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新たな来訪者

 







「もう戦わないのですか?とても楽しいアリーナバトルの観戦でしたが」



 魔女と聖女とその従魔たちしかいないはずの空間、作り出された闘技場アリーナコロシアムに可愛く高い少女のソプラノボイスが響く。


「なっ!?誰だっ!!この神的領域には私の許可無く侵入は出来ないはずっ!!」


 アウライディスが突如聞こえてきた少女の声に驚き辺りを見回す。


「お客さんならさっきからアリーナの観客席の最前列に座ってずっと俺たちの闘いを観てたぞ」


 なんだ聖女さんは気付いてなかったのか。俺も途中からいつのまにかいたお客さんに気付いてちょっと驚いたのだが内緒だ。


 俺は観客席前列の防壁面の真上に腰掛けて足をぷらぷらさせている少女に視線で示す。


「貴方は僕の存在に気付いていたのですね。流石ですね」


 少女はスタッと軽い身のこなしで地に降りる。


「……馬鹿な、私の創り出した領域内で私が察知出来んとは……貴様は一体……!」


 聖女が少女を睨む。


 その少女は歳は15〜17ぐらいか。蒼みかかった黒髪のセミロングで肌は病的なほど白く顔立ちは西欧系のスゴい美少女だ。瞳は色素が薄い灰色でどこか無機質的な印象を受ける。


 裾丈の極端に短い黒いノースリーブのジャケットが年相応に膨らんだ胸部を申し訳ない程度に覆い、下半身はローレグの紐パンで臀部はTバックのかなり際どい格好をしている。両腕と両足には黒い皮のベルトがいくつも拘束具のように巻かれていてる。


 うん。痴女だ。職質からの補導、署まで連行待った無しのイタイ系コスプレ厨二美少女だよ。


「先程から皆さんの戦闘を拝見させて頂きましたが、とても素晴らしかったです。特にそちらのおふたりは次元がまるで違いました。"久しぶり"に僕も高揚してしまいました」


 突然湧いて出て来た美少女がどこか無機質な笑顔で感想を述べた。


 俺はその間にこの謎の観覧者の少女に鑑定をかけようとしたが、


『原因不明のシステムエラーによりその情報は開示できませんでした』


「はっ?」


 俺の間の抜けた声が出た。


「……なんだこれは……!?システムの異常……!?鑑定が出来ないだと……!?」


 どうやら聖女さんも俺と同じく謎の美少女を鑑定しようとして弾かれたらしい。レベルの格差で鑑定不可はあるが、俺と聖女のステータスならどんな相手でも看破するだろうし鑑定確実のはずなんだが。


「ああ、すみません。僕のアバターはデータがまだ完全では無いので一部機能制限されています。ステータスが表示されないのはその影響かと思いますよ」


 少女が何気無く聞き捨てならないことをサラリと言った。


「アバター……てことはお前さんはプレイヤーか。だとしたら転生者か」


「さあ?それはどうなんでしょうね。気になりますか?気になりますよね。ふふ……」


 少女はクスクス笑う。


 ……この少女……なんだか気色悪いぞ。なんていうかねっとりした絡みつくような嫌な感じがする。


「……ご主人様、此奴には大量の血の臭いが染み付いています」


 俺の側にいたアルモディアがそっと教えてくれる。


 ああ、そうかこの違和感の正体。


 この少女の視線、それはまるで獲物を品定めしている捕食者特有の眼だ。


 それは聖女たちも感じ取ったらしい。いつでも戦闘に移れる気配がする。



「ふふっ、本当はどちらか残った方と遊ぶつもりだったのですが……ふたりを相手にするには、まだ不完全な僕では厳しいですね。残念ですが……」


 そう言った少女が一歩退がる。


「逃すと思うか?――――闇よ黒き茨となり我が敵を縛めよ『ダークバインド』」


 俺は闇拘束魔法を唱える。


「貴様が何者か、詳しく聞いてやる――――光よ悪しき捕えよ聖なる鎖の堅牢『アークプリズン』」


 アウライディスが光拘束魔法を唱える。


 闇の茨が少女の四肢を雁字搦めに縛り上げるとともに周囲を光の鎖が縦横に覆い格子となり閉じ込める。


 闇と光の二重の拘束魔法で少女は完全に行動不能に陥った。ギシギシと縫い止める影の茨と光の鎖が阻害する。


「……あ、ふふっ。これは、凄いですね。デバフが複数かかってエグいことになってますよ、酷いです。この拘束を解くのは普通に無理ゲーですね。………普通ならね」


 拘束されているにも関わらず全くたじろぐ様子も無く余裕ある態度の少女。



「……仕方ないなあ、じゃあ少しだけ遊んであげますよ。ふふふ」




 無邪気に不気味に少女が笑うと、二重の拘束が軋み、弾け砕け、吹き飛んだ。













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