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親友の身代わりになって生贄になってほしいと頼まれました

皆さん、この話見つけて頂いてありがとうございます。毎日更新頑張ってやっていくのでブックマークしていただけると幸いです。

「なっなんですって。生贄になってほしいですって」

シャラは思わず大声を出していた。


その大声にシャラの胸の中で寝ていたクローディアが目覚めて大きな声で泣き出した。

「おお、よしよし、ごめんね、大きな声を出して」

シャラは胸の中の娘をあやした。




昨年王国軍に所属していたシャラの夫のビリーは偵察に出たまま行方不明になっていた。幼馴染で剣術に優れたビリーがそう簡単にやられるわけはないと思っていたが、偵察に向かったノルディン族は蛮勇果敢で、敵に回すと厄介な相手だった。今まで連絡がないということはもう難しいとシャラは思っていた。


夫が不明になってから生まれたクローディアは可愛かった。可愛い手で必死にシャラの手を掴むその手は天使のようだった。シャラのお乳に必死に吸い付くその姿を見てシャラはこの子を絶対に守ってやらねばと思っていた。

そこへ、魔導学園の時からの友人のコニー・ブリエント伯爵夫人から呼び出しがあったのだった。


コニーは結婚したてで夫のブルースも温和な魔導師だった。二人共クラスメートだった。コニーは伯爵家の出だったが、平民出身のシャラを差別などしなかった。コニーは魔導師としてはもう一つで、座学も壊滅的だった。面倒見の良いシャラは良くコニーに代わって課題をやってやっていた。どちらかと言うと圧倒的にシャラにコニーが寄生していた。コニーが魔導学園を卒業できたのはシャラのおかげだった。シャラは魔導師としての力も強く、魔導学園を優秀な成績で卒業、卒業後は陰険宮廷魔導師長として有名なジャルカの元で日々しごかれていた。


そして、今、ダレル王国はノルデインの蛮族の脅威にさらされていた。その中緊急の相談があるとコニーから連絡があってその件でなにかあると思ったのだが、それが生贄になれとはどういうことなのだ。


「その子、魔力病でしょう。今のままならば長生きはできないわ」

コニーが言った。シャラはむっとした。そんな事は言われなくても判っている。

夫が不明な中、二人の間に生まれたクローディアは病気持ちだった。強力な魔力を持つ子がたまにかかる病気で魔力が制御できなくて体を蝕む病気だった。

その薬代はばかにならなかった。シャラは王宮魔術師だったが、その給与で買える薬は高々知れていた。更によく効く薬があるのだが、シャラには到底手が出なかった。


「今、ノルディン族が攻勢に出ているの。このままではダレルの国も蹂躙されるのは時間の問題だわ。聖女ミネルヴァ様の神託があったの。神の生贄を発動すればノルディンを一掃できるって」

「その生贄に何で私がならなければ行けないの?」

「あなたが生贄になってくれれば、クローディアに特効薬を飲ませるわ」

とても素晴らしいことを言っているとコニーは思っていた。何しろ薬は一般の魔導師風情では到底手の出ない値段なのだ。この申し出に一も二もなく単純なシャラが食いつくと思っていたのだ。


しかし、シャラはその言葉にはびくともしなかった。

シャラは既に師匠のジャルカが薬の提供の申し出を受けていたのだ。裏がありそうでシャラは断っていたのだ。この生命をかけるくらいなら、その申し出にのったほうがましだった。


「あなたの給与の百年分以上の価格なのよ」

「別に、薬の提供を言ってくれるのはあなただけではないわ」

シャラは白い目でコニーを見て立ち上がった。


「待って、シャラ」

思わずコニーはシャラの手にすがりついた。


「お願い。シャラ!シャラが引き受けてくれれば、あなたの子供はこの伯爵家の長女として実の子供以上にきちんと育てるわ。この命にかけて誓うわ。何にしろ私達には子供はいないのだから」

一瞬夫のブルースがぎょっとした顔をしたが、コニーの必死さを見て頷いた。


シャラは立ち止まった。確かに伯爵家の娘として育ててくれるならば娘としても幸せになれるかも知れない。しかし、この二人は新婚でまだ子供のいないだけで、子供が出来ないとは言い切れなかった。子供が出来た後まで、愛しいクローディアの面倒をきちんと見てくれるという保証はなかった。


更に歩みを始めようとするシャラの脚にコニーはすがりついた。


「シャラ、あなたが引き受けてくれなかったら、私が、私が行かなければ行けないのよ」

そう言うとついに大声でコニーは泣き出した。


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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
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[一言] 父親が不明(誰の子かわからない)なのはまずいんじゃないでしょうか。 行方不明では?
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