二人の出会い 2
「ヴェルリス…」
その言葉を口にすると、体中の血が沸き立った。
(お前の名は?)
ヴェルリスが、大きな頭を傾げた。
紅蓮の鱗がきらりと輝き、少年は美しいと思った。
「俺は…バシレウスだ。だが、フレイルと呼んでくれ」
ヴェルリスは更に首を傾げた。
(何故だ?)
「追われている身だからだ」
その言葉にヴェルリスは、目を細め、顔をバシレウスに近付けた。
(誰に)
バシレウスは言葉を詰まらせ、俯いた。
どのように説明してよいか、悩んでいるのだ。
その間、ヴェルリスは催促せず、気長に待ってくれた。
しばらくすると、バシレウスは顔をあげた。
「闇の力は知っているか?」
バシレウスは重い口を開けた。
(悪魔を召喚し、その悪魔と契約することで得られる力だろう?)
バシレウスは頷いた。
「契約の時、差し出すものが良い物であるほど、力は強くなる」
(それがどうかしたか?)
「俺を追っている者は、悪魔に心臓を差し出した」
ヴェルリスは目を大きく見開いた。
「力欲しさにだ」
(だが心臓を捧げたら、悪魔の下僕になるんだろ?)
「ああ。だが奴は、その悪魔を殺した」
ヴェルリスは小さく唸り、目を細めた。
その瞳には、怒りの炎が燃えていた。
(禁術を使った上に、悪魔を殺すとは)
「悪魔を殺したせいで奴は、悪魔の力を全て手に入れた」
バシレウスの瞳が、悲しげに揺れた。
「アイツに俺の母さんは殺されたんだ」
そう言うとバシレウスの瞳は、怒りに染まった。
「俺を愛してはくれなかったけれど、俺は愛していた」
再び、バシレウスの瞳が悲しみに染まった。
ヴェルリスはバシレウスの話を黙って聞いていた。
バシレウスと同じように、ヴェルリスの瞳は悲しげにゆれていた。
「俺を嫌っていたけれど、俺は大好きだった」
そう言ったバシレウスの瞳には、涙が溢れていた。
ヴェルリスはそんなバシレウスを、優しく、温かい目で見守った。