束の間の平穏に潜みし闇
謎の少女は嵐のように暴れて去った。
この場には魔女と聖女とその従者が残された。
「……で?どーする聖女さま、俺ここから出たいんだけどね。……続きやりたいなら相手するけど」
「……いや、遠慮しよう。君のことも重要だが、やるべき優先事項が出来た」
アウライディスが片腕組みして顎に手を添え何か思考している。
「さっきの暴風少女のことか?」
俺も気にはなるっちゃなる。突然現れた謎の少女。間違いなくプレイヤーだと思う。そして転生者なのも確定であろう。ただ目的は分からない。
何のためにわざわざ俺たちに顔を見せに来たのか。これは俺の予想だけどPK、プレイヤーキルしに来たわけではない、ただ単純に戦うために様子を見て楽しんでた感じだった。
殺すつもりなら最初にいくらでもチャンスはあったからな。
「……神に連絡を取らねば……奴が何者か情報を……」
なんか考え込んでる聖女さん。正直この空間程度なら俺でも壊せると思うんだけど。ただあの少女は気付かれず進入していたから強力な隠蔽スキルがあるのだろう。アサシンのクラスなら暗殺系のスキルが豊富だからな。
「……ひとまず君の事は後回しだ。君が邪悪なものかどうかの判断は保留にしよう……今はあの少女の方がよほど危険度が高いだろう」
聖女さんはそう言って指をパチンと鳴らす。
すると世界がカチリと音が鳴った。
ざわざわと喧騒が辺りを包む。
そこはアルケオン神聖王国城塞都市の門前。
「大丈夫ですか?旅のお方よ」
おれの前に聖女さんが法衣を着て手を差し伸べている。
「ああ、すまない。ありがとう」
俺は聖女さんの手を取る。
「後ろの方は具合が悪いのですね。誰か手を貸して下さい」
「は、はいっ」
聖女の呼びかけに兵士たちが慌てて来て俺から背負ってた商人のおっさんを下ろして詰め所だろう建物に運んでいく。
「……さっきと全然違うな。猫被りすぎだろう、アンタ」
俺はなんとも違和感を感じてジト目で聖女アウライディスを見る。
「……ふふ。面白いことをおっしゃいますね。後ろの子たちも緊張しないでね」
聖女が満面の笑みで、まさに慈母といった雰囲気で淑やかに喋る。
「あ、あう〜、こ、こんな間近で聖女様とお話しちゃったよ〜」
「……ヤバイ。サインしてもらおう」
シーラちゃんとジャスミィちゃんがガッチガチに固まってるよ。そうか、この聖女さん有名人か。まあ、そりゃそうだよな。国を救った救世主で伝説なんだろう?そりゃそんな凄いなら緊張するだろ。俺は特に緊張しないけどな。
「……いつまでもここに居てもあとが使えてしまいますので、私はこれで……」
そう言って聖女はしずしずと街の中へと去っていく。後ろを何人かの兵士が畏まりながらついて行く。
ピコン、と俺のイベントリのアイテム欄に手紙が送られてきた。
送り主は、アウライディス。
どうやら呼び出しを受けたようだ。




