目覚めた先はあの世界
プカプカと水面に浮かぶのは人だろうか。
森のほとりにある小さな湖の中心に人が浮かんでユラユラと揺れていた。
もっともユラユラと揺れているのは2つのおおきなバレーボールのような胸部があるので女性だと理解できる。
腰先まであるだろう長く白銀の艶やかさを持つ髪。
女性は衣服の類は身に付けてはいない。
しなやかな筋肉とほどよく引き締まった手足と腰。
身体の様々な場所には魔術的な文様が彫られていて、魅力的な肉体を更に淫靡に引き立てていた。
胸の中央部には7つの刻印が円を描くように刻まれそれらが白く滑らかな肌の身体全体に広がって幾何学的な模様を描いてる。
下腹部はハートマークを変形させた淫紋のようなものまである。
女性の瞳は眠っているのか閉じられているが、その顔は美しくまるで美の女神を降臨させたように思えた。
「ん・・・」
女性から声が漏れた。
「ん・・・あ・・・」
生きているようだが、その麗しい唇からの艶めかしい甘い声は聞いた者の脳を蕩かすだろう。
「あ、ぁ・・・こ、こ、は・・・?」
女性の目蓋が僅かに動いた。
森の木漏れ日に目を細めながら、オッドアイの双瞳が開いた。
蒼銀の右眼と紅金の左眼が震えながらゆっくりと周りを見渡す。
「知らない天井、というか森じゃん」
天井は無かった。
森の木々に優しく迎えられ湖のベッドから身を起こす。
湖は決して浅くはないのだが女性は水面に立っていた。
「あー。なるほど。そういうことか」
女性は自身の体を見て納得して頷く。
「神様が言っていたことはこういう事だったのか」
女性は死んだ後に声を聞いたのだ。
生前好きだったゲームの世界に転生させてあげるよ、と。
一体なんだと思ったが今目覚めて見て理解したのだ。
自分は、元おっさんだった男はゲームの世界「ダークネスセブンズソード」のマイキャラの女性アバターになったのだと。