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ワイドエフェクト  作者: 虚言兵器
プロローグ~強制異世界転移~
1/7

第一話 神事る者は掬われる1

 この話のコンセプトは『日常的な物で俺Tueeee!』です。



 軍オタや重火器を始めとしたありとあらゆる物が異世界に行っていますがあまり日常的な物がトリップすることってありませんよね。トラックやバイクはともかく。



 ありふれた大学生が異世界に行ってチートになりました、が主なんです。文房具や鞄がチートになったら……どうなるのか。



 長々と失礼しました。さて、本文をどうぞ!



 「……ここはどこだ?」


 目の前一面に広がる草原と青い空。四方のどこを見ても広がる緑色に、少し感動を覚える。


 「ヤベェ。凄い気持ちいい」


 さわさわと吹く風に髪が乱れるのを押さえながら、こうなるまでの状況を思い返した。



   ☆   ☆   ☆



 某都、某空港をバックパックを背負う青年が、 顔を緩ませ、ヘッドホンから聴こえてくる音楽を口ずさみながら歩いていた。


 「~♪、あ~やっぱボカロはいいね」


 流れる曲に感動しながら搭乗券を見る。ゲート番号を確認して列に並んだ。


 「いよいよ出発か~。よし、ツイートツイート」


 スマフォを取り出しアプリを立ち上げ呟きを書き込 む。


 『んじゃ飛行機に乗り込みま~すノシ!現地の詳しい状況はブログをチェック(`・ω・´)b!!』


 書き込みにどんな反応を返されるのか楽しみにしつつスマフォの電源を落としてポケットにしまう。そして音楽プレーヤーを取り出し、スクロールして曲を選ぶとまたすぐにしまった。


 「次の方ー」

 「あ、はーい」


 自分の番だと気付いて慌てて搭乗券を差し出す。確認されて券を返された。


 「素敵な旅を」

 「ありがとうございます」


 かけられた激励の言葉にお礼を言い、ゲートをくぐった――……







 「……とこからの記憶がない」


 改めて思い出してみると、飛行機の座席に座った覚えがない。となると、飛行機に乗るまでの通路で誰かが自分を拉致したのだろうかと青年は眉をひそめた。


 周りを見ても誰もいない、どころか建物一つすらない。辺り一面草原だ。こんな場所は初めて見た。


 「……とりあえず持ち物の確認からするか」


 誘拐もしくは拉致なのだろうが、ご丁寧にすぐそばには預けたはずのキャリーケースが落ちており、そして背中にはバックパックを背負ったままである。どうやって預けた荷物を取り出したのか不思議に思いつつも、まずはバックパックから確認することにした。


「水筒、菓子類、タオル、眼鏡ケースと眼鏡拭き、コンタクトとコンタクトケース、ハンカチ、ポケットティッシュ、筆箱とペン類、手帳、ヘッドホン、イヤホン、音楽プレー ヤー、携帯ゲーム機とソフトとケース、小銭と紙幣とカードとレシートと券と財布、御守り、鍵、キーホルダー、本、充電器、判子、 パスポート、薬に救急セット、時計、紙石鹸、デジタルカメラ、折り畳み傘、パーカー、帽子、そしてスマフォか」


 入れたものは一通りある、と言うか入れた覚えのない紙石鹸が入っていた。前に入れてから取り出すのを忘れていたかと一人納得する。


 紙石鹸はともかくとしてもゲームやスマフォはおろか、財布の中身も一円すら減っていない。本当に誘拐なのだろうか。


 不安になりつつもキャリーケースの鍵を開け、中身の確認を行う。


 「シャツ、ズボン、パンツ、タオル、シャンプー、リンス、洗面用具、洗浄液、靴下、靴、ナイフ、紐、圧縮袋、髭そり、ドライヤー、ノートパソコン、タッチパネルとキーボード、USBメモリ、懐中電灯、電子辞書、それから ……ん?」


 何もない草原で鞄を開け、中身を拡げている自分は見るからに怪しいのだろうと少し落ち込みつつも作業を続ける。すると、キャリーケースの底に見覚えのない封筒が見つけた。


 「『From神様』?」


 真っ白な封筒の表面に書いてある文字を読む。無駄に達筆でとても胡散臭い。


 裏返してみると蝋印がしてあった。蝋印をこの目で見れたことに少し感動する。


 「……胡散臭いのは確かなんだけど……」


 何故自分が此処にいるのか。その原因が分からない以上、この状況に陥る前との唯一の違いであるこの手紙に賭けるしかない。


 そして封を切り、手紙を読み始めた。




  ――――


 やあ( *・ω・)ノ初めまして。阿久根(あくね) 総士郎(そうじろう)くん。神様です。(not紙様!not髪様 !)


 いやあ突然のことで驚いていると思うんだけど、と りあえず謝っとくね。ゴメン(笑)!


