冒険者登録
アルケオン神聖王国城塞都市。
人々が行き交う街中で美しい女が歩いてる。白銀の腰まである長い髪。女神像のような整った顔立ち。異国風の巫女装束は前面が大きく開いた大胆すぎる格好。身体には魔術的な文様が刻まれて、より淫靡さを与え通り過ぎる者は皆惚けたように魅入ってしまう。
魔女ゼレスデウナは魅力値というステータス項目があるならば確実に振り切りすぎる美躰を周囲に晒しながら聖女アウライディスとの会話を思い出す。
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「話はだいたい分かった。あの暴風少女を捕まえればいいんだな。ま、そう簡単にはいかないと思うが」
「ああ、可能ならば確保してほしい。あのプレイヤーは我々の知らないことを知っている可能性があるからな。確保が無理ならば倒してしまうのは仕方ないが、出来れば生きたまま捕まえてもらいたい」
魔女ゼレスデウナと聖女アウライディスはあの謎の少女はプレイヤーで転生者として捕縛することにした。ゼレスデウナは放置しても構わないと思ったがアウライディスは看過出来ないようで彼女の背後にいる彼女側の神の思惑が透けて見えた。ゼレスデウナは同じプレイヤーのよしみで軽く請け負うことにしが、それは気紛れに過ぎなかったがどちらにせよあの少女には興味があるのは事実だった。
話もそこそこにゼレスデウナは城を後にする。あまり居心地がいいとは言えないので退散したのだ。この街もそうだが城は特にだ。聖女が張った結界の所為だろう。身体中がムズムズするのは闇属性が光属性を反発しているからだろう。
「騎士団の事とか人間しかいないこととか聞けばよかったかね。まあ、別にいいか」
ゼレスデウナはそう考えて組合に向かう。
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凝った作りの大扉から中に入る。扉は自動ドアみたいなスライド開閉式だった。魔力制御で強化されてるようで生半可な攻撃では破壊は難しいだろう。
冒険者組合は3階建ての施設で中は広いホール状の待合席の椅子とテーブルが並んでいる。奥には受付のカウンターが並んでおりそこで依頼を受けるのだろう。ちなみに街役場は別にちゃんとあるらしいのでここは純粋に荒事関連を処理する施設みたいだ。
俺が入ると一斉に注目される。視線に構わず受付のカウンターまで進み窓口に待機している若い女性スタッフに声をかける。
「冒険者登録をしたいのだが、いいだろうか」
受付嬢は俺と同い年くらい二十歳前後か、金髪ツインテールの綺麗な女子だ。
一瞬その受付嬢の目線が俺のこれでもかと主張しているスイカみたいな双丘に向くと、眼付きが憎い仇を見るように険しくなった。
「冒険者組合の御利用は初めてでしょうか。御説明させてもらいますがよろしいですか?」
受付嬢は柔らかな営業スマイルで対応する。さっき一瞬見えた般若みたいな形相は気のせいだったのか。確かにこの受付嬢の胸は平坦だ。組合指定の制服を着ているみたいだが膨らみを全く感じさせない。実は女装した男子と言われても違和感なく、なる程と感心してしまうかもしれない。
俺の視線を感じたのか受付嬢の目がハイライトを消して死んだ魚みたいになるが顔はスマイルのままだ。
「……御説明させていただいてもよろしいでしょうか?」
「ああ、頼もう」
*
「以上で御説明は終了です。質問はございますか?」
「大丈夫だ。問題無い」
受付嬢の説明はシーラちゃんたちに聞いたものとほぼ同じ内容だ。
「では冒険者登録をします。このカードを隣の魔道具に差し込んでください」
渡されたのは透明なアクリル版みたいな板状の物体。説明では個人を魔力判定で認識する魔導制御された認識票らしい。この世界は指紋や声紋やDNA鑑定は無いが魔力による個人判定は可能だとのこと。何それちょっと怖いんですけど。
冒険者登録する者は必ずこのカードで登録するので現在進行中の依頼内容や今までの実績履歴などが表示され、組合組織に開示されるようになっている。それで実績により冒険者のランクを上げるかどうか審断するみたいだ。それとランクは上がるが下がることは無いとのこと。
ただし注意事項もある。原則として冒険者同士の戦闘行為は禁止。冒険者登録をした後になんらかの違法、犯罪に該当する行為を行った場合はその情報が犯罪履歴として開示される模様。そして組合から処断される。処断内容は様々だが重いものは組合強制脱退、登録剥奪、登録永久不可、賞金首登録など多岐に亘る。
所有者が死亡した場合は認識票のは魔力反応は消滅するが情報はそのまま保存される。組合は所有者を失った認識票も回収しているので入手したら提供するようにさせており僅かだが報酬も出す。
それとこのカードには個人の名前は開示されるがステータスやスキルなど各個人に関する重要な情報は写し出さない仕組みになっている。
俺も鑑定してみたが情報を抜き出す機構は組み込まれてはいなかった。
かといって冒険者組合を全面的に信用する訳では無いが。
カシャンと四角い魔道具の箱に冒険者カードを入れる。正式な名称は『冒険者認識登録票魔力制御版乙型』だ。長い。
カシャンと再びカードが箱から出てくる。
カードには俺の名前ゼレスデウナと冒険者ランクD、依頼履歴は無し、と表示されている。ちなみにこの世界の言語、文字は元のダークネスセブンズソードで使用されているオリジナルのものと同じである。ただし話す言語は俺には日本語にしか聞こえないが、文字は全く別モノだが普通に自然に扱っている。
言語はそれぞれ自動翻訳されて無意識的に理解してるみたいだ。ゲーム仕様様々である。
「……冒険者ランクDか。初心者気分は随分と久しぶりだな。シーラちゃんたちは宿にいると言っていたか。まだ日没までは時間があるし、軽く依頼をこなすか」
俺は受付の隣にあるでかいボード、掲示板には貼り出されている依頼書を見る。
俺が掲示板の前に来ると他の冒険者が戸惑いながら道を開けてくれる。特に男は鼻の下を伸ばしてくるので微笑でトドメを刺す。女は親の仇を見るようにしてくるので、微笑を返すと真っ赤になって顔を逸らす。俺は男でも女でも両方いけるかもしれない。
ふっ、天は二物を与えているのだよ。ああ、やっぱり俺のアバターは最高にイカしてるよな。鏡があれば、ずっと眺めていたいくらいだ。
とりあえず自己陶酔はここまでにして何か俺のランクに見合う依頼を受けよう。




