製粉所で働くとても心の優しいおじいさん。
僕にはA君という友達がいるんだ。A君は何でも知ってるし、運動もできるし、友達もたくさんいる。
僕もあんな風になれたらなあと思うけど、なかなか難しいよね。
いつも僕は帰りに、A君の家によって一緒にA君のおじいさんと遊んでいるんだ。でも A君の話だと、おじいさんが優しいのはA君と僕だけらしいんだ。
僕は誰に優しくないのか聞いてみたんだ。そうしたらおじいさんはA君のお父さんとお母さんには特に厳しいらしいんだ。
全然そんなふうには見えないのに……。
僕は帰ってお父さんとお母さんにこの事を話したんだ。そしたら二人とも真っ青な顔をして、『二度とあの家には入ってはいけないよ!』と言われたんだ。
僕は『何でだよ!』と何回も聞いたけどお父さんもお母さんも教えてくれなかった。
そしてある日急にお父さんが僕に言ってきたんだ。
『今週でこの家ともおさらばだ。新しい家に引っ越すぞ』って。
急過ぎて、僕はとても泣いた。学校の先生にも聞いたけど、お父さんはもう学校の先生に引っ越すことを話していたらしい。
その日から僕はA君と遊ばなくなった。A君が僕を避けるようになっちゃったんだ。だから僕はもうA君と一緒に遊べない……。
それもこれも全部お父さんとお母さんのせいだ……。
僕はトボトボと帰り道を一人歩いていると、A君のおじさんが向こうから歩いてきた。
『何かあったのかい?』と聞いてきてくれるおじいさんに、僕はお父さんとお母さんが話していた事をおじいさんに伝えたんだ。
おじいさんは『そうか……ま、やくか……。』とだけ言って、家に戻っていっちゃったんだ。
僕は怖くなって、走って家に帰るとお母さんにこの事を話したんだ。お母さんは真っ青な顔して、お父さんに電話をしていた。
ーー僕があんな話をしなければ、こんな事にはならなかったのかもしれない
お父さんが帰ってきて、僕はみっちりと怒られたけど、その日は何事もなく終わった。
安心して布団の中に僕は潜り込むと、そのまま眠ってしまった。
次の日、僕はよく覚えてないんだけど、なんでか病院のベッドの上に寝かされていたんだ。少しも体を動かすことができない。しゃべることもできないんだ。
体中がすごく熱い……。凄く痛い……。
しばらくすると病室のドアがノックされて、A君のおじいさんが入ってきた。僕はとても怖かったけど、声を出すこともできないし動くこともできない。
『小麦粉は怖いんじゃよ……。』
それだけ言い残しておじいさんは去っていった。でも何か違和感が……右手がしびれるんだ。
それに……凄く……眠い…………。
終わり。




