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凡人以下の俺に異世界でチートスキルがあったら奇跡だと思います。  作者: 羽矢隼
第3章 俺は異世界で役目を果たす。
16/20

 一人で魔王の部屋に入った。

 更新しました。

 よろしくお願いします。

  1

 出発からもう長い時間が過ぎた。

 王都は振り返ってももう見えない。

 当たり前だ。だって、もう魔王城にいるから!


 前衛を軍の人達が引き受けてくれたため、難なく進むことができた。

 ほとんどの人が、まだ武器にも触れていないだろう。俺も。

 一応、伝説の英雄の剣を所持しているため、戦う機会があったかもしれない。

 しかし、俺はそんな愚行を起こさない。何故なら、魔王以外に目標はないから! ……というのはウソで、本当は、体力の温存を計るためだ。

 どんなに強くとも、限界は必ず生じる。

 その限界がいつくるか何て、わからない。

 だからこそ、戦わないことが最善の一手なのだ。


 しかし、もうここは相手の本拠地。

 戦いは避けられない。戦闘必至だろう。……俺以外は。

 俺の«ぼっちは歩くのが速い(スピニング・オンリー)»を使いさえすれば、戦闘なんぞヒョヒョイと抜けられる。ゆーて素通りだろう。

 全員が戦っている隙に、俺は魔王を倒す。完璧なシナリオ。


 きっと、この場にいる全員がそれぞれの理由を持っているのだろう。

 だからと言って、譲り合いなどしていられない。するわけにいかない。

 誰もが理由があるからこそ、譲れない。


 しかし、どんな強い決心をしていても、全てのことが可能になんてならない。

 結局は力の強さが必要だ。精神の強さはその後だと考えている。あくまで持論だが。


「戦闘は避けては通れなくなる! 全員、覚悟を決めろ!」


 では皆さんこれから別行動させていただきます。

 そう心の中で呟き、«ぼっちは歩くのが速い(スピニング・オンリー)»を使う。

 この瞬間に、俺は誰からも認識されなくなった。


 存在はしている。しかし、認識できない。

 歩いている間、誰からも認識されない、それがこのスキルの力。


 大丈夫。一人で行動しても。一人で魔王と戦っても。

 俺には英雄の剣があるし、出し惜しみしてきたスキルもある。

 誰の力も借りず、俺は進む。ただ一つの願いを叶えるために。


 それだけのために、誰とも協力しない。最低なのはわかっている。

 それでも、得なくてはならないものがある。

 どれだけ自分が嫌いになろうとも、願いだけは叶えなくてはならない。

 全てを捨ててこの場に立つ俺の覚悟だ。


 理想を叶えるためには犠牲も必要だと、俺は思っている。

 正義の味方なら、そうは言わないかもしれない。しかし、俺は正義の味方でも何でもない。

 正義の味方は、正義の『味方』でしかない。結局、正義の味方は、『正義』ではないのだ。


 どこにいようと、どんな世界にいようとも、絶対に正しいことなんてない。

 俺はこれから、自分の欲望のために剣を振るう。

 その犠牲が、どんな極悪非道の命でさえ、命は失われている。

 正義は向ける相手がいなければ、理想、幻想に過ぎない。

 ならば、最初から正義などという御託はなしだ。


 自分の救いたい人を救えた人間が一番優れているに違いない。

 そう思わないか、親父。

 誰に否定されようと、進むことは止めない。

 

 俺が素通りした魔王の手下らしきデーモンがその巨体で侵入者を迎撃する。

 その瞬間にも、俺は歩いている。

 後ろから悲鳴が聞こえようと、助けを求めていようと、振り返りはしない。

 ただただ、その先にある扉を目指していた。


  2

 そして、魔王のいると思われている部屋の前に着いた。

 この場所に来るにも、たくさんの犠牲があった。

 しかし、今はそんなことは気にしていられない。


 どす黒く、複雑な模様の描かれた扉。

 見るもの全てに恐れを懐かせられるその面持ちは、まさに魔王の部屋といったところだ。

 その扉に手を掛ける。

 ひんやりとした金属のような肌触り。

 額から一滴の冷や汗。


 そして、その扉に力を加える。

 しかし、そこで予想外の出来事が起こる。

 その鈍重そうな見た目からは想像できないほど、すんなりと扉は開いた。

 まるで、客を招き入れるようだ。


 開いた扉の先に一歩踏み出す。

 そして、部屋の中央に行き着いたその瞬間、扉は閉まった。

 暗かった部屋に灯りが灯る。


 部屋の最奥に玉座が。

 そして、そこにいたのは…………


「やぁ、来てくれるとは嬉しいよ、英雄の剣の保持者」


 紛れもない、魔王だった。

 最後まで、ありがとうございます。

 現在、さらに二作品連載しています。

 そちらもどうぞ、よろしくお願いします。

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