トレモロ
書きかけの原稿
読み返しては墨をいれ、字句の間違い探しをすませたところ
今日はここまでにしよう
そうして床についた
この作業にどんな意味があるのだろう
字句を並べて話を描いて、それが誰かの心に響くのだろうか
こういう現実があることを、受け止めてくれるだろうか
首をかしげ、自分だけで頷き
閉じた目玉をさらに上向かせ、そしてまた首をかしげる
縮緬皺のような波が心一面を覆う、ざわざわと
風向きが定まらず、波がそこいらで重なり合った
ハッチングで埋め尽くされた水面に横たわる帯
潮目であったり、風の当たり具合であったり
海上タクシーが真一文字にそこを突っ切っても
縮緬のような皺がすぐに寄る
大きな引き波がきても、皺は消えずにうねりを漂う
自分の船も、それを消せはしないだろうな
風を吹かせねばよいのか
風を呼び込まねばよいのか
そうすれば皺が寄らないのか
答がみつからない
なのに、みつけようともがく自分がいる
心底おもしろがっている自分に出会えるなら
もっともっと苦心して言葉を選ぶだろうに
さて、陸へ向けて吹く風に導かれて帰るとしよう。
答のみつからぬことを考えるのはやめて、ゆっくり眠るとしよう
昂ぶったままでは、自分の言葉をみつけられないのだから
言葉の海から、これぞという言葉を一本釣り。それが創作の面白さかもしれません。
気持の中の海原を、実際の海に近づけてみました。
人それぞれですが、沖から港へ戻るときによく思い出した曲。
「ジャニーギター」 アントニオ古賀
さまざまな奏者がいるなかで、この奏者の演奏を聞くと素直になれます
どこが違うのでしょうね。
釣り上げられてイケスで怯える魚が、そう仕向けたのかもしれません。
you-tubeに収録されていますので、皆さんもお試しあれ。