魔女VS聖女2
魔女闇の魔将団と聖女光の神軍団。
互いに魔力の波動がぶつかり合い位相空間のアリーナを震わせる。
「……そっち一体多くね?ま、こっちは別に数なんて関係ねーけど」
聖女が召喚した従魔は四体。こっちは三体。一体差は誤差だろう。しかし奴が呼んだ奴らは俺もゲームで必死になって仲魔にした記憶がある。どいつもSランクの最強クラスの存在だ。
「これが今私の出せる全戦力だ。貴様を相手に手を抜けるとは思えんのでな。……疑問なのはなぜ貴様は従魔を三体しか召喚せんのだ?他の七罪の魔将や魔獣はどうした?」
アウライディスが問う。
「あー、それなんだけど俺は、この世界に転生した時に――――」
俺は邪神にやらかされたことを話す。
なんでわざわざ馬鹿正直に話したか?それは、同じ元プレイヤーってこともあり親近感もあるんだろう。
けど、コイツは俺と同じくらいダークネスセブンズソードが好きなんだと思ったからだ。
じゃなけりゃあんな綺麗なアバターを作らない。
そこには愛がある。
それにアイツが召喚した従魔、ただ召喚されたって気がしない。召喚主を守ろうと期待に応えようとする想いがひしひしと伝わってくるのは俺の従魔も同じだからだ。
ゲームの時のように一方的な命令を聞いたCPUじゃない。しっかりと自分の意思があるひとつの生命体、唯一無二の存在なのだ。
だからこんなに頼もしく感じる。相手がどんなに強かろうが必ず勝ってみせる、そんな気にさせる。それは相手も同じだろう。
「………そうか。そういう理由か。さすが邪神、悪辣というか不運というか、気の毒過ぎる……災難だったな」
おうふ。同情された。
「……さすがに私でも全アイテムロストや従魔ロストは堪えるぞ。しかも貴様が転生してから半日程しか経ってないのが驚きだ。私のように既に何百年も過ごしたような貫禄と力強さを感じたからな」
ん?何百年も?聖女さんはこの世界にいつ転生したんだ?
「アンタいつ頃この世界に来たんだ?」
「……私が神にこの世界に転生させられたのは600年ほど前だな。あの時は苦労したものだ……」
600年て……どんだけ長生きしてるんだ。外見は20代ぐらいだし、歳をとった感じには見えないけど。
……俺も歳をとらないのか?もしかしたらプレイヤーは老化しないのか?
うーん、妙なとこはゲームのままなんだよな、この世界。それと転生させられたって言ってるし無理矢理転生されたのかな、だとしたら向こう側の神も信用出来そうにないな。邪神様もなんか怪しいし。
「……まぁお互いに色々あったんだな」
「……そう、だな……いかんな、妙に話し込んでしまったな、詫びに貴様にはこれをやろう」
アウライディスがメニューを操作すると俺のメニュー画面にアイコンが表示された。
「これはトレード機能!使えたのか!」
俺のアイテムメニューに金色の宝箱が表示されてる。
「これは私のスキルの能力だ。中身は回復アイテムセットだ。ゲーム時代にあった超強力な物は無いが、十分に役立つだろう」
「おっ!それは助かる!ありがとう!」
「いや、構わん。元プレイヤー同士だ。それに私はこうして何百年ぶりに同郷の者に出会えたからな、日本人だろう?私には分かる」
「やっぱりそうか。アバターのこだわり具合が俺と似てるから俺も思った」
二人の間に少し暖かいものを感じた。これがゲームなら聖女さんと良いフレンドになったかもな。
「……さて、待たせたな。始めようか。お前たち済まんな、久しい同郷の者に会って少々気が緩んだ」
「いえ、貴女様をいついかなる時も守護するのも騎士の務め」
「私は気にしておりませんよ」
「ほっほっほ。仲良きことは美しきことかな」
「我は主人に何処までも付き従うまで」
聖女に絶対の信頼を置く従魔たち。彼らも自らの主人と至難を乗り越えて来たのだろう、絆の深さを感じる。
「魔女よ。私は出し惜しみはしない。初手から全力で行くぞ。覚悟して臨むが良い。"ヴァルキリーコネクト"」
聖女がスキルを発動すると白亜の法衣が光の粒子になり、一糸纏わぬ純潔の乙女の美身を晒す。粒子が再び聖女の身体を覆うとそこに美しき蒼穹の鎧の戦乙女が誕生した。
「まだだ。来い、魔断の神剣『神魔絶つの太極の偃月刀』」
空が砕け全てを吸い込む白煌の渦から両端に対になる巨大な刀身が全貌を現す。
太陽よりも輝く光刃をその手に掴む蒼穹の戦乙女。
「いざヴァルハラへ」
猛き美しく微笑んだ。