 何の因果かは分からないんだけど、(多分時空間取締法違反者による影響かな☆)君の存在が、空間座標apstrf.S世界、通称地球から、君が現在いる空間座標3nnsutnsu世界、通称キマナーザに移されちゃったんだぜ(>∀<)b


 何とか今の所大急ぎで座標変換してるんだけどまだまだかかりそうなんだ……(´・ω・`)


 ってな訳で、暫くその世界で暮らしてくれたまえ!


 まあありのままの君が良かったんだが(これプロポ ーズっぽくね?ぽくね?)、そのままだとその世界だと生命の危険があるんだ Σ( ̄皿 ̄)(ナ、ナンダッテ ー)!


 と、いうことで……!な、なんと! 君にチートが与えられることになったんだぜヽ(・∀ ・)ノ!!


 君へのチートは……


 そう!この手紙なん



  ――――




 ――ビリビリビリィッ!!



 激しく音をたてて粉々になる手紙。まだ途中だったがこれ以上は無理だった。もう二度と見たくもない。何なんだあの口調(と文字調)。そして内容が読み難いほどの無駄な顔文字の羅列。人をイラッとさせる天才だ。称号を贈ろう。


 欠片になった紙屑を風に乗せて抹消。手元に置いておくことすらしたくない。


 さて、どうしようか……と思った時、ポケットに入れ直したスマフォが着信を知らせた。



 メール受信ボックスを見るとまたしても『From神様』 の文字が。おかしい、登録なんてしてないはずだ。


 先程の手紙の件もあり、メールを開く、開かないの葛藤があったが、手掛かりを自身で棄てた以上、開くしかないだろう。



 そう思ってまあ一応、一応読むことにした。



  ***



 《From神様


  件名:大変申し訳ありません


  内容 この度はご迷惑をおかけしてしまい誠に申し訳ありません。今現在も復旧作業に勤しんではおりますが、 あいにく当社にも他の仕事がございます。 つきましては、貴方様に何一つ不自由のないよう手配させて頂きました。そちらの世界で何をなさって貰っても結 構ですので、此方の作業が終わるまでの辛抱と言うこ とで何卒ご理解のほどを御願い致します。復旧作業が終わり次第、そちらの都合も配慮の上、元の世界に戻させて頂きます。 貴方様への配慮は、次のメールに記載させて頂きました。


 誠に申し訳ござませんでした。次のメールから、キマナーザ世界の説明に移らせて頂きます。》




  ***




 「……ヤベェ。涙が止まらねェ」


 さっきの手紙とは百八十度違う対応の仕方に総士郎はスマフォの画面を見たまま震える。



 気を取り直して次のメールを開いた。



  ***



 《まずキマナーザの世界についてご説明させて頂きます。キマナーザは大きく分けて、知の国ラグスキル、武の国アグテブ、 魔の国マギナロク、そして全の国ノアザークの四つの国に分かれております。では、それぞれの国について、簡単にご説明させて頂きます。詳しい説明につきましては、現在ご利用になら れている端末機、もしくは貴方様が所持している端末類でご検索下さい。


 ラグスキルは知の国とも言われるように国民は皆『知恵』や『知識』に興味があります。古文書の解析や古代文明の在り方などに積極的に取り組んでいます。

  アグテブは武の国と言われています。民の殆どが『強さ』に重きをおいており、一年に一回開催される天下一武術会では、毎年たくさんの方が自身の力を試すためにこの国に訪れます。ただ『強さ』とは、単に『力強さ』だけではなく、『忍耐強さ』や『我慢強さ』 などにも評価が与えられます。

 マギナロクは魔の国とも呼ばれていますが、キマナーザにおいて「悪」ではありません。主に『魔法』や『法術』、『精霊術』が多用されています。他の国でも 魔法の類いは扱われていますが、マギナロクはその研究に一番力を入れています。

  全の国ノアザーク。ラグスキルやアグテブ、マギナロクのように専門的に何かを率先して調べていたりはしません。しかしそれ以外のこと、つまり科学や貿易、農業、経営などにおいては群を抜いています。平均的に満遍なく能力のある国民が多く、国の面積も最も広いです。


 また、どの国にも国王や王妃などの貴族を始めとした多くの人間がいます。


 一番多いのが「人間」です。他にも「獣人」や「亜人」、「エルフ」、「魔人」など、多くの民が暮らしています。


 以上で国の説明は終了です。続いて、貴方様が今現在立っている場所、及び国以外の地域について述べさせて頂きます。》



  ***



 二件目のメールはここで終わっている。どうやら切りが良いところで変えているようでとても有難い。




 キャリーケースに座ってお茶を飲みながら次のメールを開いて読み始めた。



  ***


 《貴方様が今現在立っているのは、『ポルゾン』 と呼ばれる陸の果てです。》



  ***



 「はっ?」


 書いてある意味が分からず変な声をあげた。とりあえず続きを読み進める。



  ***


 《ラグスキル、アグテブ、マギナロク、ノアザー クは「国」ですが、貴方様がいらっしゃるのは「國」 、即ち歴史上に忘れられた存在の場所です。同じように海の果てと言われる『アプチューン』、空の果てと言われる『スカイアリーナ』があります。いずれも四国からは遠く離れており、一番近いラグスキルとポルゾンでも、二万キロメートルは離れています。》



