。我々がかってなことは出来ないだろう」

その赤い瞳に抵抗するようにブルースが言った。


「何言っているのよ。元々クローディアの命を助けるために、シャラは生贄になったのよ。高価な薬を買う金が無いから生贄になる代わりにクローディアの命を救ってほしいと言って泣きついてきたのはシャラじゃない」


その言葉にクローディアは固まった。

クローディアは母が18年前の生贄で死んだことを初めて知った。そして、自分の命を助けるために生贄になったことを。自分のせいで母が死んだことを。


「何を言っている。コニー」

「あなたは黙って」

コニーの目が赤く怪しく光った。

「クローディア。あなたの命を救うために我が伯爵家はとても多くの金を使ったわ。

今その妹が生贄にされようとしているのよ。その恩に報いるために生贄を代わると王家に言いなさい」

「お義母様待って。私の母が私の命を助けるために自ら生贄になったって本当なんですか」

クローディアは信じられなかった。

「そうよ。今まで知らなかったの?母の心子知らずとはよく言ったものね」

「そ、そんな、そんな事誰も教えてくれなかったじゃない」

クローディアは叫ぶと部屋を出て行った。

「ちょっとお待ちなさい」

コニーが呼び止めようとしたが、もうクローディアはいなかった。


「お母様どうなるの」

アデラは母にすがりついた。

「可愛そうなアデラ。まだ少し時間はあるはずよ。私があなたとクローディアを交代させるように王妃様と掛け合ってあげます」

「本当に、本当になの」

「当然よ。こういう事がまたあるかも知れないと穀潰しのクローディアをここまでお金をかけて育ててきたのよ。お母様に任せておきなさい」

コニーは目を赤く怪しげに光らせながら言った。

ブルースも魅了されたように何も言えなかった。

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