2話 焚火
現在構想が終わっているのは4話までで、4話で一章が完結する予定です。その先もありますが、とりあえずそれまでお付き合い頂ければ幸いです。自分では、4話が1番面白くなると思います。
行軍中鞍馬は、何度か出くわしたゴブリンや獣を先頭を歩くマサトが容易く凪ぎ払う様を目撃した。
体格やキャラクターに相応しいと言うべき筋力で1メートル半はあろう大きな戦闘斧を振り回す姿に驚き、同時に不意討ちではない一対一の局面での敵との戦闘が未経験であることに不安を感じた。
休憩を挟みながらも丸1日森の中を行軍し続けると、小さな村に到着した。
簡単な木製の柵に囲まれた、名前をカーラの村といい、建物は凡そ10戸程、全てはシーロンの貧民街で見るような、すきま風に悩まされそうな質素な木造に、茅葺き屋根の佇まいであった。
村に到着すると、村の中央の広場の様な場所で他のメンバーを休ませ、井戸の水を汲ませている間にテツヤが宿屋に当たる建物に入り交渉をするが、満室につき追い返された様であった。
仕方なく、宿屋に幾らかの金を払い村の外れの開けた場所にテントを張り、そこで一晩明かすことにした。村の中のテント場にてテントを張るには金がかかるが、井戸も近く柵の内側であるため少しは気を楽にして眠りにつける。
一旦柵の外に出て拾い集めた長めの棒きれで三角柱、いわゆる厚い三角おにぎりの様な形の骨組みを2つ作るとそれに鞍馬とソンヒョンが持参した布をそれぞれ被せ、その布から伸びる紐を大きめの石に結び固定し、テントの周りに溝を掘れば、軽い雨風を防ぎ熱を逃がさない簡易なテントが2つ出来上がる。
高さはそれぞれ腰ほどの物と肩ほどの高さであり、決して大きいと言えないサイズのテントに男女に別れて寝るため、かなり窮屈になるが、身体を密集させて寝ることにより隣の者の体温でかえって暖を取ることができる。
テントを張り終え、村の酒場に行き食事を取ると、辺りは暗くなっているため、テントに戻り床に着く。
周囲には鞍馬たちと同じく宿屋から溢れた冒険者のテントが幾つか並んでいた。
鞍馬とソンヒョンは両端に寝たが、羊毛の寝袋とは言え肌寒くてなかなか眠りにつけなかった。
鞍馬は寝袋から這い出ると、テントから出てまだ火の残る焚き火の近くに暖を求めた。
しばらく暖を取っていると、グィホンがモソモソと焚き火の方に向かってきた。
「眠れないか?」
「あ、ああ。」
鞍馬が答える。
「寒さか、それとも明日からの不安かどっちだ?」
「両方、かな。」
「俺はゴブリンを一頭不意討ちで殺しただけだから、さっきのマサトの戦いをみて正直ビビってる。」
「それなら心配するな。戦闘は俺達がやる。お前らは荷物持ちと野営の準備さえやってくれれば、後は得意の薬草収集でもしててくれればいい。最低限自分の身の心配だけしてろ。」
「始めから、戦闘要員じゃなくてそっちの担当だとは言われてたけど、改めてそう言われると心強いな。」
心からの言葉であった。
「ゲームと違って、思いテントに食材、寝袋に鍋に食材、色々と必要な物が多いんだ。それに今回の仕事は失敗させられない。わかってくれれば嬉しいぜ。」
「みんなわかってると思うよ。」
「ならいいんだけど……とにかく明日も夜明けから1日歩きっぱだから早く寝てくれ。こんなんで疲れがとれるのかわからないけど。」
グィホンは苦笑しながらテントに戻る。
「なあ鞍馬」
「なんだ?」
鞍馬もテントに戻り、寝袋に身体を入れながら答える。
「俺達、なんでこんなことしてるんだろうな……。」
鞍馬は、しばらく答えを探したが、結局何も返答せず、浅い眠りについた。