Episode 02
「………………むにゃむにゃ……エルニカちゃ……ふへへへ……」
「———て! ——きて! おきてってば! 」
「ふふっ、俺はおきてるってばぁ、もう♡
むにゃむにゃ……。」
ん!? いやいや、違う違う違う。どうして俺の目の前にエルニカちゃんがいるんだよ。天国か、ここは。
「ねぇ、エルニカちゃん、ここどこ? てか、俺は確か死んだはずなんだけど……。」
ああ。理解したぞ。俺は死んだ後、エンマ様の裁きで天国に来ちゃったって訳ね! な〜るほど! 納得、納得!
実際、あたりには色とりどりの花々! 颯爽と生い茂る芝生! 広大な空を流れる白い雲! うーん、絵に描いた天国そのものだっ! サイッコーだぜっ! 俺はうーんと背伸びをした。
「しっかりしてよね……。私の目にくるいがなければ、キミはちゃんと生きてるから、安心して。」
うーん。確かに彼女は、白髪のボブで、澄んだ水色の目をしている。エルニカちゃんそのひとだ。でも、どこか雰囲気が違う気がするんだよなあ……。
「ていうか、さっきからキミが言ってる『エルニカちゃん』って、一体誰のこと? 」
やはり別人だったようだ……。
「いや、知り合いに君と似た人がいるんだ。でも俺の勘違いだったみたいだし、気にしないでくれ。」
多分、この世界でアニメとか推しとか言っても、通じないのがオチだろうし、これでいい。
「それで君はなんて名前なんだ? 俺は、藤ヶ谷あざみ。」
「ふーん。キミ変わった名前してるね。私はメルクリア・アリアドーネ。職業はウィッチよ。長いからメルと呼んでちょうだい。」
「メルか、いい名前だな。俺のことはあざみと呼んでくれ。よろしくな! 」
って、いやいやちょっと待てーい!
今ウィッチって言ったか? つーことは、メルは魔法少女!? え、もはやエルニカちゃんじゃん! でも、そんな職業があるなんて、天国にしては、なんかこう……RPG感強すぎな気がするんだが。ダメだ頭が追いつかない!
「えーと、あざみはどんな職業についてるの? 」
「それは……えっとな…………、」
———バタッ———
俺はどうやら、ただでさえ悪い頭を使いすぎたらしい。