表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/11

4. 冒険者ギルドの事情

 パーティーメンバー募集の貼り紙を貼りながら思う。魔術師の募集が半分以上を占めるのはいつものことだが、使えるように努力はしないのかと。

 しかも火と水が使える者を優遇すると、逆に言えば風や土の魔法は必要ではないからパーティーメンバーにはいらないということだ。確かに野営で一番必要になるのはこの二つだ。特に水は使えれば荷物が格段に減るし、生水を飲んで体調が悪くなることも減る。

 しかし一方でこの二つの属性をもつ正当な魔術師は少ないのが現実だ。属性の相性が悪く、派生魔法が蒸気魔法という使いづらいものになるし、それぞれを上級まで伸ばすのが手間がかかる。だったらパーティーメンバーの中の誰かに火と水を別々に覚えてもらえばいいのではないかと私は思う。

 パーティーメンバーの募集が偏ってる現状からの流れでそんなことをギルドの会議で発言すると、ココツの冒険者ギルドマスターのヨハネス・アドモンは


「ディアナ、昔は私も考えたことがあった。危険も減るし、遠征が楽になってギルド員の稼ぎも増えるから良いことだらけだ」

「ならギルドで魔法を教えてみませんか?」

「しかし、問題はたくさんある。誰が教えるのか? 魔術師ギルドに依頼すれば教師を派遣してくれると思うが、その費用はどうするのか? それぞれの魔法の適性もある。講義に出て適性がなかった場合のフォローが必要だ。そして教えるということは学院ギルドとも交渉しないといけない。勝手にこんなことをやると利益の搾取だと言って難癖つけられるからな。最悪は労働者組合で労働裁判だ。学院ギルドの卒業生はいろんな所に多いから勝てる気がしない。それにうちの本部からの圧力もある」

「学院ギルドはうちからも戦術や魔物の生態系での調査で協力してるじゃないですか。そこの対価として考えれば」

「少し融通と説得力のある意見が必要だな。無理とまではいかないが難題が多い。それでも挑戦するか?」


 問題が多いことは理解した。しかし、少しだけ冒険者のパーティーの質が変わるかもしれないと思うこの提案は挑戦してみたいと思う。


「挑戦します。もし上手くいかなかったら」

「上手くいかなかったときのことは考えるな。ただ難しいと思うが要求することはある。直接の利益は出さなくていいが損は出さないようにしろ。上手くいけばかなりの利益は出る。そして経費を賄えるくらいの収入を稼いでくれればリスクも小さくなるからな。あとは他ギルドとの関係に注意しろ。特に学院ギルドだ。数年前に孤児に読み書き、算術、魔法を教えていた神殿長が、学院ギルドからの圧力で左遷されたって噂がある。だからあそこの機嫌は損ねないようにしなさい。君は学院の先生とも懇意にしてるだろう。それを上手く使ってくれ」

「わかりました」

「リーダーはディアナで大丈夫だな。支部内で三位の君なら他のギルドでも軽くみられないだろう。それでは辞令をだそう」


 そう言ってヨハネスは手元の羊皮紙に辞令書を書き始めた。そして書き終わると


「それではココツ冒険者ギルド事務局長ディアナ・ゴードンに辞令を言い渡す。冒険者の為の初級魔法講座の開設準備及び運営の責任者に任命する」

「拝命致します」

「ディアナ・ゴードンの成功と冒険者ギルドの繁栄に祈りを捧げる」


 最後にヨハネスの組んだ手から私に向かって光が飛んできた。これは光の上級魔法、祝福の光というもので運が良くなるらしい。継続時間も効果の幅も確かなものではないがおまじないみたいなものだ。

 その後も会議は続いたが、予算説明や、中期目標、活動拠点をうちの支部にしている人の推移等の議題だった。それらは頭半分で聞きつつ、どのように話を進めるか考えていた。

 会議が終わると通常業務に戻る。まずは講義を開設してどれくらいの需要があるかを調べようと思う。それには受付に来る冒険者達と話さなければいけないだろう。そして何人受講する意思があるのかをまとめてそこから交渉かな。三日ぐらい聞いてみよう。



 そして三日が経った。この町を拠点にしている冒険者の半分には声をかけたつもりだ。遠征で町を長期に渡って離れているパーティーもあるが、そんなパーティーは意外と魔術師の仲間がいることが多いので、魔術師を必要としているパーティーの八割以上から意見を集められたんじゃないだろうか。

