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6. 竜の娘 1

 今日も逝ってしまった。ここで魔物を育てても最後は無惨に殺されるだけ。極希に帰ってくることもあるがそれでも満身創痍だ。癒すための薬やら魔法を使わなくてはいけない。その費用はギルドから出してもらえることは少ない。珍しい魔物のときだけだ。

 私も治癒術は多少使えるが大半は薬に頼ってしまう。だから私の手元にはお金が残らない。日々のご飯も魔物達の為の餌の中から食べられるものを少しずつもらうだけだ。

 きっとジークフリートが居なかったら私は町で生きるのをやめていただろう。ジークフリートだけが私の心を癒してくれる。彼が大きくなったら山奥でひっそりと暮らそう。

 私の人生は生まれたときから波乱万丈だった。竜の巣で見つかった子供が私らしい。親が誰なのかわからないし、なぜそこにいたのかも不明だということだ。そして同じ巣にいた幼竜がジークフリートであった。兄弟のように育った私たちは離れず、私たちを見つけた冒険者は二人とも町に連れていったそうだ。

 結果は町に両親がやって来て町は跡形もなく破壊された。そして私たちを巣へと連れ帰った。このときの記憶は私にもうっすらとあり、炎で輝く町が綺麗だったのを覚えている。私にとっては両親の炎だったので怖くはなかった。

 そしてちょっと時が過ぎ、私も少し大きくなった頃、私たちの巣に大量の人間がやって来た。巣の外で両親は応戦したが、次第に巣から引き離されて私とジークフリートは連れさられた。

 後に聞くところによると止めは刺せずに逃げられたようだった。永遠の別れかとそのときまでは思っていて泣いていたが、それを聞いて将来、大人になったら両親を探しにいこうと思っていた。

 しかし、その時点では言葉や習慣を人の社会に馴染まないといけなくなり、そんなことをしてる暇もなかったし、何も持ってなかった私は周りにされるがままとなっていた。

 私とジークフリートは結局巡業ギルドに買われた。見世物小屋の展示のひとつとしてだ。ジークフリートが入る大きな檻に私も一緒に入れられて町から町へと旅をして行った。餌はもらえたが檻の外に出ることは許されず、旅の景色と私を見にきた好奇の人しか見ない日々が続いた。

 時が過ぎるにつれてジークフリートは大きくなっていく。すると窮屈な檻も新調し、大きくしなければならない。そして餌の量も格段に増えた。それは見物料だけでは賄えないほどとなり、それが元で団長は新たな商売を思いついた。

 竜の背中に乗るというものだ。話は簡単で私のそばにいればジークフリートは大人しい。だったら背中に乗っても大丈夫だろうと。ジークフリートは最初は嫌がるそぶりを見せたが私が宥め、それは始まった。

 この飛竜ではなく伝説に近い存在の竜に乗れるとあってどの町でも盛況であった。そしてこのとき初めて私たちは檻の外に出ることができた。そのときだけでも錆び臭い檻の中から出られたことは気分転換にもなったし、ジークフリートも翼を伸ばすことができて気持ち良さそうだった。

 しかし団長は成功に気を良くして更に儲けようと考えたようだ。飛んでいる竜に乗る。そういったアトラクションだ。二度乗る人は少なかったらしく一年目で一回りして二度目となった興業の町では売上ががた落ちになったのが原因らしい。

 しかし幼竜の頃から檻暮らしのジークフリートは飛ぶ技術は持っていなかった。最初は私が教えようと頑張っていたが上手くいかない。そこで業を煮やした団長が巡業ギルドの優秀な調教師に飛ぶ訓練を頼んでいた。

 その調教師は厳しい人で訓練中は私とジークフリートは引き離されて、ジークフリートが寝床に帰って来るときはいつも私に育て方が悪いと辛く当たり、罵倒した。結果的にジークフリートは飛べるようになったがその調教師の人は訓練中の事故で死んでしまった。実際に魔物の調教師の死因としては訓練中の死というのは珍しいものではなかったのでうやむやになった。多分、団長が裏から手を回したんだと今だから思う。

