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異世界残酷冒険物語  作者: モンゼツナカチョー
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2話 共生


シーロンの街に帰還すると、鞍馬とエリナはコミュニティの家に帰る一行から離れてギルドへ向かった。


鞍馬はこの二週間、デイビーと出くわすリスクを避けるためにほとんど街中をうろつかなかったため、ギルドへ行くのも二週間ぶりである。


周りを十分に確認しながらギルドへ向かい、身分証とゴブリンの耳を報酬受付に提出すると、受付の女性にサインを貰い、銅貨30枚を受けとる。




エリナが実入りのいい仕事を探すのを終えるのを待ち、家に帰る。




帰路にて、明らかに無口になった鞍馬を気遣い、エリナが声をかける。


「一人前の冒険者になったって言うのに、随分暗いわね。」


「ああ、直接命を奪って生活するようになって、完全にこっちの世界に染まっちゃった気がして。」


「他の生き物の命を奪って生活するのは地球でも同じよ。私も最初は抵抗があったけど、鶏肉を食べるために鶏を絞めるのと同じことじゃない?」


「ゴブリンは異種とはいえ、道具を使えるし、高い知能を持っている。動物と異人と人間、線引きというか、折り合いがつかないんだ。恨みのない人間を殺して自分が生活するのは、兵隊と同じだ。」


「そんなこと気にしてたら終わりよ。現にあなたは……。」


エリナは口論が苦手である。反対意見を突きつけられるとすぐにヒートアップする癖がある。


鞍馬は、エリナがいいかけた言葉が、セーラ達を見殺しにしたことなのかもしれないと邪推し、押し黙る。


「なんでもないわ、そういう意味じゃないの、ごめんなさい。」


家までの10分間の帰り道、二人はそれ以上言葉を交わさなかった。




コミュニティの家は、貧民街の外れ、ドブ川を渡ったシーロンの街の城壁内で最も地価の低い地域にある木造一軒家であり、メンバー10人が寝泊まりしているだけあって多少の大きさのあるが、周りを城壁と他の建物に囲まれているため日当たりも悪く、湿気が高く、木材は傷んでいる。


家の前に着くと、鞍馬とエリナは時間をかけて靴やズボンについたドロを落とす。


屋内は土足が原則である。これは単に郷に入ってはの精神ではなく、ジメジメした床を素足で歩くのは気分が悪く、浮いた釘などから足に傷を負えば病気に発展しかねないからである。


又、重い得物や防具、仕事に必要な保存食や地図、傷薬に戦利品等の多くの荷物を抱えて出入りするため、玄関に固まって一々ホールの多いブーツや防具を着脱するのは非常に不合理が多いためである。




屋内に入ると、まず乾燥室、といってもほとんど湿気は外と変わらないため、実質的な役割は倉庫や武器庫の様なものである、に向かい、装備を外す。鞍馬は胸当てと肘当て、ショートソードを自分のスペースにおく。




「ゴブリンの血がついているから後でしっかりと磨かないとさびちゃうわよ。」




エリナはそう言って足早に乾燥室を去る、鞍馬の手に再びあの感触が甦り、手が震える。二週間の訓練でわかったことだが、エリナは無神経なきらいがある。


ストレートな物言いはありがたく、指南役としては優秀なのだが、コミュニティ内でも他のメンバーと口論になることも非常に多い。




手の震えが収まるのを待ち、装備を外し終えると、自室へ向かう。自室にて、室内着のチュニックと室内履きの靴に履き替える。街の外に出掛けるときの長袖の重装備や、舗装されていない道や泥の中を練り歩いてきたブーツは汗や汚れが多く、また室内で着用するには暑苦しい。


洗濯物はを所定の篭に入れると、リビングルームへ向かい、夕食の手伝いをする。完成を待ち、ユミコ、エリナ、ソンヒョンと食事を済ませると、仕事に出掛けている他のメンバーの帰還に備えて、彼らの食事の下拵えや酒の用意をする。



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