 結果はパーティー内から一名か二名という返答が多かった。しかし、お金もそんなに出せないという。パーティーで集めて銀貨三十枚から四十枚だそうだ。これを聞いて十人受講者がいれば金貨二枚は捻出できるのでこれをもとに魔術師ギルドと交渉してみるか。

 学院ギルドも行かないといけない。こちらが先か。それとも魔術師ギルドと話を詰めて既成事実を作ってから行った方がいいのか。

 そうだな、学院ギルドに先に行こう。そうすれば魔術師ギルドに足元を見られないで済む。経費も安くなるかもしれない。



 二日後、私は学院ギルドを訪れていた。面会するのは副ギルドマスターだ。受付で案内された部屋に入ると、副ギルドマスターは丸い身体を柔らかいソファーに沈め、その隣には秘書の女性が立っていた。


「お久しぶりです。ご健勝そうでなによりです。ブルック先生」


 ブルック先生は私が中央学院に通うときに推薦状を書いてくれたこの町の学院の副院長の先生でもある。


「久しぶりだな。ディアナ。卒業してからの君の活躍を時々聞いておるよ。さて今回はどのような話かな?」


 昨日、面会依頼と共に簡潔な文書を付けたけど見てないのか。それとも何か腹に一物あるのか。とりあえず説明はしなければいけないようだ。

 まずは冒険者に魔法の需要があること。冒険者と魔術師がパーティーを組むと旅の野営や戦闘が楽になることを説明した。


「まあ、わかりきったことだね。それだけ魔法は便利だ。私たちも冒険者の皆さんには魔道具や薬の材料を取ってきてもらってますから協力致しますよ。無理のない範囲でね」

「それでは冒険者に魔法を教えるのに協力してください」

「ほお、冒険者に魔法ですか。それだとちょっと難しいですね。君も知っている通り魔法を教えることは学院でもやっています。しかし、高いお金を払って来ている生徒と身元のはっきりしない冒険者が一緒の授業というのは難しいのです。それに魔法を教える講師というのは半分以上魔術師ギルドから招聘しているというのが現実ですね。なので学院ギルドだけの都合では決められません」

「ええ、わかっています。ですから講師は魔術師ギルドに依頼して場所は冒険者ギルドと思っています。学院ギルドには見て見ぬふりをしてもらえればと思いまして」


 静かに黙認してくれと言ったがブルック先生は何か思い付いたようだ。


「それならばいい考えがある。公認の出張所という形にするのではどうだろうか。もちろん公認にするために少しお金がかかってしまうが箔は付くだろう」


 黙認するから金をということか。しかも断る口実が見当たらないな。断ったら潰しに来る可能性も否めない。唯一の考えは冒険者からそんなにお金を取れないことを説明するくらいか。


「それはよい考えですね。そうすれば学院ギルドが認めた講義ということで生徒も集まりやすいでしょう。しかし、こちらも予算が無限にあるわけではありませんのでご期待に沿う寄付ができるとは」

「寄付とは別だよ。これは費用だな。設立費用だ」

「でしたら最初の設立時だけかかるのですね。安心しました」


 寄付は別にということか、だけどそれならばやりようはある。ブルック先生はしまったという顔をしていたがその隙をつく


「金貨一枚と稀少採取品の優先的譲渡でいかがでしょうか?」

「安すぎる。せめて金貨十枚はもらわんと、しかも譲渡ということはそちらからも金を取るということか!」

「ですが先生、こちらもギルド員からどれだけの収入が見込めるかわからないのですよ。それにもし、上手くいくと森の奥から稀少なものが流通してきます。それを依頼という形で商会組合を通さずに譲渡すれば安く抑えられるかと」

「確実にもらえる現金も必要なのだ。本部を説得するためにな。それに上手くいかなかったら素材も手に入らずこちらが丸損じゃないか」


 別に上への賄賂以外に費用なんてないじゃない、という言葉は飲み込み値切るための算段をする。魔術師ギルドの方にも費用を工面しないといけないので金貨五枚以下に抑えたい。それでもギルド員からの徴収は金貨一枚越えるか。


