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もう食べるのは嫌だ!!

一難去ってまた一難か。

なんか悪いことでも俺は言ったのか。魔女はほうきで空を飛ぶものだと思っていたからつい言っただけなのに。


「早く降りて来るのだ。今ならおいしい黒眼鍋をご馳走してあげるのだ。」


嬉しくなんてないよ。むしろ降りたくなくなったよ。


「・・・・・・・・・・、降りて来ないのならば家に入れてあげないのだ。」


それはとても困るのだが、どうしよう。

迷っていると木が大きく揺れて俺は木から落ちてしまった。

急いで羽を動かそうとするのだが、動かすよりも早くリリスに捕まれてしまった。


「私は高所恐怖症なのだ。」


僕を地面に落とすと、屈みこんで小さく言ってきた。


「それって本気で言ってるのか。」

「当然なのだ」

「魔女って飛べるような生き物じゃなかったのか。」


こっちの人間の知識には、魔女はまるで呼吸をするみたいにごくごく自然に空を飛ぶってのが、一般常識だったからな。


「飛べることは飛べるのだ。だけども高いところは怖いのだ。」

「魔女も必ず飛べるというわけではなかったんだ。」


こんな山奥に住んでいるのだから空を飛ぶ必要もないのかもしれないな。


「で、初めて飛んでこの世界を見た感想はどんな感じなのだ。」

「いや、人ってたくさんいるなぐらいしか思わなかったよ。」

「ものすごく不愉快な感想なのだ。」


確かに不愉快なのかもしれないけれども実際それしか感じられなかったのだ。僕もとても不愉快なのだが。


「実際に見てしまった僕のことも少しは考えてよ。」

「それは災難だったのだね。」


いや、それしか言われないと声をかけられても逆に心の傷が増えるだけなんですけど。


「で、その眼のことを話してみるのだ。さっきの怯え方ものすごく驚いたのだ。」


いきなり話を切り替えられた。話したくないけれども俺もあの家に住む限り話さなくちゃいけないのかもしれない。なんだか情けなくなり俺はうつむいた。


「・・・・・・・・・・・・。」

「話したくないのだな。」


もう一度、少しだけ寂しそうな声で聞いてくる。

そんな声を出さないでくれと大きな声で叫びそうになってしまうが、僕にそんなことを言う資格なんてない。


「・・・・・・・・・・・・・。」

「会ってすぐの人に言えることじゃないのだな。」


断ろろうと思って顔をあげて、初めて気が付いた。


「リリスも同じなのか。」


ぽつりとつぶやいた言葉は小さすぎて誰にも届かなかったのかもしれない。

もしかしたらリリスには聞こえていたのかもしれない。

伝わってくれと僕は祈るような気持ちでリリスを見た。


「私は黒と一緒にあの家で住めたらいいなと思っていたなだよ。」

「俺は、久しぶりに対等の立場になって話せて嬉しかった。」


恥ずかしいがこれが俺の正直な気持ちだ。


「隠し事の1つや2つはあって当然なのだ。言いたくないのならば言わなくていいのだ。」

「・・・・・・・・、僕の本当の名前は、呪封 黑。(じゅほう こく)改めてよろしく。」

「偽名使ってたのだな。でも正直に話してくれてありがとうなのだ。」


鴉の姿の僕をリリスは抱きしめた。僕は動かず人形にでもなったような気分だ。

しかし、温かいな。本当にリリスを見ているとどんどん王国で語られていた魔女の話がうそのように思えてくる。


「一緒に暮らしてくれるか。」

「いいよ。」


王国で語られていた魔女は、とても冷徹で邪悪な力で人々に隠れて災厄を起こしたり、人の子をさらって食い、悪魔と契約を結ぶなど、とても小さなことから大きなことまでたくさんのうわさが流れていた。


「やはり噂は当てにならないな。」

「人間って卑怯でいつも私たちを不幸にする存在だと思ってたのだ。でも黒となら何とかやっていけそうな気がするのだ。」


独り言のようにリリスは呟いていた。

しんみりとした空気の中、しとしとと雨が降ってきた。冷たい。


「僕も魔女のことはとても冷徹な存在だと思っていた。」


だけど今は隣に俺が居る。独り言で終わらせたくない。会話として成立させたい。


「でも、噂と違い過ぎて正直驚いたよ。」

「本当に噂なんてあてにならないのだな。そういえば、ここになんで来たのだ。魔女の力を借りるなど多分前代未聞の出来事なのでわないのか。」

「別に王国の危機なんてリリスには関係のないことなんじゃないの。」


もうリリスと王国には何の関係もないはずなのだ。なのに何で王国のことなんて気にするのだろうか。


「そうだ。私には何の関係もないのだ。しかしもしも王国を危機的状況になった理由が私たちの生活を脅かすようなものならば早めに対処しなくてはならないのだろう。」

「確かに。」


ここは王国に近い森だ。こんな素敵なところをあんな薄気味悪い連中に踏みつけられるなんて想像するだけでも鳥肌が立ってしまう。


「王国に3匹の黒い獣たちが攻めてきたんだ。そしてそいつらは夜の間だけ王国に攻めてきて日が昇るとどこかへと去って行ってしまう。」

「その獣たちの帰って行った場所は分からないのだな。」

「上手いこと捲かれてしまったらしくて。」


すると口ごもった俺をリリスが不思議そうな目で見ていた。



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