 その理由もその事故の少し前から始めていたジークフリートの背中に乗って飛ぶというのが大盛況だったからだ。一回につき金貨一枚という値段だったが日の出ている間はお客が途切れることがなかった。

 稼ぎ頭になったそのときから団員達の私たちの扱いは腫れ物に触るようなものになった。檻の錠も外れて外出も自由になり、飛ぶ訓練と称して町の周りを飛び回って、ジークフリートの適度な運動と食事をすることもできた。

 結果的に食費が浮いて団長も喜んでいたし、このときが一番楽しかったかもしれない。

 これまでの経験で人間の社会を理解してきたから逃げようなんて思わなかった。まだ私もジークフリートも体が成長しきっていない。ならば今はここで守ってもらい大人になるまで待つのだ。

 町から町への移動も私だけ別行動になって、余った時間は散策を楽しんでいた。人の社会から離れるこの時間が私とジークフリートにとって至福の時だった。そんな旅をしてたとき、次の町の手前で日も落ちてしまい野宿することになった。普段なら野生の魔物もジークフリートに怯えて近寄って来ないから見張りも立てずに寝るのだが、その日は違った。




 ジークフリートが寝ようとしない。何か森の奥を見つめており、唸っている。そしてジークフリートが見つめていた方向から明るい何かが飛んできた。それはジークフリートがとっさに広げた翼に当たり霧散したが、それを合図のように四方八方から武装した人の集団が現れた。話し声も聞こえる。


「お頭、こいつが目当ての竜かい?」

「そうだ。こいつを仕留めて売りさばけば一生遊んで暮らせるぞ」

「でっ、でも、魔法が効かなかったぜ。倒せるのか?」

「みんなでかかれば倒せるさ。それで生きて帰ればお宝だ」


 私はジークフリートにくわえられた。そして目の前の集団に向かってしっぽを振り回す。

 集団の前の方が吹き飛ばされた。しかし後ろの方からは魔法と矢が飛んできてジークフリートに当たる。ほとんどが鱗に弾かれるが、鱗の隙間に刺さった矢もあり、その部分からは血が流れている。抜いてあげたいがジークフリートにくわえられているのでなにもできない。

 雷撃が刺さった矢に当たりジークフリートが唸るが、私を落とさないように堪えていた。下からは武器を持って襲いかかって来る人もいて、前足としっぽで応戦するが多勢に無勢だった。私をくわえている性でブレスも吐けない。

 それでも無理矢理に飛び上がり逃げようとする。翼で起こされた風は軽い者を吹き飛ばし、魔法と矢が止んだ。その隙に飛んで逃げたが上手く飛べずにすぐに墜落する。私は背中に乗せられたので届く範囲にある突き刺さった矢を抜き、治癒術をかけ続ける。

 後ろを見るとさっきまではなかった松明の灯が見え、こちらに近づいてくるのがわかった。罵声も聞こえる。さっきの奴らが追ってきているのだ。

 ジークフリートの息を吸う音が聞こえた。周りの魔力が集まって来るのがわかる。そして炎のブレスを彼らめがけて吐き出した。昔見た両親のブレスみたいな炎が当たったものを根こそぎ消し炭にするほどの威力はなかった。だが下草や枯れ葉に火も移り、彼らは炎に包まれていた。

 炎は燃えに燃えて私たちの方にも迫ってきている。私はジークフリートに出来るだけの治癒術を行い、彼も力を振り絞り炎から離れるように空を飛んだ。

 滑空のように飛んだだけだが炎の脅威はなくなった。他にも追っ手がいるかもしれないと気を張りながら森のなかを進み、明け方には森を出た。少し森から離れるとまだまだ黒い煙がもくもくと立ち上っていた。

 ジークフリートの傷も飛ぶのに支障がないくらいには治ったので、そこからは目的地の町まで飛んだ。いつもよりスピードは出なかったが早く町で休みたかったので迂回もせずに一直線だ。しかし目的地の町で私たちを待ち受けていたのは武装した住人だった。

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