おっさん美女は美少女を癒し癒される
地面に巨大なクレーターが出来上がっており、ブスブスと未だ余熱をはなっているのが先程の攻撃の苛烈さを物語る。
猪の魔物の姿は影も形も微塵も無く、抉れた穴の中心に茶褐色の槍が突き刺さっているだけだ。
槍がひとりでにフワリと浮き上がると飛翔し、投擲した美女の手元に収まった。
……ちょっとオーバーキルしすぎたな。
跡形も無く消し飛ばしたらそりゃ素材も何も無いよね。
調子に乗って適当に思いついた技を言ってみただけで、あんな必殺技はゲームに無かった。
本当は影の国のおっぱいタイツ師匠の槍投げもチラッと思い浮かんだけど、辞めといた。
……オトナの事情というやつだ。
まあ素材はさっきぶった切った牙があるからいいや。
それよりも、俺の目的は魔物から助けた人間たちだ。
異世界転移の鉄板は現地人を窮地から救って何かしらイベントを起こすことだ。俺はとりあえず彼等彼女等から色々と情報を得たいと思う。
まずは友好的に接してみよう。
「…怪我はないだろうか。少し手荒かったか力加減を間違えてしまったようだ」
ここはクールかつ謎めいた雰囲気で会話のキャッチボールを試みよう。
まずは地面にへたり込んでる赤髪の剣士な少女に優しく手を差し伸べる。
「…あ、あの、あのっ!助けてくれて、あ、ありがとうございますっ!あ、痛っ…!あ、足を挫いちゃたみたいで…」
俺の差し出した手を掴むかどうか躊躇したあと、恐る恐る掴んだ少女を引き起こす。
ん?あちこち擦りむいて血が出ているぞ。それに足を痛めているようで立ち上がる時辛そうだった。
この女の子よく見れば美少女だし、怪我してるのは可哀想だから治してやるか。
「少し怪我をしているようだな、治療してあげよう。彼の者の傷を癒すこと健やかなれ、メディアリカバリー」
俺は初級魔法のメディアリカバリーを唱える。この魔法は初期のクラスが習得する基本的な治癒魔法だ。今の俺には回復が多種多様な光魔法を使用することが出来ないので汎用魔法を使用することにする。
淡いキラキラした光の粒子が剣士の少女を優しく包み込む。
「あ…綺麗な光が…なんだろう、とても温かい…」
光の粒子が徐々に小さくなり消えると少女の傷は無くなりツルツルの玉のお肌が甦った。
「す、凄いっ!傷が全部消えちゃったよ!足も痛くない!凄いっ凄いっ!ありがとうございますっ!!」
余程感動したのかキャッキャッと先程の痛みを忘れて飛び跳ねる。
俺はそんな可愛い美少女にほんわかする。
初級魔法の治癒術も十分役に立つことが分かった。
さて次はもう一人の少女だ。
「君は大丈夫か?怪我をしているならば、私の治癒魔法で癒してあげよう」
俺は水色の髪のボブカットの魔術士の少女に話しかける。
おーこの子も可愛い、間違いなく美少女だ。剣士の女の子はショートカットで運動系少女という感じだが、この女の子は文科系少女という感じだ。
魔術士の少女は商人ぽいおっさんを治癒魔法で癒してるようだ。
「…あ、ありがとうございます。私は大丈夫なのですが、この方の状態が芳しく無くて…私の治癒の魔法ではこれが精一杯です…早く街に連れて行かないと…」
魔術士の少女は深刻な顔をする。
ふーむ。確かにこの商人のおっさん顔真っ青だな。それに少女の治癒魔法があんまり効果が出てないような、魔力の威力が弱いのかな、これは。
「私が代わりに癒してみよう。いいかな?」
「…あ、は、はい」
俺は少女と入れ替わるようにして商人のおっさんにまずは鑑定魔法をかける。
商人
レベル: 11
性別: 男
クラス: 商人
状態異常・失血、内腑損傷、各部骨折
ん?怪我はしてるのは理解したけど状態異常扱いなのか。内腑って内臓か、これはアカンやつやな、失血もしてるし。ここは中級魔法で治してやろう。
俺は中級回復魔法を唱える。
「彼の者の穢れを浄化し健全に至れ、クリアオートメディテーション」
俺は中級魔法の癒しと状態異常を回復する魔法を使用する。クリアオートメディテーションは猛毒や惑乱などの厄介な状態異常を回復して体力を回復する中級クラスが覚える汎用治癒魔法だ。
商人のおっさんの周りに魔力で構成された水晶体が出現し、水晶体の輝きが増し強く光ると水晶は砕け結晶になりおっさんに降り掛かる。
結晶の雨粒が霧散し消えるとおっさんの青い顔に赤みが差す。呼吸も落ち着いたようだ。
再び鑑定で見たら状態異常は無くなっていた。どうやら成功のようだ。
「よし、これでもう大丈夫だ。あとは安静にしていれば眼を覚ますだろう」
「す…凄い…見たことない魔法です…なんて…素晴らしい…」
魔術士の少女がキラキラした眼差しをする。
…そんな大した魔法ではないのだが。
今の俺は光魔法が扱える強力な回復魔法は行使できない。味方全回復や死者を完全復活させるなどの高レベルチート魔法が使えないのは惜しい。
なんとかならんものか要検討だな。