「それでは火と水の二つの授業を考えています。なのでそれぞれに対して金貨一枚はどうでしょうか? もちろん稀少採取品の方も同じです」

「そうか、二つか。ひとつにつきそれならば金貨四枚半はどうだ?」

「それでは負担が大きすぎるのです。金貨一枚と銀貨三十枚でお願いします」

「そんな端数は面倒だろ。金貨四枚にしてやる」


 端数で細かく値切ろうと思ったがそれを封じられてしまった。先生は最初端数を言ってるのに


「すみませんが金貨二枚でこれ以上は難しいです」

「まあ可愛い元教え子の為だ。合わせて金貨五枚にしてやろう。だけど素材を市場価格の半額で買わせてもらうというのはどうだ?」


 金貨五枚にはなった。しかしもう一方の要求が大きい。いきなり半額とはなに考えてるんだ。この狸じじい。ただ利益に結びつける手段が簡単に思い付き何も考えないで言ってるんじゃないのか。だけど半額はやりすぎだ。


「半額ですと冒険者に支払う報酬が低くなりすぎです。そうしますと依頼の受注率も下がりますし、学院ギルドが恨まれてしまいますよ」

「いや、こちらもわかりやすいギルド全体への利益も必要なのだ」

「ですから稀少採取品の優先譲渡を提案したんですが」

「先程の設立費の割引分をこちらに少し融通してもらえんかね」


 額が違いすぎるだろ。さっき値切ったのは金貨五枚。割引で考えると売上にもよるけど一分にもならない。しかしそこまで言うなら割引にはする。少し恩を売っておくか


「それでしたら市場価格から一割引でどうでしょうか。それに割引ですと期限を決めなくてはいけないですね。例えば講義のあった季節と翌季節までとかですね」

「なんと、ずっとではないのか。それならばもっと割引してもらってもいいではないか」

「そうしますと際限がないので季節毎の契約としましょう。その代わりに二割の割引としますよ」


 餌は撒いた。多分気付いて乗ってくるだろう。自分の利にはさといから。


「それならば契約毎に設立金を支払ってもらうことになるぞ」

「構いません。それならば契約時の市場価格から二割を割引した額で、冒険者の依頼として掲示するので構いませんか?」

「そして契約時には金貨五枚を忘れるでないぞ」

「しかし一度に二属性の魔法を覚えるのは大変です。なので夏の始めの雨期に水魔法を、冬の雪の積もる時期に火魔法を教えたいのですが」

「すると設立金は半分ではないか。謀ったのか!?」


 別に騙してないよ。いくら着服する気なんだ。


「いえいえ、今後、上手くいけば他の属性の授業も開講致しますし、長い期間素材が安く買えるのでお得だと思いますよ」

「なるほど、そういうことか。だけど本部への支払いもあるのでもう少し設立費用を上げてもらえるか」


 ごうつくばりの爺め。一度に金が入らないと着服もできないからかな。


「では一属性のときは金貨三枚を出します。二属性は先程取り決めた金貨五枚で、それ以上は一属性につき金貨二枚でいかがでしょうか」

「しょうがない、それでいいだろう」


 金に目が眩んでるな。二属性目から金貨二枚の契約に気づいていない。それにお金の流れにもっと詳しかったらこの条件は受け入れないはずだが、言語と魔法を専門にする先生は気づかなかったようだ。


