プロローグ
ハァハァと息を切らしてボクは走り続ける
どれだけ走ったのかわからないけど、内臓がひっくり返りそうなほど凄く気持ち悪い
足の感覚が無くなり、寒けすらも出てきた
抑えた左腕からどれだけの血が流れたのだろう
全身からの冷や汗
両目からの涙
だらしなく垂れる鼻水
血と混ざり合った唾液
嗚咽しながら走るボクをきっと追いかけてくる
(お願い、助けてッ、ボク達を、お姉ちゃんを…)
疲弊し辿り着いた場所でボクが見たのは、夕焼けのように綺麗で、そして夜のように暗くて、お祭りのように賑やかな、焼けた街と人々の叫び声が混じった絶望的な光景だった
ボクは笑っていた
希望が無くなり、眼前に広がる絶望を見て、ボクは体中の水分を全て出すように、拭えない量の涙を溢れさせて、笑うことしかできなかった
(ごめんね…お姉ちゃん…ボクは何も出来なかった…何で、こんな…)
その場で倒れて意識が遠のき、楽しかった思い出が走馬灯として蘇り、ガラス片のように割れていく
断末魔が響くその世界で、その身体を優しい光が包み込んだ
この世界の最後の情けなのかもしれない、ただの気のせいなのかもしれない
大好きなお姉ちゃんに包まれているような感覚に少し微笑み、光と共に少年の身体は世界から消えた
血や涙の跡を残して