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異世界残酷冒険物語  作者: モンゼツナカチョー
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2話 出発




翌朝、日の出前に食事やテントの撤収等の支度を済ませ、日の出と共に出発。


他の全10組程のパーティーも散り散りに出発する。




ここから先は獣道の様な道なき道を曲線的に進むことになる上、目的地であるスラム遺跡は地下に伸び、地上に高さのある建物ではないため、前日に地図読みを念入りに繰り返し、現在もソンヒョンと鞍馬は地図を広げているが、ベースキャンプの付近の川下に行くだけとは言え、それでもピンポイントな目的地にたどり着くのは難しい。




リーダーのテツヤとしては、遺跡調査のアタックの順番が少しでも早くなる様、可能な限り早く到着してパーティーとしての優秀さをアピールしたい様子で、頻りに休憩を要求するソンヒョンを咎め、ユミコ辺りの体力に自信のないメンバーをしきりに急かしていた。




地図と、磁力を持つ石を針に通した即席の方位磁針を頼りに 歩き続けると、洞穴を発見した。


先頭を歩いていたマサトが足を止める。


つられて全員足を止めると、洞穴やその周辺を見渡した。


「ゴブリンの巣だ。」


マサトが呟く。


洞穴の高さと幅は3メートル程で、入り口付近に装飾が施されてあった。


装飾は工業的なものというよりはむしろ、何か部族の呪術のような原始的なものであった。


入り口からは奥行きはわからないが、巣ということもあり、ある程度の深さが予想される。



入り口付近に見張りは見つからなかったが、その代わりに特異であったのは、巣である洞穴の入り口前に男が倒れていた。


男の生死は不明であるが、足を縄で繋がれている。


エリナがとっさに近付こうとすると、テツヤが制止する。


「待て、あれは罠に違いない。ゴブリンには罠を仕掛ける知能がある。無視して目的地に急ぐぞ。」


「ちょっと待って!助けないと!まだ生きてるかもしれないよ!」


「ああやって誘い込んでるんだよ。あの巣の中には手練れがいるかもしれねぇ。俺の見たことある巣に比べて入り口の細工もよくできてる。」


「それならなおさらでしょ!私たちの仕事に周囲の安全確保も含まれてるはずよ!」


「後から来たやつか明日以降のパトロールでやるだろ。できるだけ急いで目的地に着きたいんだよ。」


「15分もかからないよ!それにここはリージョンの中なんだから何かあるかもしれないし!ここのゴブリンが夜テントに襲ってくるかもしれないのに!」


「知るかよクソ女!フィルアニアとかいう訳のわかんねえ世界にバケモノの巣がある。それだけだろうが!」


「なんであの人を見捨てるの?人でなし!」


いつの様に口論になる二人だが、今日は元より期限内リージョンの中でピリピリしていたのもあって、かなりヒートアップしている。


「わかった。俺が中の様子を見てくるから二人とも落ち着いてくれ。」


見るに見かねたマサトが提案すると、テツヤも我にかえった様に冷静になった。


「……そういうことなら、俺とマサト・グィホン・チカで偵察に行く。15分で戻ってくる。エリナは残りのメンバーのお守りと、入り口に近付くゴブリンを駆除しろ。ユミコはあそこに転がってるやつを見てやれ。」


そう言って3人を連れて入り口に近付いていく。


マサトは左手に持つ松明に火を付ける。


代わって先頭に立ったグィホンが慎重に入り口の前を通った時、こちらの方を振り向いて腕で丸の形を作ると、ソンヒョンが入り口まで走り、男を担いで戻ってくる。


「すぐに医療班のいるキャンプに連れていくから安心してください!あなたは助かりました!」


担ぎながらソンヒョンが声をかける。


男は虚ろな表情で、何かを主張している様だが舌を抜かれていて話が通じない。


そこで男は地面に指で文字を描く。文字の読めるソンヒョンが音読していく。


「に、げ、ろ、、、な、か、の、ご、ぶ、り、ん、は、つ、よ、い、」


「逃げろ、中のゴブリンは強い?」


「どうだ?連れ戻しに行った方がいいか?」


ソンヒョンが聞くと、エリナは答える。


「もうだいぶ奥に行ってるし無理よ。足手まといになるだけだし、合流する前にゴブリンに出くわすかも。」


「入り口から声をかけるとか?」


「一斉に外に出てきちゃうわよ。大丈夫、テツヤ達は強いし、もししばらくして帰ってこなかったら、ベースキャンプに戻って救援を呼びましょう。」


「そうするしかないか……。」





しばらく流れた気まずい雰囲気を嫌い、鞍馬はエリナに声をかける。


「エリナって頼りになるね、正義感も強いしさんだね。」


「正義感だけじゃないよ、目的地を急ぐテツヤの方針に反対なだけ。」


「なんで?他の隊より早く着かないとアタックの順番が遅くなるんだよ?」


「それよ、戦いが得意じゃないメンバーを3人も連れて、誰も足を踏み入れたことないような遺跡に入りたくないの。いの一番に入るのはどう考えても危険よ。私はイースタンプロミスのメンバーを危険に晒したくないの。」


「なるほど!それで何回も休憩を取ろうとしたり、ペースを遅めるようにしてたのか。」


「二人もわかってたの?」


ソンヒョンとユミコにも問いかける。


「そういうこと。直接言ったってテツヤは聞きっこないから。」


「私は単純にキツかっただけなんだけど。」


ユミコの答えに、緊張が少しは解ける。


男の容態も、楽になってきたようだ。応急手当はしたから、今日中に治療を受ければまず間違いなく助かるだろうという。




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