王都に向けて
ポクポクと荷馬車が平原の街道を歩いている。
多くの人が歩いてきただろう街道の石畳は丸く緩やかに曲線を描き旅人を導いて行く。
御者席には老若男女誰もが振り返るだろう美女が馬の手綱を引いている。その両脇に剣士の美少女と魔術士の美少女が美女を間に挟んで座っている。
「えーっ、ゼレスデウナさん、あんなに強いのに冒険者じゃないんですか?」
「ああ、ずっと人里離れた山の中で修行していたからな。最近久しぶりに人里に下りてきたのだ」
「…世の中には凄い人が沢山いる。私のお師匠様も凄かったけどゼレスデウナさんはもっと凄い」
キラキラとした眼差しで美少女二人に挟まれた俺は今彼女らの質問ぜめにあっている。
エルドアザルが察知した複数の人間と魔獣の気配。それらが戦闘状態にあり、どうやら人間の方が武が悪かったので俺は直ぐに乱入した。相手は雑魚の魔物で適当に瞬殺したら彼女たちに妙に懐かれてしまった。
まあ異世界の現地人を助けたら仲良くなるのはテンプレだから構わない。
そして皆んなでアルケオン神聖王国に向かっている。あと治療した行商人のおっさんは荷台で眠っている。
馬は俺がアンデットにして復活させた。
紫の肌のナイトメアホースという従魔にしたら、二人の少女は凄く驚いていたので、死霊魔法の存在は知らなかったようだ。
ちなみに彼女たちをこっそり鑑定したみた。
シーラ・レエル
レベル: 23
種族: 人間
性別: 女
年齢:15
クラス: 剣士
称号: ヒヨッコ 無鉄砲 ドジっ子 負けず嫌い
スキル: 剣の心得 武才流技
ルホネス村出身の少女。小さい頃から騎士や戦士になりたいと思い、村を出奔し冒険者になる。まだまだ駆け出で危なっかしいが剣の腕は確かなものがある。
ジャスミィ・エスケレト
レベル:24
種族: 人間、***(閲覧制限)
性別: 女
年齢: 14
クラス: 魔術士
称号: 天然 シリアスキラー 自虐キャラ
スキル: 魔術の心得 魔導理解
***(閲覧制限)だが、両親は生粋の人間。数世代前の先祖返りであり、呪血還りと呼ばれる珍しい現象を患った少女。その事が原因で両親に遺棄された過去があるが本人は知らない。魔術士の師匠がおり、育ての親代わりになっている。
なるほどね。シーラちゃんは剣士か。赤い髪のボーイッシュ美少女で日に焼けた褐色がナイスだ。将来はかなりの美人さんになるのは間違いないね、胸は今後の成長に期待だ。
ジャスミィちゃんは、ちょっと生い立ちが複雑だね。この呪血還りはゲーム時代にもあった設定だな。昔は色んな種族をまとめて人間のくくりだったからな。混血は普通にあったけど差別や迫害も一部はあった。今の時代ハーフとかどうなんだろうか。
それに種族の***は隠蔽の魔法が施されている。恐らく彼女の師匠が何かしら仕掛けをしてるんだろうけど。これはよほど高レベルじゃないと看破できないし、隠蔽されてること自体見破れないね。
俺は直ぐに判ったけど、ナイーブな問題だから関わるならクエストイベント扱いになるな。それに彼女の魔術士の師匠も気になる、一度会ってみたい。
「…久しぶりの人里なので一般常識や礼儀作法を大いに忘れているかもしれない。もしおかしな事に気付いたら二人とも私に教えてくれると助かる」
ゲームとしてのプレイは最近だから問題ないけど、この世界で千年時が経っていれば色々氏しきたりも変わっているだろう。
「…うーん、もしかしたらあたしのファッションセンスの問題かもしれないけど、ゼレスデウナさんの格好はかなり際どいかな?いや、素敵でカッコいいんだけど、大胆過ぎるというか…」
シーラちゃんが赤い顔をしてチラチラこちらを、特に大きく開いた胸元に視線を向ける。
「…シーラちゃん、世の中には理解され難い事柄が沢山ある。私はゼレスデウナさんのセンスは芸術的だと思う」
ジャスミィちゃんが私解ってますよ的にうんうんと頷いている。慰めやフォローではなく本当にそう思ってるようだ。
まあ確かにエロい服装だよな、現代世界ならこんなんでうろついていたら逮捕されてるよ。
それにセックスアピールが露骨すぎて襲われても自業自得な格好だ。シーラちゃんの言いたいことは十二分に理解できる。
でも俺にとっては大好きなゲームの世界なんだ。その大好きなゲームの世界で大好きなキャラクターになってるんだ。
もしかしたらこのまま街に行ったら衛兵や憲兵に連行されてしまうかもしれない。それに好色な男どもが寄ってくるだろうことは明白だ。
おそらく一悶着ありそうな気もする。トラブルを防ぐならローブでもマントでも羽織ればいいのだ。
実に簡単だ。
盗賊団のアジトにはそれなりのお金と貴金属があったので拝借してきた。あとはアルモディアが盗賊の死体を処分したとき、まだ使える武器や防具を回収してくれていたのでそれらを換金すればまとまった資金になるはずだ。
ローブやマントもその中にあったので問題ない。俺がこれらを身に付ければいらぬトラブルは解決するだろう。
だが断るっ!
この心血注いでクリエイトしたアバターの肌を隠すだと?
あり得ない。
わざわざ魅せるために作成したのだ。
美の化身として。
このゼレスデウナは俺にとって唯一無二の存在なのだ。
なんなら素っ裸でも問題ないのだ。
余すことなく見せつけてやればいいのだ。
まあ流石にオールヌードで街を闊歩したらヤバイだろうからしないが。モザイクな修正は一切無い現実的な世界なのだ。
ま、なんかトラブルになったら力尽くで解決するわ。シーラちゃんたちには迷惑かけないようにしよう。
「おっ、どうやらアルケオンが見えてきたようだ。あれが王都で間違いないのだろう?二人とも」
「あ、はい!ゼレスデウナさん、あれがアルケオン神聖王国です」
「…いつ見ても大きい。それに相変わらず人の出入りが多い」
まだ遠くの方に見えるのだが、かなりの規模だということが分かる。周りも行き交う人々が多くなり、大陸の中心にあることだけはある。
巨大な四方を囲う堅牢な外壁がずっと続いているだけでも街の大きさが分かる。
そしてそれらより目立つのが最奥に位置する一際雄大かつ巨大な建造物の存在がある。
あれがアルケオン王城か。




