2話 降下
更にしばらく進むと、天井にダクトが張り巡らされている空間、というよりは大部屋に出た。
天井から視線を下げると、今度はアレスの仲間であった男性が、頭から槍を生やして横たわっていた。
一同は臨戦態勢に入った。テツヤはグィホンを庇い、チカはユミコを庇う姿勢を取る。
鞍馬は死体を観察する。
死体は頭に槍を突き立てられている。
血まみれで、脳味噌が飛び出て、吐き気を催す程にグロテスクだった。エリナは目を背け、ユミコはその場に吐瀉した。
鞍馬は顔をしかめながら考える。
頭頂部に槍が突き立てられているが、ゴブリン達は成人の頭に槍を突き降ろす程大きくなく、死体の膝や腰に目立った損傷はない。
そして、床の傷。
まさか、と思い顔をあげようとしたその瞬間、ソンヒョンが叫ぶ。
「上だっ!!!」
張り巡らされているダクトに所々空いている穴から、ゴブリンが次々に飛び降りて来た。
鞍馬の真上からもゴブリンが飛び降りて来てることに気付いた瞬間にはもう遅く、武具を構えたり横飛びするには間に合わなかった。
あぁ、俺もこいつと同じように頭から槍を生やしたオプーナの仲間入りだ。横目で死体を見る。
「危ねえ!」
マサトが鞍馬を突飛ばし、降下してくるゴブリンの頭部に拳を見舞う。
ゴブリンは、マサトの拳によって首を降り、力なく床に転がった。
危なかった。マサトに突き飛ばされなかったら、今頃死んでいた。間違いなく。
そう思った鞍馬が顔を上げると、降下してくた他のゴブリンはテツヤの、チカの、エリナの剣撃で床に着地するよりも早く斬り飛ばされていた。
「危なかった。本当にありがとう、マサト。」
心からの感謝を述べる鞍馬は震えていた。
「気にするな。それよりもよく上に敵がいると気付いたな。筋がいい。」
マサトの手を取り、立ち上がる鞍馬。
「ちょっとだけ危なかったな。これからどうする?こう毎回上から飛び降りてこられたらたまんねえぞ。」
マサトの問いかけにソンヒョンが答える。
「さっきの落とし穴の竹を燻して、ダクトの中のゴブリンが酸欠で出てきたところを狩るのは?」
「探査中の他の人はどうするの、それより、ゴブリンを殺した後調査できなくなつちゃうじゃん。レリックがあるかもしれないんでしょ?ここにも。」
エリナが釘を刺す。
議論が膠着していたところに、足音が響く。緊迫する一同。
「おーい!ブラックアイ!頼むから助けてくれ!」
足音の主であるアレスが叫びながら走り寄ってくる。
「なんだ、てめえか。どうしたんだ。」
「上からゴブリンが降ってくるから仲間と散り散りになって逃げてたんだ!そしたら昨日の冒険者が全滅してて、ヤバいと思ってたら戦う音がしたから走ってきたんだ!」
「すまねえ!さっきの事は全面的に俺たちが悪かった!なんでもする!だから!頼むから助けてくれ!」
アレスは恐慌状態であった。アレスの様子を見て冷や汗をかく一同、だが、やはりこの男は違った。
「助けてやるからそこまで案内しろ、フィルアニア人。」
テツヤだけは顔に笑みを浮かべていた。