  ***



 「……はっ?二万キロメートル!?」


 想像を絶する距離に総士郎は驚きの悲鳴をあげる。二万キロメートルといえば地球の円周半分ほどの距離だ。



  ***



 《勿論飛行機などは存在しません。グリフォンなどの空を飛ぶ生物で漸くたどり着けるでしょう。しかし国と國との間には荒れ狂う気候などのことから「生きて帰ってきた者はいない」とまで言われています。 ちなみに今現在はどの國にも貴方様以外の人間はおりません。》



  ***




 ここでスクロールが出来なくなった。メールを読み終わり溜め息をつく。人がいないのならば何故神様は自分を此処に送ったのか疑問に思った 。しかしその答えは次のメールで明かされるのだと思い直してメールを開く。



  ***



 《貴方様をその場所に転移させたのは、まずは練習が必要だと此方が判断したためです。 今回のことは此方としても初めての事態でして、はっきり申し上げますと、此方も取り乱しています。それ故何をどうすればいいのかさっぱり分からなかったため、特例措置を取らせて頂きました。》



  **



 そこまで読んだ総士郎はふと肌をさすった。


 「あれ?嫌な予感がする」


 何故か悪寒がはしったのだ。不思議に思いながらも読み進めた。



  ***



 《まず、貴方様の肉体をキマナーザ世界において最高レベルにまで作り替えさせて頂きました。》



  ***



 「…………はっ!?」




  ***



 《簡単に申しますと、軽く走ったら音速を超え、軽く剣を振れば山を断ち、軽く詠唱すれば海を割る魔法が使えます。さらに鍛えれば鍛えるほどその威力は増します。》



  ***



 続く文を読んで脳への処理がようやっと追い付いた総士郎だったが、 それでもその内容を頭の中で反芻させた結果、


 「ええぇぇーー!?」


 大声をあげることしか出来なかった。




 ……そしてその声波で雲が割れたことをここに記載しておく。




 展開の都合上略したもの



 君にチートが与えられることになったんだぜヽ(・∀・)ノ!! 君へのチートは》


 漸く一枚目が終わった。ひとまずこの心の底から沸き起こる怒りを静めようと深呼吸する。


 読んでいて何回も破り棄てたくなる衝動に駆られる手紙だと総士郎は思った。顔文字を連発するわカッコ笑いはついてるわ。挙げ句の 果てに謝罪の誠意が全く見られない謝罪。神がこんなのでいいのだろうか。


 とりあえずある程度落ち着いてきたので二枚目を見た。


 《以下、あぶり出し》


  ――ビリィッ!!


 今度こそ堪えきれずに破り棄てる。あ、と思っても時既に遅し。手紙はビリビリの細切れになっていた。


 「……いやでもこれは俺悪くないだろ。うん、悪くない」


 そう自分に言い聞かせて、無駄だと思いつつも細切れに直らないかな~と思ってみる。と。


 「……え、マジ?」


 粉々のゴミ屑が元の手紙になったのだ。


 「……ん?」


 改めて見ると、『あぶり出し』と書いてある下に、新しく文字が浮かび上がっている。


 「…………」


 どこか釈然としないが、浮かび上がってきたのをラッキーだと思 いながら、二枚目に目を落とした。


 《以下、あぶり出し


 え゛。まさか本当にあぶり出ししたの?はっきり言ってバカじゃない?m9(^Д^)(プギャー) 人(まあ僕は神様だけどね!)の言うこと素直に聞きすぎじゃね? そんなんだったらいつか騙されるよ?まあ僕には全く関係ないけど ね(―3―)~♪!

 馬鹿正直な貴方に朗報だよ!この手紙を思いっきり破って、手に 握って『直れ!』って念じてみるといいよ!そしたら答えが分かるんだよ!(^-^)v


 さあ、チートの発表だよ!あぶり出ししたのかな~?したのかな ~?ま、どうでもいいけどねっ(^^)


 君に与えられたチートは……この手紙だよ!


 いや~親切だよね、僕って。本当に親切だよ




 ・・・



 こんなやり取りも考えましたがしつこいのでカット。書いてて入力スピードは早かったんですけどね。指が進んだから。



 ちなみに『ボカロ』とは、『ボーカロボット』のことです 。決してボーカロイドではありません。ええ、決して。




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