2話 強襲
一瞬の出来事に、固まる一同。グィホンの下半身は完全に弾け飛び、上半身だけになり、泡を吹いている。
「落ち着け!!!みんなそこから一歩も動くな!!!」
剣を抜き抜き、大声で周囲に指示を出すテツヤ、それに同調し、マサトとチカ、エリナも武器を抜く。
そして一間隔置いて、ユミコが絶叫する。
「キャァァアアア!!!」
「待て!落ち着くんだ!その場に伏せろ!」
ユミコがグィホンの方に走り出すが、ソンヒョンが咄嗟にタックルをして押し倒す。
「キャア!熱っ!」
そう短く叫び剣を手放すエリナ。
「今度はなんだ!?」
「剣がいきなり燃えたの!」
「燃えてなんかいねえじゃねえか!早く武器を拾え!」
テツヤが周囲に状況を確認する。
「あれは罠か!?恐らく攻撃されたわけではない!とにかく落ち着け!」
「エリナ!武器を拾うんだ!!」
言われるがままエリナが剣を拾うと、金属が熱を帯び、剣全体がうっすらと燃える。
「あつっ!なにこれ!?」
再び武器を下ろすエリナに、ソンヒョンが口を挟む。
「それは恐らくレリックの効果じゃないか?それ以外考えられない。」
「でも、そんなのどうでもいいよ!それよりグィホンは!?まだ息してる!?」
「みてわかんねえのか!もう無理だ!」
テツヤの指摘に、ユミコが泣きわめく。
「なにその言い方!!酷すぎるよ!!こんなことがさになるってわかったら絶対に来なかった!!」
「犠牲が出るのは仕方ないだろ!グィホンが警戒を緩めたんだ!それより冷静になれ!幸運にもレリックは俺らの手にあるんだ!」
少し思慮のかけたテツヤの発言に、今度はエリナが半ばヒステリックに捲し立てる。
「仕方ないってなにその言い方!あなたリーダーでしょ!?あなたに責任あるんだからそんな言い方はないでしょ!」
「そうよ!テツヤくん散々先に進もう進もうって言ってたじゃない!?あなたのせいでグィホンは!!!」
「グィホンを返してよ!」
膝だちで大泣きするユミコ。
「こんな大仕事なんだから犠牲が出るのは承知の上だろ?俺たちの誰かだったかもしれない!」
「承知っていうのもおかしいよ!テツヤが絶対に大丈夫大丈夫って言うから私たちはついてきたのに!」
「絶対に大丈夫なんか言ってねえ!リージョンの中に来てるんだからそれくらいの覚悟はしてるはずだろ!危機感っつうか、自覚を持てよ!」
しばらく怒鳴り合いが続く。鞍馬は普段通り口を挟まなかったが、もちろん心中は穏やかでなかった。
グィホンがかかった罠は、罠の看破に長けた彼でも見つけられない巧妙な物だったのか。
それとも、鬱憤を晴らすために死体を蹴り飛ばす彼が迂闊であっただけなのか。
そもそもこの世界に来て火薬を見たのは初めてだが、果たしてライフルや大筒のないこの世界に備わっているテクノロジーなのか、そうでなかったら一体どういうことなのか。先程のガラス片やレリックと思しき物質のエリナへの付着、突然の発火もそうであるが、この遺跡に来てから、理解の範疇を越えた出来事や発見ばかりである。
鞍馬の動揺を他所に続けられる口論に、見かねたチカが口を開く。
「ちょっと今はそれどころじゃないでしょ!?お目当ての物は手にはいったんだから、グィホンを葬るためにもとりあえず地上にもど……」
どぐちゃっ。
言い終える前に、チカの頭部は、広間の外から忍び寄ってきていた、2メートルをゆうに越えるだろう、巨大で筋骨粒々の、大型ゴブリンのこん棒のスイングで吹き飛ばされた。