「それでは後日、正式な契約書をお持ち致します。魔術師ギルドとも協議しなければいけないので」

「わかった。魔術師ギルドとの協議も今回の私との協議のように上手くいくよう祈っとるよ」


 そうして先生は手を組み、私に光が飛んできた。私も今回みたいにごねられないことを祈ってる。


「ありがとうございます」


 お礼を言って部屋から出た。秘書に口出しもされなかったし、思わぬ利益も取れそうだ。結果は上々だろう。さて、明日は魔術師ギルドとの話し合いだ。

 今日はこれからギルドに帰って今日の話し合いの結果をまとめ、今後必要な契約書を準備しよう。

 そして明日の交渉の用意をしなくては。問題はどれくらいの費用がかかるかだな。それにお金だけじゃなびかないからその点も考えないと。

 そして私は夜遅くまで準備に時間を取られたのだった。



 翌日、私は魔術師ギルドの前まで来ていた。外観はわざわざ黒に塗った木材に蔦が巻き付いており朝なのに陰鬱なイメージを放っている。

 扉を開けると中から薬剤やお香等の入り交じった癖のある独特の臭いがする。いつものことなので気にせずポツンと置かれている受付の机に迷わず向かった。


「いらっしゃい。ディアナ。元気そうで何より」

「今日の受付はお前か。アリシア。久しぶりだな。そちらも元気そうで何よりだ」


 同い年で学院では同窓生だったアリシアが受付にいた。ローブを被っているので立っていると顔はわからなかったが、声で彼女とわかり、とりあえず社交辞令で返事をする。受付の椅子に座って彼女を見ると人形みたいな可愛い顔だが、人形のように目に生気がない。研究室の奥で籠っているイメージなので受付に彼女がいるのは珍しい。


「珍しいな。アリシアが受付にいるのは」

「今実験中。ディアナは私の顔がわかるの?」

「ここのギルドは室内が暗いから闇魔法のナイトビジョンを使ってる。だからアリシアの可愛い顔もはっきりわかるぞ。それで何の実験なんだ?」


 可愛いといっても何ら反応せずに考え始めた。闇魔法とか暗闇とかぶつぶつ呟いている。


「ディアナはなんで私ってわかったの? ローブの影で顔はわからなかったと思うのだけど」

「声だな。アリシアの声は綺麗な高い声で独特だからすぐにわかるぞ」


 また考え始めた。結局何の実験なんだろう。


「まだまだ実用的じゃないわね。課題も多い。認識阻害の魔法の研究をしているのだけど難しいわ」

「魔物を狩るのにいいな。上手くいったら試してみたい」

「ディアナはそう使うの? 私はアイントの悲劇をまた起こさないようにするって考えてるんだけど」


 どう結び付くのか。アイントの悲劇は少し前に冒険者が冒険者ギルドの受付嬢とその恋人を切り殺してしまった事件だ。優しく対応してくれた受付嬢に対して、その冒険者は俺に気があるって強く思い込んでしまった。そして彼女が他の男と親しげに歩いてるのを見て、裏切られたと思い男諸とも斬り殺したという事件だ。

