2話 探窟
遺跡は前進キャンプから一時間程離れた場所に存在していた。大きな建物に見えるが、地下にも階層が存在するため、実際は見た目の何倍も大きい。
見た目はコケやツタに覆われた、いかにもな古代遺跡である。
鞍馬達ブラックアイの班の他に、フィルアニア人冒険者の班が1つ、合計11人で調査を開始する。
今現在この遺跡には、鞍馬達、フィルアニア人冒険者の班、そして昨日調査を開始したきり帰還していないフィルアニア人冒険者の班、計15人の人間がいることになる。
遺跡というからにはかつて人間に似た生物・文明の生活拠点であり、迷路の様な作りをしているわけではない。
帰還した班の証言通り、天井は高く、道幅も広いため、班内で大柄なマサトが大きな武器を振り回しても問題がない様だ。
昨日既に調査が終わったと言われている一階を素通りし、階段があったと言われる場所に向かうも、そこはただの広間であった。
「話が違うじゃねえかよ。階段はどこだ!」
フィルアニア人冒険者がヒートアップするが、テツヤは冷静である。
「恐らく、自分達が明日探窟するまで、俺らが端まで調査しないための時間稼ぎだろう。汚ねえ真似をしやがる。」
フィルアニア人冒険者の班に声をかける。
「なぁ、11人でバラバラになって階段を探さないか!見つけた奴は大声で人を呼ぶんだ。自分達だけってのはなしにしようぜ!」
「誰がブラックアイ野郎と手を組むかよ。臆病が移るぜ!」
「まぁ待て、彼らの作戦は合理的だ。乗ろうじゃないか。」
鞍馬達を敵視する大柄なフィルアニア人冒険者を諌めたのは、彼らのリーダーらしき男だ。
「階段を見つけるまで手を組もう。俺はアレス。こいつらのリーダーだ。」
アレスは、革の鎧にブロンドヘア、髭面、腰に長めの剣を差した、冒険者によくみかける風体の男だ。
残りは先ほど鞍馬達に暴言を吐いたスキンヘッドの大男と、恐らく非戦闘員であろう軽装の男性と女性1人ずつ。
スキンヘッドの大男が鞍馬を見て声を発する。
「おいおい、誰かと思えばギルドで見かけた草むしり野郎じゃねえか!最近見ねえから野ウサギにでも殺されたと思ってたぜ!ここには薬草は生えてねえから、迷子だったらテントに帰れよ!」
「コケは、漢方にもなるぞ……。」
大男に威圧された鞍馬は、なんとか言葉を返す。
「おいなんか口答えしやがったか?てめえの耳をちょんぎってギルドに持ってってもいいんだぜ!」
鞍馬に歩み寄る大男の膝を、チカが思い切り蹴る。
「グァア!何しやがるクソアマ!いてえ!うおお!」
大男の膝は、あらぬ方向に曲がり、大男は膝をつく。
「俺らとケンカするか、今すぐテントに帰るか、階段を探すか今すぐ選べ。」
テツヤが凄む。
「わ、わかった。これ以上ケンカする意思はない。階段を探そう。」
アレス達はしばらく話し合い、大男は、枝切れを松葉杖代わりに前進キャンプに帰還し、残ったメンバーで探索を続けることにしたようである。
「汚ねえブラックアイ野郎、覚えてやがれよ!」
大男は、捨て台詞を残して去っていった。
「チカ、さっきはありがとう。」
鞍馬は、階段を探しながらチカに礼を言う。
「地球人をバカにしちゃってムカつくし、ライバルは減った方がいいからね。あんたもよく言い返したわ。ガッツあるじゃん。見直したよ。」
「ありがとう……。」
嬉し恥ずかしで、苦笑いする鞍馬。
「おぉい!あったぞ!階段だ!」




