ハロウィンナイト
最後まで、どのジャンルに入れたらいいのか悩んだ作品でした;;ホラーにしては怖くないし、コメディにしては笑えないし…(←
最後までお読み頂けましたら幸いです。宜しければ、感想やご意見、お寄せ頂けましたらば光栄です。
『!』
突然の停電。室内は再び闇に閉ざされる。今の今まで白々と照らされていた室内に慣れていた目は、それを受け入れきれない。ほぼ完全な闇だ。……まあ、一瞬のことではあるが。
ガタンっ!
『ひっ?!』
物音と、誰かの小さな悲鳴。――そして、青白い光が点灯し――
『ギャアァアア……ッ!! きゃあああアアァァ……』
獣が吠えるような低く不気味な声。次いで、絹を引き裂く女の悲鳴。大音量。
「きゃああっ!」
みさは思わず耳を押さえてしゃがみ込む。理奈はみさと共にしゃがみ込んで、何とか顔だけを巡らせて辺りの様子を伺う。
「こ、晃……何なの?」
晃もかなりビビっていた様子だったが、すぐに気を落ち着かせるように深呼吸。青白い光の方に目をやる。
「大丈夫、テレビだよ。洋画チャンネルになってるんだ」
青白い光の正体を暴くと、壁際に向かい、電気を付ける。再び室内が照らし出された。
『!!』
テレビの前にはソファ。そこに、リモコンを脇に置いてリタが座っている。
そして、三人に向き直り――笑った。
『〜〜〜〜っっ!』
その光景のあまりの異様さに、リタを受け入れていたはずの二人も、言葉にならない悲鳴を上げそうになった。
「ちょっ……! リタちゃん!」
震える声を張り上げたのはみさ。……受け入れ早いにも程がある。
「テレビを見るときはお部屋を明るくしてなきゃだめじゃない!」
頑張っているが、震える声は隠せない。みさの肩を抱くようにして寄り添い、理奈も調子を合わせる。
「そ、そうよリタちゃん……目が悪くなるわ」
言いながら、リタの傍に置いてある温かいポップコーンを手に取る。
……理奈の言葉には突っ込んだ方が良いのだろうか……ふと疑問に思いつつも、晃は無言のままソファに歩み寄る。大胆にもリタの隣にどっかりと腰を下ろすと、テレビのチャンネルを変えた。
「……ハロウィン特集ばっかだな」
どこか遠くを見るような目で、テレビを見ながら呟く。
「なあ」
不意に問いかける。
「な、何?」
あまりに静かな晃の口調に、半ば以上恐怖の色を滲ませた理奈が答える。
照明を落とした室内で、ポップコーン片手にソファで映画鑑賞。ハロウィンナイトにホラー映画。……こだわる性格らしい。
「うさうさに聞いてみないことには何とも分からないだろうけど……この現実世界で、今のこの状況で……魔法なんて使えるのか……?」
静かだが、戸惑いの色を含んだ晃の質問。
『………………』
理奈もみさも、答えが出せない。
「か、考えても仕方ない、な……」
努めて冷静を装いながら、晃はチャンネルを切り替える。
ピンポーン
『!!』
またしても三人を襲う衝撃に、そろってびくっと身を震わせる。
「お、お迎えだろうな……もうそんな時間か……」
いち早くショックから立ち直った晃は、玄関へ向かう。ドアを開けると、予想通りの人物が。
「遅くに失礼……リタ、迎えに来たよ……」
屋敷が不気味とさえ思える声で、リビングにいるリタに声をかける。……無論、人形に、だ。
「あ、あの……屋敷さん」
勇気を振り絞った晃が問う。
「何かな?」
「あの、娘さんって、人形ですよね……?」
「私の娘だ」
真顔で答える屋敷。
「………………」
「リタ、寝る時間だよ。お暇しよう」
『はいパパ!』
『?!』
聞き慣れない可愛らしい声に、三人は奥に――リビングに目を向ける。
そこに居たのは、何とも愛くるしい一人の少女。外見は人形のリタにそっくりだ。少女は軽やかに玄関までやってくると、真っ直ぐに屋敷の腕に飛び込んだ。屋敷は軽々と少女を抱えると、少女に問う。
「良い子にしていたか?」
「うん! すっごく楽しかった! ありがとう!」
少女は花が咲くような笑顔で三人に向かって礼を言う。三人は、唖然と見守るしかない。
「うむ……大変世話になり、感謝する」
堅苦しい挨拶の屋敷。屋敷はそのまま踵を返すと、夜の闇の中に、文字通り、消えて行った……。
取り残されたような三人は、しばしその場から動けないまま。
「どうしたんですぅ? みんな……」
可愛らしい聞き慣れた声で、三人は我に帰る。
「あ、ああ……」
どう説明したものか、晃も理奈もみさも言葉に迷っていると、それを待たずにうさうさがさらに問うた。
「一体誰とお話してたですぅ?」
「え? 誰って……」
晃が言いかける。そこに、みさが身を乗り出して答えた。
「お人形のリタちゃんと、ハロウィンパーティーの準備をしてたのよ! ほら……って、……え?」
『…………え?』
みさの視線を追ってリビングに向けた計六つの目が凍り付いた。そこには、
――何もなかったのだ。
「ハロウィンパーティーは今日のはずですぅ……日付、間違ったですか?」
『……………………』
三人は顔を見合わせ、ギシギシとした動きで時計を見やる。
午前六時。
気付くと外は薄明るく、さらに気付くと全員パジャマ。
そして付けっぱなしのテレビからは、『本日三十一日はハロウィン』のアナウンス。
呆然と立ち尽くす三人と、不思議顔のうさうさ。
――かぼちゃのランタンが嗤っている。ゆらゆらと、キャンドルの灯りに照らされて――。
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