 この事件後、冒険者に必要以上に親しくしないという規律もでき、受付ではあまり感情を出さないよう注意するようになった。


「相手の顔がわからなければ惚れることもないかな~って思ったんだけど」

「私はアリシアの顔がはっきりわかるけど」

「知り合いだからか、闇魔法の性か。原因はいろいろと実験しないと」

「それで受付なら私の用件も話していい?」

「そうね。奥で支部長が待っているわ。ついてきて」

「受付を空にしていいのか?」

「基本的に誰も来ないから大丈夫よ。それに扉が開いたらわかるようになってるから」


 そう言ってアリシアは奥の階段に向かった。私もついていく。階段を上ると二階の廊下は普通の明るさになっており、闇魔法を解くのを忘れた私は目が一瞬眩んでしまった。

 目を押さえている私を気にもせずに


「着いたわよ。支部長入ります」


 ノックをして先に入っていった。私も一息深呼吸して入る。


「失礼します。冒険者ギルドのディアナ・ゴードンです」

「よろしく。自己紹介は別に必要ないと思うが一応な。魔術師ギルドギルドマスターのハインツ・アルカナだ。久しぶりだな」

「あまりこちらへは来ませんし、そちらも冒険者ギルドに来ないですからね」

「それでは失礼します。やることがあるので」


 アリシアは私を案内すれば仕事は終わったとばかりに部屋を出ていった。残された私たちは閉められた扉を見て肩をすくめる。


「変わらないですね。彼女。多分さっきの実験の結果をまとめに行ったんですよね」

「研究熱心だから。それはギルドの利益に繋がるしいいことだ。それで魔法を冒険者に教えたいということだったな。それは俺たちにどんな利益をもたらすんだい?」

「冒険者が遠征できるようになれば市場に流れる素材が増えます。それは利益にならないでしょうか?」

「多少は安くなるし、素材も手に入りやすくなるだろうね。でもそれだけ?」

「もちろん費用は払いますよ。最初は火魔法を教える予定です。次に水魔法を教えます」

「その費用っていくらくらい? 魔術師に教えるなら銀貨一枚だけど基礎もなにも知らない冒険者ならもっともらわないと話にならない」

「一応冒険者からは半金貨位までの徴収を考えています。それで学院ギルドに払う金額もあるので」

「ちょっと待った。学院ギルドに払う金額ってなに?」


 予算の説明をすると学院ギルドのことで質問された。昨日作った契約書を見せると


「はははっ、なんだよこの契約。魔術師ギルドがこの話を潰すと学院ギルドから恨まれるわけだ。というかブルック先生に個人的に恨まれるな。また面倒な小細工を」


 ジロリとにらまれるがすっとぼけて真面目な表情を崩さない。


「もちろん、なにもしない学院ギルドよりは報酬はもらえるんだろうな。特にこの素材の割引はもっと安くしてもいいはずだ」


 気づかれてしまった。というか物の流れをちゃんと知っているんだろうな。


「金貨五枚でどうですか? もちろん素材の融通もします」

「契約時には金貨三枚でいい。その代わりに講義の日数一日に付き半金貨だ。一属性に付きという但し書きもな。素材は七割でいいか? あと学院ギルドに恩を売っておく。向こうも七割にしてやれ。そうすればこちらが同じ条件で入っても文句言わないだろう」

「確かに利益が増えますが市場価格の半分で商会組合に卸しているので七割だと向こうに買い取り価格を修正されます。七割五分でいかがでしょうか?」

「そんなに安く買い叩かれているのか。あこぎだな。それでも構わない。講師代はこの条件でいいのか?」


 ちょっと高いな。どうやって安くしよう? 別の利益があるというのがばれてしまっているので交渉が難しい


「やはり最初の冒険者からの収入が少ないのでもう少し安くしてくれませんか」

「具体的には? どれくらい安くしたいか? はっきり言って」

「そうですね。契約金を金貨二枚でどうでしょうか? その代わりに三日分まとめて受講生がいなくても金貨一枚払います。それ以後は一日に付き半金貨で払います」

「まあ三日で覚えられると思えないから追加報酬までは期待できるのか。その代わりに最初は安くして欲しいと。君のその代わりにって言葉は何か変だけどまあ妥協はしてやる。だけど文字が読めることが条件だ。いちいち文字は教えられないし、そこまでやると学院がでしゃばってきそうだからな」

「わかりました。それでは後日、契約書を準備します」

「あとオマケだ。今後、うちに来るやつで技術的に不足しているやつと経験が足りないやつは冒険者ギルドに紹介してやるよ。初級しか知らないやつも使えるだろ。それになんも知らないと研究に向いていないしな」


 魔術師の囲い込みをやめるらしい。元々魔法を使える人物を集めていたのにどういうことかと思うと


「最近、初級魔法しか使えない魔術師がよく来るんだ。村で形ばかりの初級魔法を教えることも多いみたいで、村しか知らない新米は魔法が使えるから魔術師ギルドに入れてくれって。だけどまだ世間も知らないし、創造力がない、正式な魔法理論も知らない。そんなのばっかりだ。最初は入会させていたけどもう許容量がいっぱいで断っているんだ。他の町の魔術師ギルド行けと。だけど彼らのうち何人が他の町で受け入れられたのか。回覧で情報はきてるけど他の町も同じ状況らしい。最終的には闇ギルドに入るという話もある。だから冒険者ギルドに紹介して人生経験を積んでもらおうかって思ってるんだ」

「闇が力を増すのは危ないですね。わかりました。受け皿になります。だけどそうすると将来的にはこの講義は必要なくなるかもしれませんね」

「それは大丈夫。使えて二属性で、火と水両方使えるのほとんどいないから。だから他の属性への取っ掛かりにしてもらえば。あとこの話は上に伝えるからそれまでは秘密だ」



 最終的にまた面倒な案件を話されたが魔法の講義については話はまとまった。ハインツさんに挨拶をして冒険者ギルドに戻る。

 冒険者ギルドではまた資料をまとめ、ギルドマスター宛の報告書も作る。今度の冬の日から十日を目処に開講する予定と付け加えるのも忘れない。

 値段は銀貨五十枚で三日。それ以上は一日に付き銀貨二十枚を払うことを予定している。

 まだまだ忙しい日は続きそうだがある程度の目処がたってホッとしている。



 ココツの町では年に一度だけ属性魔法が安価で学べると話題になった。しかしその講義は他の町でも次第に行われるようになり、そのうち珍しいものでもなくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